飼い主様にはよくアドバイスするのですが、ペットの日ごろのチェックとしてよく観察してほしいものとして、体重の増減と飲水量、尿量がはずせないことだと思います。

食欲は個体によってムラがあるので、必ずしも健康状態に反映するとは限りません。

食欲がなかったとしても体重の変動が大きくない場合は、あまり緊急を要さなないことも多いと思います。

その反面、飲水量や尿量は序実に体調を反映することが多くあります。

飲水量が増加する病気は色々あるのですが、今回ご紹介したいのは副腎皮質機能亢進症、いわゆるクッシング症候群というものです。

あまり聞きなれない病気かもしれませんが、もし記事を読んで心当たりがあれば、いつでもご相談ください。

クッシング症候群とは?

おなかの中にある臓器のなかでも肝臓や膵臓は聞いたことがあるかもしれませんが、副腎というのはあまりなじみがないと思います。

副腎は通常であれば3~4mm程度の臓器で、色々なホルモンを出す役目をしています。

名前に腎とはついていますが、腎臓の近くにあるだけで、腎臓とは全く別の臓器であり、ほぼ関係はありません。

副腎は表面と内側で全く異なるホルモンを分泌します。

副腎から分泌されるホルモンの中でも有名なのはアドレナリンだと思いますが、アドレナリンは副腎の中心部から分泌されます。

一方でクッシング症候群で問題になるのは副腎の外側、皮質と呼ばれる場所です。

クッシング症候群は副腎皮質機能亢進症ともいわれており、副腎の外側である皮質の部分の機能が亢進し、そこからホルモンが過剰に分泌する病気になります。

分泌されるホルモンは、コルチゾールと呼ばれるホルモンが中心で、本来であれば自身の身になにか危険が察知されたときに緊急的に分泌されるホルモンです。

コルチゾールによって、血糖値と血圧があがり、体が臨戦態勢をとり、危険な状況からすぐに回避できるようにするのがその主な役目です。

ゆえに別名ストレスホルモンと言われています。

クッシング症候群は、コルチゾールが常に過剰に分泌され続けるために色々な問題が出てくる病気です。

症状はどんなもの?

コルチゾールは血糖値を上げるため、体の色々なものを分解して糖を作りだします。

結果として過剰に筋肉や皮膚の皮下組織を分解するため、四肢の筋肉量は低下し、皮膚も薄くなると同時に毛が薄くなります。

また逆に脂肪がつきやすくなり、特に内臓脂肪が増大するため、まさに太鼓腹になります。

血液は糖と脂肪でどろどろ血液になるので、体は水を欲するようになり、結果的に飲水量の増加と尿量の増加が見られるようになり、小型犬でも1L、2Lぐらいの水を常時飲むようになります。

また肝臓にも激しく障害を与えるため、血液検査では肝臓の値が著しく上昇します。

体は激しく消耗してするため、基本的には多食になるのですが、症状が進むと食欲や元気もなくなり、くるくる同じ場所を回るような神経症状もみられるようになります。

検査方法は?

副腎皮質は脳にある下垂体と呼ばれる場所でコントロールされています。

一般的にはクッシング症候群は2つの原因からなり、下垂体が過剰に副腎皮質を働かせ肥大化させる場合と、副腎自体が腫瘍化するケースに分けれれます。

これらを分類するためには非常に煩雑な検査が必要になってくるのですが、多くのクッシング症候群の検査結果はグレーゾーンが多く、診断に苦慮することがあります。

理由としては動物にストレスがかかるとストレスホルモンであるコルチゾールは大幅に変動するのですが、残念ながらストレスなく行える検査がないからです。

セカンドセレクトも含めてですが、一般的には血液検査とエコー検査で判断していきます。

ご料金はホルモン検査のみであれば15000円程度、エコー検査は3000円です。

ホルモン検査は最低でも1時間はかかりますので、検査ご希望の際は時間に余裕がある午前中に来ていただくことをお勧めします。

また尿検査でもクッシング症候群を調べることが出来ます。

クッシング症候群を患っている犬の尿中には過剰なコルチゾールが含まれているため、その値を計測し診断します。

こちらは散歩中などで取れた尿で検査することが出来るため、ストレスがなく行うことが出来るのですが、クッシング症候群でない犬でも高値を取ることがあるため、確定診断というよりは補助診断で行うことが多いと思います。

治療法について。投薬?手術?

下垂体が原因で起こるクッシング症候群は基本的には投薬で治療を行います。

10年以上に比べると副作用が少ないタイプの薬も販売されるようになりましたが、根治治療には至らないため、生涯の投薬が必要になります。

小型犬であればおおよそ月に8000円から15000円程度の料金になると思います。

ちなみに下垂体が過剰に働く原因は下垂体腫瘍が一般的です。

これは良性の腫瘍であり手術対象ではないとされています。

人間の医療でもかなり以前は手術をされていたようですが、今のところは賛否両論があるようです。

一方で副腎が腫瘍化した場合は投薬の効果が乏しいこともあるので、手術が選択されることもあります。

副腎は左右にあり、一般的に右側の方が難易度が高いとされています。

セカンドセレクトでも手術を行うことはできますが、腫瘍の位置や巻き込んでいるような血管や組織によっては、2次診療の病院をご紹介させていただくこともあります。

まとめ

副腎皮質の病気は中高齢では割とよくみられる病気です。

もし飼っている犬の飲水量が増えたと思ったら・・・一度は検査をしてみるのもいいかもしれません。

ご希望の方はいつでも検査は可能ですので、お気兼ねなくご連絡ください。

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