猫は年齢を重ねるとなりやすい病気がいくつかありますが、その代表的な病気の一つが慢性腎不全です。
腎臓は再生の効かない臓器なのですが、その機能には余剰分の機能があるため、多少障害を受けても、通常と同等の機能を保てます。
ただ、猫の場合はその余剰分がほかの動物に比べ著しく少ないため、加齢とともに腎不全を引き起こしやすくなります。
慢性腎不全の猫の治療には終わりがなく、大きな負担が飼い主様と猫の両方ともにかかります。
今回は慢性腎不全を引き起こした猫の治療において、往診医の立場から猫の慢性腎不全の治療に往診動物病院を活用していただきたい理由をご説明したい思います。
移動のストレス
猫にとって動物病院に行くということは、この上ないストレスがかかります。
医学的にストレスは腎不全を悪化させる大きな要因となることがわかっており、動物病院に通えば通うほどの負のスパイラルが発生することがあります。
慢性腎不全にかかっている猫は、老猫であることも多く、往診では少なくとも移動のストレスはないというのは、非常に大きなメリットであると思います。
どのステージでも、基本的には往診で対応が可能だから
猫の腎不全の治療には画期的な方法がありません。
慢性腎不全とは言っても、獣医学的には細かな分類がされており、どのステージにどのような治療が望ましいのかというプロトコールが作られています。
たいていの獣医師はそれに沿った治療を行います。
治療法としては、処方食、内服による投薬などから始まり、症状が進んだ場合、リンゲル液もしくは生理食塩水を注射でうって、状況を安定化させるのが大きな流れとなります。
かなり切迫した場合は静脈点滴が推奨されているのですが、入院が必要となるため、実際の臨床現場では、その方法を選択する飼い主様はほとんどいません。
医学的に言っても入院は得策でない場合も多く、結果として、動物病院でしか行えないような特殊な治療法を行う必要がないため、往診で受けられるレベルとほとんど変わらなくなります。
検査に緊急性を要さない
猫の腎不全は慢性経過を示すものがほとんどであり、途中経過を観察するための検査は定期的に必要となりますが、その結果によってすぐに治療方針が変わることはありません。
往診でも血液検査は可能です。
しかし結果をお伝えするまでに、2,3日必要となることが多いのですが、こと慢性腎不全の治療においてはそれでも問題はないと考えています。
飼い主様が猫と入れる時間が最終的には一番長くなるから
残念ながら、慢性腎不全がある程度進行すると、どんなにあがらったとしても、安定した状態で一緒にいられる時間は限られています。
賛否両論はあるとは思いますが、自分の経験則としては、病院に来院されるよりも、猫が安心できる自宅にできるだけ長い時間いた方が、結果としてより多くのコミュニケーションと猫ととる時間が長いと思っています。
まとめ
誰もやってくるという老いという問題に対しては、獣医医療だけでなく人の医療でも画期的な医療技術はありません。
猫にとっての慢性腎不全=老いという考えは、正確ではないかもしれませんが、根治の方法がないという点では同義であると思います。
だからこそ、より猫に負担がなく、そして飼い主様と一緒に入れる時間をどれだけ増やしてあげられるかというのが治療の大きな幹になります。
どちらがいいということは決してありませんが、個人的な意見としては、慢性腎不全を患った老猫は、自宅での治療が一番よいのではないかと考えています。