動物病院ではよく何かを飲み込んだかもという犬や猫を連れていらっしゃる飼い主様は大勢います。
実際に飲んだのか、飲んでいないのかはっきりとしたことはわからないことも多く、飲んでいなかったというケースは意外と多いと思います。
ただ、たまに実際におもちゃなどを飲み込んでしていて、手術まで行わないといけないこともあります。
この際、異物が胃にあるのか、腸にあるのかで、かなり緊急性や重篤さが変わってきます。
今回はより重篤な症状になる腸内の異物についてご説明したいと思います。
胃内異物と腸内異物の違い
臨床的には同じ消化管の異物だったとしても、対応の仕方は全く異なります。
胃内異物はあまり症状として出ることはなく、見た目では気づかないこともよくあります。
実際に異物を摘出する方法も、催吐処置、内視鏡、胃切開による手術など、選択肢がいくつかります。
一方で腸内異物は異物により腸が閉塞した場合は、非常に強い症状が現れます。
頻回の嘔吐、食欲の廃絶など見た目でも明らかな症状が現れます。
腸内異物を摘出する方法も外科手術のみになるため、治療の選択肢もあまりありません。
また外科手術を行うタイミングも、胃内異物の場合は緊急的に行わないといけないことはあまり多くないのですが、腸内異物の場合は時間の経過とともに腸組織へのダメージが深刻になることが多いため、可能な限り早い段階での手術が必要となります。
異物の内容はおもちゃや果物の種などの固形物や、ひも状の異物などが代表的なものです。
特にひも状の異物は、その長さによっては腸全体を絞扼してしまうため、非常に広範囲なダメージを深く残すことがあるため、もっとも気を付けないといけない異物の中の一つです。
手術となったら
腸内異物は触診やレントゲン検査で容易に判断できることもありますが、はっきりとしない場合もよくあります。
そういった場合にはバリウム検査を行うのですが、バリウム検査はあくまでもバリウムの通過する状況を見て判断する検査であり、異物の存在がはっきりとすることはあまりありません。
したがって腸内異物が極めて疑わしく、かつバリウムの通過が非常に遅い場合に、試験開腹という形で手術を行うケースがほとんどだと思います。
実際に手術となった場合、腸を切開し異物を取り除きます。
腸の組織は同じ消化管である胃に比べると、粘膜、筋層の厚さが非常に薄く、手術後の癒合不全が起こることがあります。
縫合した個所が問題ないかどうかを調べるためには、縫合後の腸の端を圧迫し、注射器にて生理食塩水を注入し、縫合個所から水が漏れてこないかどうかを確かめます。
このような確認を行っても、癒合不全は手技的な要素も含まれることもあります。
ただ、たいていの場合は犬や猫の状態が極めて悪かったり、手術に至るまでの間に食事がとれていないなどの要因で血清タンパクの量が低かったりすると、起こりやすくなると言われています。
また、腸のダメージが深刻だった場合、ダメージの大きい腸を切除し、腸同士をつなぎ合わせる端々吻合手術になった場合は、手技的な失策がなかったとしても数%の確率で起こると言われています。
このあたりは胃の手術と大きく異なるところだと思います。
予後について
腸自体の癒合は2週間ほどかかると言われており、術後3日後が一番脆弱であると考えられています。
ただ術後は状態が安定しているようであれば、手術後48時間から72時間後ぐらいから少量づつ食事をとらせていきます。
セカンドセレクトを含め、一般的な動物病院では通常、4日から1週間程度の入院となりますが、腸内異物の動物は当初より状態が危ういケースもしばしばあるため、予想よりも予後は悪いこともあり、入院期間も長期になることもあります。
結局のところ、腸内異物は症状の発現に至ってから手術までどれくらい短い期間で行えるのかが予後に大きくかかわってきます。
まとめ
セカンドセレクトではバリウム検査を含め、内視鏡検査を行うこともできます。
もしご自宅の犬や猫が突然に多数回の嘔吐が見られるようになったら、いつでもご来院ください。