ものを言わないペットの健康状態をチェックするのには、毎日の観察が必要だと思います。

食欲や元気の有り無しはもちろんなのですが、できれば定期的に体重と飲水量はしっかり見ておいた方がいいと思います。

その他、排泄の状態も重要なチェック項目になります。

特に尿の異常は割と多くの犬や猫でみられることが多く、尿量や尿の回数の異常が見られた場合、何かしらの病気にかかっていることも多くあります。

今回は尿の異常が見られる病気の中でもっともよく動物病院でみられる病気、「膀胱炎」についてご説明したいと思います。

膀胱炎の原因って?

膀胱炎の原因は様々ありますが、実際の直接的な原因を調べることはかなり難しいと思います。

特にメス犬やメス猫は尿道が太くて短く、そして直線的であるため、外界からの影響を受けやすく、ちょっとしたことでも膀胱炎になりやすいと思います。

もちろん、膀胱内に尿結石や尿結晶があると、それが核となり細菌が繁殖しやすくなり、より膀胱炎は起こりやすくなります。

また、ストレスや排泄を我慢させてしまったなどの環境的な要因も原因になる可能性はあります。

高齢な犬や猫ではたまに見られるのですが、膀胱内に腫瘍が出来ていることも多く、難治性の膀胱炎を繰り返すこともあります。

とにかく膀胱炎にはありとあらゆる可能性が考えられ、その根幹の原因が解明することはあまりなく、個人的には体質!?としか言いようがない犬や猫がほとんどではないかと思っています。

膀胱炎の症状

基本的には頻回の少量の尿になります。

膀胱炎になった動物は何度もトイレに入り、長時間かけて排尿をする割には、実際の尿量は数滴適度であることがほとんどです。

また血尿が混じることも多く、トイレのシーツに赤いしみが残ることもあります。

単純な膀胱炎であれば、排尿以外に症状が出てくることはあまりなく、食欲などは通常通りみられることがほとんどです。

もし食欲不振や吐き気など、膀胱炎のような症状とともに一緒に見られる症状があれば、単純な膀胱炎でない可能性が高いので、より慎重な対応が必要になります。

また、よくメス猫でみられるのですが、血尿だけみられ、頻尿感がまったくないこともあります。

こういった血液が混じるだけの症状の猫は、治療しても根治することがあまりなく、見た目は問題がなくても検査をすると血球が常に混じっています。

こういった場合でも、突発的に赤い尿が見られる以外はいたって健康なことが多く、たまに治療を悩まれる飼い主様や獣医師もいます。

検査はどんなことをするの?

尿の異常が見られた場合、まずは尿検査は必須となります。

尿検査のための尿は、ペットシーツなどにしみてしまうと検査はできなくなります。

犬やトイレにペットシーツを使用しているような猫の場合は採尿はそれほど難しくはありません。

一般的な尿検査であれば、一度地面についた尿でも問題なく実施できるので、散歩中に道路に排泄した尿でも構いませんし、ペットシーツを裏にしてビニール面を上にし、その上に溜まった尿を採取しても構いません。

問題は猫でトイレの砂にしか排尿をしないような場合や、多頭飼育している場合は採尿がより困難になります。

こういった場合は病院内でカテーテル採尿にて採取します。

また尿を細菌培養の検査に出す場合もカテーテルにての採尿となります。

ちなみに、メス猫の場合、カテーテルでは採尿できないと言われることがあります。

実際、今までお付き合いのあった獣医師の中でもメス猫のカテーテル採尿が出来なかった先生も割といらっしゃいました。

セカンドセレクトではオス、メス問わず採尿できますので、もし尿検査を行いたいけれど自宅では採尿できない飼い主様は、いつでもご連絡ください。

尿検査にて何かしらの異常が見つかった場合、レントゲンやエコー検査を用いて画像診断を行います。

画像診断ではより膀胱炎をおこしやすい状況なのかどうか、また症状が慢性的に続くのかどうかを推測するために行います。

また尿結晶が見られた場合も実施したほうがいいと思います。

膀胱内に大きな結石があった場合は外科的に摘出する必要があるからです。

治療は?

膀胱炎の治療は基本的にはどこの病院もあまり変わりません。

雑菌が多く含まれているようであれば抗生剤を使用し、出血が見られれば止血剤を、頻尿感が多いようであればステロイド系の薬を使用します。

特に猫の場合に多いのですが、自宅での投薬が非常に困難なケースがよく見られます。

特に抗生剤が内服に混じると、飲ませたとたんに泡をブクブクとふいてしまい、かえって元気もなくなってしまうこともあります。

数年前に膀胱炎で汎用する抗生剤で2週間持続型の注射が販売されるようになっているので、投薬の負担はかなり減らすことはできるようになりました。

また投薬時に使用する嗜好性の高いペーストも販売されるようになったため、投薬が困難な場合にはこういったものを利用するといいと思います。

ただ、治療に反応がないような難治性の膀胱炎の場合には、投薬の種類や量が多くなるため、残念ながら飼い主様の負担はまだまだ無くなることはありません。

治療してもなかなか症状が改善しない場合で、その原因が細菌性によるものであれば、尿を培養したのちに特定の抗生剤を使用します。

ある手特定の薬剤については、内服だけでなく膀胱内に直接注入することもあるので、薬の種類によって投薬の仕方は変わってきます。

また、雑菌に対する抗生剤の効能を高めるための薬剤も使用することがあります。

やや副作用があるため、それをさけたい飼い主様には、同様の効果があるサプリメントをお勧めすることもあります。

一方で雑菌があまり見られないタイプの膀胱炎の場合はステロイドの長期投与を行うこともあり、その際はステロイドの副作用を見るために、血液検査などを行いながら治療が進んでいきます。

血尿だけがなかなか治まらない場合・・・

少し前にもご説明しましたが、特にメス猫でみられる症状で、症状が血尿のみというケースがあります。

この場合、見た目の血尿は治まるのですが、持続的に出血が見られることが多く、ほとんどの場合、治療に反応せず完治に至りません。

セカンドセレクトでは、基本的に症状が強いときのみ投薬をお勧めしますが、あまり継続した治療は行わないようにしています。

もちろん、食事療法程度は行いますが、その症状で動物の生活の質が落ちることはほとんどないため、持続的に症状が見られたとしても、あまり心配することはないと個人的には思います。

まとめ

動物と一緒に生活するうえで、尿の異常は飼い主様の生活にも直接関係してくることが多いと思います。

もちろん動物たちの病気を治すことが獣医師の役目ではあるのですが、それに伴う飼い主様の生活の質を向上させることも獣医師の役目だと思っています。

もしご自宅にいるペットの排尿の様子がいつもと違うぞと感じたら・・・いつでもお気兼ねなくご連絡ください。

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