年を取ると多くなる病気は色々あります。
ペットも高齢社会と言われるので、以前よりも中高齢以降の病気が多くなったのは自然な流れかもしれません。
特に日本では、大型犬よりも小型犬の方が飼育頭数が多いため、高齢な小型犬に起こる病気の診察はどこの動物病院でも力を入れていると思います。
今回ご説明したいのはそういった病気の中でも、もっともよくみられる心臓病「僧帽弁閉鎖不全症」です。
僧帽弁閉鎖不全症は色々なサイトでご説明があると思いますので、今回はセカンドセレクトで行っている僧帽弁閉鎖不全症についてご紹介したいと思います。
僧帽弁閉鎖不全症はなぜなるの?
哺乳類の心臓の中は4つの部屋に分かれています。
それぞれの部屋の出口には、血液が逆流してしまうのを防止するための弁があります。
下のURLは、ぼくが飼い主様に説明をするときによく使う動画です。
全編英語なのですが、視覚的によくわかるので一応リンクを張っておきます。
僧帽弁は心臓の中にある血液の逆流防止弁の一つで、大動脈に血液を効率的に送り込むために心臓内で発生する圧に負けないように、靭帯が直接心筋に付着しています。
この靭帯は非常に強固なのですが、年齢を重ねてくると、心臓内で発生する強力な圧に負けてしまい切れてしまうことがります。
靭帯による支えがなくなった弁はしっかりと閉鎖することが出来ずになってしまうため、心臓内で血液の逆流が発生します。
一般的に心臓は非常に強い筋肉の力で血液を押し出しているので、逆流した場合にかかる圧力も非常に強くなります。
心臓自体で発生した不正な圧力によって出てくる症状が、僧帽弁閉鎖不全症と呼ばれるものになります。
症状はどのように進行していく?
心臓内で発生した圧力はまず心臓の形を変えていきます。
心臓の変形は心肥大と呼ばれ、肺と心臓をつなぐ部位の肥大がとても顕著になっていきます。
心臓にかかる圧力は心臓そのものよりも、血管でつながっている肺の方へも広がっていくため、段々と呼吸器の症状が目立つようになります。
最初のうちは運動を嫌うとか、散歩の途中で座りやすくなるといったような微妙な症状から始まり、咳が多くなる、パンティングが激しくなるなど、見た目でもわかりやすい症状に発展します。
心臓はいくら肥大しても、人のように心筋梗塞でみられる心筋の急性の壊死は見られず、先に症状が出るのは肺になります。
したがって、さらに症状が進んだ場合、肺に水がたまる肺水腫と呼ばれる症状になり、多くの場合呼吸不全により死亡するケースがほとんどです。
肺水腫になった犬は下の色がとても悪く、鼻から透明もしくは血様の鼻水をたらし始めることが多く、呼吸も非常に荒いのが特徴です。
突然そうなる場合もあれば、だんだんと寝ているときの呼吸の回数が増え息苦しそうにしている症状が強まってそうなることもあるので、特に年を取った小型犬を飼っている方は意識して観察した置いた方がいいと思います。
治療法は?
人間が僧帽弁閉鎖不全症を患った場合、真っ先に頭をよぎるのは心臓外科手術になります。
一方で犬の場合は投薬が一般的な治療法となります。
この違いは、犬の心臓外科手術を行える病院は今のところ全国で1件しかないので、そういった技術的な問題点があるほか、人間と犬の寿命の違いが多く関係してきます。
人の僧帽弁閉鎖不全症は一般的には奇形によって発生するため、若年層で病気が発覚します。
したがって人間のような長い一生を送るためには、投薬のみでは非常に困難であるとされています。
理由は数ある心臓病の薬のすべてが、心臓を治すわけではなく、血圧を下げたり、利尿を促したりして心臓にかかる負担を軽減してあげるものばかりです。
ですので心臓の薬は飲み忘れなく適切に飲んでいても、心臓は少しずつ悪化していきます。
犬の場合は、もともと人間ほど寿命が長くないうえ、僧帽弁閉鎖不全症はある程度高齢になって発生します。
したがって投薬のみでも十分な余命が相対的に期待できるため、投薬が一般的な治療となるわけです。
セカンドセレクトでは様々な心臓薬を処方しながら、できるだけ穏やかに生活が送れるように治療していきますが、それでも投薬は一生になるため、それなりの医療費はかかると思います。
5㎏程度の小型犬の場合、症状がそれほど進んでいない場合は1か月で4000円程度ですが、ある程度症状が進むと10000円程度になることもあります。
症状が各部位に広がり、色々な薬を使用しないといけない場合は、月額で4万円程度の料金になることもまれにあるので、飼い主様と毎回相談しながら進めていくことになります。
治療や検査、料金など。
そうは言いつつも、異常が見つかったら即治療というわけでありません。
ちなみに僧帽弁閉鎖不全症は基本的に聴診で割と簡単に発見することが出来ます。
雑音が発見されたからと言っても、すぐに治療が開始されるわけではありません。
一般的なガイドラインでは、僧帽弁閉鎖不全症の投薬治療の開始はレントゲンやエコー検査で心肥大が一定以上進んだら開始されます。
したがって、心臓に異常が見つかった場合、定期的にレントゲンとエコー検査はしておいたほうがいいと思います。
レントゲンでは心肥大の程度や、肺にある血管の太さなどを見ていきます。
エコー検査では心肥大の程度や収縮力、心臓の中を流れる血液の速さなどを計測し、どの薬を使用するかのタイミングを計っていきます。
やみくもに心臓薬を乱発すると、心臓自体にも当然悪影響を起こすだけでなく、腎臓に大きな負担をかけるためです。
したがって、心臓薬の増量とともに、血液検査によって腎臓の機能を定期的にチェックをしながら治療をす済めて行きます。
レントゲンは5000円、エコー検査は3000円、腎臓の血液検査は4000円程度かかります。
また血圧の測定や心電図なども必要に応じて行います。
犬の症状にもよりけりですが、セカンドセレクトではおおよそ1か月から3か月に1回のペースで検査行うことをお勧めしています。
まとめ
僧帽弁閉鎖不全症は犬で起こる一般的な病気の一つです。
どの病院でもそれなりの治療を行うことができるため、病気になったからすぐに大きな病院に駆け込む必要はあまりないとは思います。
もし自分の飼っている犬の心臓が実際どうなんだろう・・・と心配になったら、いつでもお気軽にご相談ください。