眼というのは多くの神経が集中している感覚器です。
そのため眼にちょっとゴミが入っただけで強い異物感を感じてしまいます。
一方で、犬や猫は人間に比べると極端に瞬きをしないためか、よく糸くずや毛などのごみが目に入っているのにもかかわらず、全く気にすることはありません。
そんな犬や猫でも、目の表面に傷までできてしまった場合は、明らかな症状を訴えます。
涙が多くなったり、目が赤く腫れぼったくなり開かないような症状がみられることが多いと思います。
犬や猫の目の表面である角膜にできた傷は、人間よりも深くできている場合も多く、治癒に相当な時間がかかることがほとんどです。
今回は犬や猫の角膜損傷についてご説明したいと思います。
犬や猫はなぜ角膜損傷が起こりやすい?
角膜損傷は犬や猫で起こる目の病気の中で最も起こる症状の一つだと思います。
その発生の頻度は人間のそれよりも多く発生し、その損傷範囲も非常に大きいものであることがよくあります。
犬や猫の角膜は人間の角膜よりも非常に大きいというのが、傷つきやすい一つの原因だと思います。
犬や猫の角膜に傷がつく原因としては外傷性であることがほとんどなので、とくにチワワや短頭種のように目がせせり出しているような犬種であればなおさら角膜損傷は起こりやすいと思います。
角膜損傷が起こるタイミングは散歩の後やトリミングの後などといったわかりやすいこともありますが、大多数はいつ起きたかわからないといったようなことがほとんどです。
角膜表層の損傷
角膜は4層(5層)に分かれるのですが、表層の損傷は動物病院ではよくみられるものです。
角膜損傷を起こした犬や猫は割と強い疼痛と羞明感とともに結膜が赤く腫れあがったり、涙の量が多くなったりします。
損傷が表層だけにとどまっている場合は、肉眼的に目に傷があるかどうかはわからないため、染色液を用いて傷の有無を確認します。
セカンドセレクトではフローレス紙試験と呼ばれる染色方法を用いて簡易的に角膜の損傷を確認します。
角膜表層の損傷は抗生剤を含む点眼薬や傷の損傷を癒す点眼薬などで十分回復することが出来ます。
ただ、短頭種などの角膜損傷は治りにくいことが多いと思います。
その理由としてこれらの動物の角膜損傷の理由の一つとしてドライアイによるものが多く、その根本を治すことがなかなか難しいからです。
また短頭種の特徴として、角膜表層に存在する神経の数が少なく、目の表面にある異物感に対し鈍感であるため、角膜にできる傷が広範囲であることがよくあります。
こういった症例では随時点眼薬が必要となるため、飼い主様のケアの一環として点眼をしていただくといいと思います。
角膜深相の損傷
角膜の深層まで傷ついてしまった犬猫は、見た目で見える症状は意外と軽いことが多いと思います。
これは目の表層よりも神経の侵入が少ないためなので、決して病状が軽いというわけでは当然ありません。
角膜深層まで達した損傷はその治癒まで非常に長い時間がかかります。
角膜深層まで損傷が達した目の表面はうっすら白くもやがかかったように見え、結膜は強く充血しています。
点眼などの内科的治療で治癒することも多いのですが、動物ゆえに目をこすり悪化させるとか、2次的にドライアイになってしまいさらに傷の治癒が遅延することもあります。
こういった場合は瞬膜フラップと言って眼の内側にある膜を引っ張り眼瞼と縫い合わせ、目の傷を保護するという処置を行います。
通常2週から3週間ほど被膜をかけた状態にて傷がいえてくるのを待ちます。
瞬膜フラップを行うためには全身麻酔が必要なのですが、しばしば麻酔がかけられないような高齢な場合もあるため、セカンドセレクトでは眼瞼フラップという処置を行うこともあります。
全身麻酔を使用せず簡易的に眼瞼を縫い合わせ目を保護できるのですが、瞬膜フラップに比べると強度が弱いため、一般的にはあまり推奨される方法ではありません。
角膜の深層まで届いた傷は時にデスメ膜瘤と言われる小さなしこりを形成します。
デスメ膜は角膜の最深層にある膜にあたり、非常に弾力性に富んでいるのですが、角膜の外層部が損傷によって欠落し、目の圧に負けてしまい小さな水風船のように膨らんでしまいます。
そのためデスメ膜瘤が見られた眼球は破裂をする恐れがあるため、外科的な介入をおこない、欠損した角膜を縫合したり移植を行ったりする必要があります。
セカンドセレクトでは角膜の移植に関しては専門病院をご紹介していますので、治癒に時間がかかりすぎている感じがする等のご不安がある飼い主様がいらっしゃいましたら、お気兼ねなくご相談下さい。
まとめ
顔の中でも目はかなり目立つ存在ですので、目の異常には飼い主様もすぐに気づくことが多いと思います。
何気なく顔を見たときに、片目がやけにつむっているなと思ったら・・・いつでもご来院ください。