犬や猫を飼われている大多数の飼い主様が去勢、避妊手術を考えると思います。
一方で少数派ではありますが、ブリーダーではなくても、自分の愛犬、愛猫の子供を残したいと考え、自宅で出産をさせる飼い主様もいらっしゃいます。
獣医師をしているとよく思うのですが、交配、受精、妊娠に関しては、医療(人)の手が入る余地はほとんどありません。
ただ、生まれてきた新生児は、場合によってはちゃんと管理してあげないといけない非常に弱い個体なので、ある程度飼い主様の努力も必要になります。
今回は自宅で仔犬、仔猫が生まれた場合、特に気をつけてほしいことについてご説明したいと思います。
産後の簡単な流れ
基本的な仔犬、仔猫の成長はほとんど違いはありません。
生まれてすぐは開いていない目もおおよそ生後10日頃には開くようになります。
生後20日頃にはしっかりと食事もとれるようになるため、離乳を考えてもいい時期になります。
また、このころにはすでに自発的な排便と排尿ができるようになりますので、この時期までが一山と言えると思います。
生まれてすぐ行うチェック
基本的に必要なことは形態的な異常、奇形があるかどうかが大きなポイントです。
それほど頻度は高いわけではありませんが、鎖肛と言って肛門が閉鎖していることがあります。
尾をあげれば簡単に確認できます。
また口蓋裂といって頭蓋骨が正常に癒合せず、口の上あごに隙間ができてしまうことがあります。
口を大きく開けると、明らかな異常としてわかるので、初めて見る方でもすぐにわかります。
同じように頭蓋骨の正常な癒合ができないために起こる異常として、頭のてっぺんにある泉門が大きく触れることもありますが、あまり重要なことではありません。
鎖肛と口蓋裂の2つの異常は、今後の成長の上で、非常に重大な障害となりますので、異変に感じたらすぐに獣医師に相談した方がいいと思います。
また、それほど重要ではありませんが、鼠径ヘルニアや臍ヘルニアと呼ばれる奇形もありますが、この時期は気にする必要はありません。
成長が順調であるかのチェック
成長の一番のバロメーターになるのは何といっても体重です。
生まれてすぐ、生後1カ月までは毎日計測してもいいと思います。
1日1日体重が増加するのが普通であり、体重の増加が同腹子の兄弟よりも明らかに少ないとか、体重が減少している場合は非常に注意が必要です。
食欲のあるなしは、個体によって多少異なりますが、体重の増減は個体によってそれほど変わりません。
食欲や元気さよりも客観性のあるバロメーターだと思いますので、注意して観察してさい。
獣医師が必要なケースとは?
上記の奇形があったり、体重の減少があったりした場合は、すぐに獣医師に相談したほうがいいと思いますが、特に犬の場合は断尾をするならば、早めに依頼をしたほうがいいと思います。
特定の犬種では断尾は必須となりますので、生後3日以内には行うといいと思います。
まとめ
当然のことながら、新生児は抵抗力も弱く移動には不向きなうえ、ワクチンも摂取していないので、本来ならば動物病院に出向くのはあまり得策ではありません。
上記の注意事項は断尾も含めて、往診での診察で十分対応が可能ですので、もし一度診察をと考えているのであれば一度往診医に相談してみてはいかがでしょうか?