ペットの高齢化が進み、約半数近くのペットがシニア世代と言われるようになってきました。
猫の頭数は変化がないと言われつつも、その平均年齢は徐々に上昇しています。
人間と同様に猫も高齢になると、若いころにはなかったような、色々な病気を引き起こすようになります。
特に高齢猫では、いくつかの典型的な疾患があり、しばしば猫自身の体調を悪化させる要因になります。
今回は高齢になった猫が起こしやすい病気と、往診ではどう対応していくのかをご説明していきます。
慢性腎不全
猫はもともと非常に腎不全を引き起こしやすい動物です。
人間でも同様なのですが、一度損傷した腎臓は2度とその機能が回復することはないため、腎不全の治療は温存療法が主体となります。
具体的には腎臓のかわにり、体内に溜まった老廃物を外に排出させるのが治療の基本となります。
初期段階では内服や処方食などを使用し、食欲がいよいよなくなるような場合には、皮下補液を行います。
したがって、結論を言えば慢性腎不全のケアに関する治療はほぼ往診でまかなうことができます。
定期的な血液検査や尿たんぱくの測定は、猫の病状の状態を把握する上でも重要な検査ですが、こちらも往診でも行うことが出来ます。
ストレスをかけて動物病院に連れいてくよりは、往診での治療の方がより適していると思いますので、積極的に利用されてはどうでしょうか?
便秘
高齢になった猫は、便秘が頻繁に起こります。
便秘になる理由は加齢によるもの以外にも、肥満や毛球など色々な付加要因があり、腎不全などを併発していると、さらに症状は悪化します。
高度な便秘症は、大腸の筋肉や神経が弛緩していまう巨大結腸症という病気を併発し、自力での排泄が困難になります。
ここまで症状が悪化すると、便秘とは言いつつも、激しい嘔吐を伴い食欲がなくなるケースも多く、高齢な猫にとっては厄介な疾患です。
以前は投薬にて便秘のコントロールをしていたのですが、最近では非常に効能の高い処方食があり、それを給仕することによって、便通のコントロールは非常にしやすくなりました。
ただ、それでもコントロールが難しい猫に関しては、浣腸や用手によって敵便を行います。
ストレス下ではこういった処置は効果的にならないことも多いので、動物病院よりは自宅で行えるような往診の方が適していると言えます。
また、便秘はトイレの環境などにも依存するため、獣医師が直接環境を確認することで、より的確なアドバイスをすることができます。
口内炎
猫の口内炎は、免疫不全が絡んでいることが多く、難治性のため画期的な治療法がありません。
ここ20年、猫の口内炎に関しては獣医医療の進歩は残念ながらみられていません。
基本的には鎮痛、消炎効果としてステロイドを投薬していきます。
全身麻酔がかけられるような状態であれば、ベストな処置ではないのですが、抜歯をするというのがセオリーとなります。
ただ高齢の猫で口内炎を患っている場合、麻酔をかけられるようなことは滅多になく、口内炎を投薬でなんとかコントロールしながら、皮下補液などによって、極力体力の低下を防ぎながら治療をしていきます。
こういった処置は往診でも可能なうえ、猫によってはストレスにより、より食欲が落ちることもあり、できるだけストレスのない環境下での治療が望ましいと思います。
まとめ
往診でできることはかなり限られているというのは、正しい表現ではありません。
むしろ高齢の猫における処置のほとんどは、往診でも可能であり、かつ最大限にストレスを除去できる手段でもあるので、積極的に利用されてはどうでしょうか?