ウサギを飼っていらっしゃる方ならば当然知っていらっしゃることだと思いますが、ウサギはとても繊細な動物です。
ストレスにも弱く、ちょっしたことで動物病院に連れて行くと、それだけで食欲が落ちかねない生き物です。
ウサギの治療はこういったストレスを常に考えないといけないので、ぼくたち獣医師もとても気を使うのですが、あえてぼくはウサギの治療は往診で行うという提案したいと思います。
今回は往診医として、ウサギのかかりやすい病気と往診で行えることをご説明します。
食滞の治療
年齢にもよりますが、ウサギが食欲をなくした時にあげられる代表的な病気としては、まず食滞があげられます。
食滞とは何らかの理由で、ウサギの胃腸の動きが低下し、特に胃の中に食渣が多くたまってしまう病気です。
多くの場合、急に動かなくなり、重度の場合はお腹が外見上からでも張ってくる様子がわかります。
ウサギが急死する代表的な病気です。
食滞は基本的には腸を動かすことが第一の目的となります。
胃腸を動かすような薬を使用するのですが、初期段階では胃腸の動きも悪く、飲み薬は効果が薄いので、注射で投薬するのが有効だと思います。
また、腹部をマッサージなどで刺激を与えるのも有効だと思います。
これらの治療は往診で十分可能なものだと思います。
斜頸の治療
その他の食欲低下の理由としては、斜頸と呼ばれる病気があげられます。
斜頸の原因ははっきりとはわかっていないのですが、平衡感覚がなくなってしまい、首が傾くだけの場合もあれば、姿勢を保持することができないぐらい重度の場合もあります。
眼振といって、目が左右に振れてしまうような症状が同時に出ていると、たいていの場合は食欲がなくなります。
治療は基本的に高容量のステロイドを使用していきます。
いくつかの文献では、ウサギの脳に寄生する寄生虫を駆虫するのが治療法としてあげられていますが、基本的にステロイドを使用しないと、ウサギの斜頸は回復してくれないことが多いと思います。
食欲があれば内服でも構いませんが、食欲がないと投薬が困難になるケースも多いため、やはり初期の段階では注射による投薬を選択します。
後遺症として残るケースも多々あるため、治療後のケアも必要な疾患です。
自宅での環境のアドバイスも含めて、こちらも往診での対応が可能な症例です。
臼歯の問題
食欲低下の代表的な疾患としては、ウサギの臼歯が伸びすぎてしまい、口の中の粘膜が傷ついてしまう病気があります。
常生歯といって、歯が一生伸び続けるげっ歯類特有の病気です。
これを治療するためには物理的に臼歯を削るしかありませんが、基本的には全身麻酔が必要なため、往診での対応は難しいと思います。
往診のデメリット
自宅ではウサギは本来の行動をしますので、動物病院の中でフリーズをしてくれません。
以前、往診に行ったときに、ウサギが捕まらなかったことがあります。
まさしく脱兎のごとくです。
往診では自宅での本来の状態が診れるのがメリットですが、逆に元気すぎるウサギさんは診るのが大変になることもあります。
まとめ
ウサギのような繊細な動物こそ、往診が一番よいのかもしれません。
ウサギを診れる獣医師も多くない中で、ウサギを診察する往診医を探すのは難しいかもしれませんが、選択肢として持っておくと、非常に心強いと思います。