こんにちは、セカンドセレクト獣医師の斉藤です。

猫という生き物は犬と違って、呼吸がとても静かな動物です。

極度に興奮した時などは別ですが、犬のようにパンティングをすることは滅多にありません。

また調子が悪い時には部屋の隅で静かにしていることも多いので、特に循環器や呼吸器の病気は発見が遅れることもしばしばあります。

そんな猫の循環器の病気の中で1番多い病気と言えば、やはり心筋症になります。

あまりにも有名なこの病気なのにもかかわらず、そんな猫の性質上の問題から、病院で心筋症の診断が下されるのは、症状が割と進行してからが多いと思います。

今回はそんな猫の心筋症についてご説明したいと思います。

猫の心筋症とは?

猫の心筋症はその病態によって幾つかに分類されますが、もっとも一般的なのは肥大型心筋症です。

猫を含む哺乳類の心臓は4つの部屋に分かれています。

主に左側の心臓は、大動脈に大量の血液を送り込むための厚い筋肉がもともと存在していますが、肥大型心筋症は特に心臓の左側の筋肉が厚くなる病気です。

極度に肥大化した筋肉によって心臓の部屋の内腔が小さくなってしまい、心臓中にため込める血液の量が低下します。

結果的に心臓から送り出せる血液の量がへるため、見た目の活動性が低下し、食欲不振などもみられるようになります。

また、異常に厚くなった心臓の筋肉のせいで、心臓内の血圧が上がってしまうことで肺にも負担がかかり、呼吸器の症状などが見られるようになります。

肥大型心筋症が理由で病院にご来院される飼い主様の主訴で意外と多いのが、猫が嘔吐しているというものです。

心筋症の一つの症状として発咳が見られることも多いのですが、初めて見た飼い主様はそれを嘔吐と勘違いすることも多いからです。

また困ったことに、犬の心臓の病気の場合は聴診だけでも診断が下せることが多いのですが、猫の心筋症の場合は聴診上の異常がないことも多く、診断までに少し時間がかかることもあります。

肥大型心筋症は最初のうちは厚い筋肉のせいで、過剰な心臓の収縮能力が見られるのですが、段々と時間が経過すると心臓の筋肉の細胞が繊維細胞に置き換わり、心臓の収縮能力が低下していきますす。

最終的には左室だけでなく右室の収縮能力も低下するので、重度の心不全を引き起こし、胸水や肺水腫と言った重度の呼吸器の症状を引き起こします。

肥大型心筋症のほかにも、拘束型心筋症と呼ばれる心臓の筋肉の細胞の変性が重度で起こる心筋症もあります。

症状は肥大型心筋症とほぼ変わりませんが、予後はより厳しいものとなることが多いと思います。

また、たまに見かけるのが不整脈源性右室心筋症と呼ばれる心筋症で、左室よりは右室に症状が強く出ることが多く、右室が収縮できず、腹水や胸水が頻繁にみられる病気です。

レアなケースでは拡張型心筋症といって心臓の筋肉がペラペラに薄くなり、心臓が全く収縮できなくなる病気もあるのですが、ぼく自身はまだ見たことがありません。

検査方法は?

一般的にはエコー検査にて診断をつけていきます。

エコー検査では心臓の筋肉の厚さのほか、心臓の拍出量や血流の速さを測定することが出来ます。

一般的に心筋症は心臓の筋肉の厚さを計測して診断を行うのですが、レントゲン上では見た目の心臓の大きさには変化がないことも多く、エコー検査でしか診断が出来なこともよくあります。

したがって自覚症状が全くない心筋症が発見されるケースはたまたま見つかることも多く、そういった意味では猫にとって定期的な健康診断は重要かもしれません。

また心筋症を患った猫は高頻度で不整脈が出ていることも多いので、心電図や血圧の測定も重要になります。

治療法は?

基本的には投薬治療になるのですが、心筋症の種類やその段階によって薬の種類は全く異なります。

実際、無症状の心筋症を患っている猫は割と多くみられるのですが、セカンドセレクトでは基本的には治療はせず経過を見ていただくことがほとんどです。

治療の開始時期には獣医師によって判断が分かれることがあります。

セカンドセレクトでは犬の心不全と同様に心臓にかかる負荷によって、心臓の形態が変化したら投薬を開始することにしています。

この投薬の時期を見ていくには定期的なエコー検査をお勧めしています。

症状が急性的に出現した場合は、高酸素濃度下での点滴を行いながら状態の鎮静化を狙っていきます。

状態が安定し始めたら、心臓の収縮が過剰になっているのを抑えるための内服薬をいくつか投与していくのですが、ここで問題なのがたいていの心筋症を患った猫の投薬は飼い主様にとって非常に困難であることが多いということです。

投薬するべき薬の種類も非常に多く、心臓の過剰な収縮を抑える薬のほか、血圧を抑える薬、利尿剤、抗血栓薬などを投薬していきます。

食欲があるのであればまだいいのですが、病気を発症して安定期に入るまでは食欲もままならないことも多いため、投薬を行うことがなおさら困難になることも多いと思います。

また病気がさらに進行が進むと、逆に心臓の収縮能力を増強させる薬を使用していくのですが、このころでも食欲不振がかなり目立つようになるため、この時にも投薬の方法が大きな問題になります。

こういった時には投薬の種類を必要最低限に抑えながら、飼い主様の投薬のスキルが向上するのを待つことがほとんどです。

セカンドセレクトでは薬の投薬方法について色々アドバイスさせていただきながら治療を進めていきますので、不安がある飼い主様がいらっしゃいましたらお気兼ねなくご相談ください。

全身性動脈血栓塞栓症になったら

心筋症のもっとも厄介な併発疾患として、動きの悪くなった心臓の中で血栓が作られてしまい、それが血管のどこかで閉塞を起こす血栓塞栓症があげられます。

猫の血栓塞栓症は大腿動脈でおこる梗塞が最もよくみられるものです。

突然強いうなり声をして、気づくと後ろ足がマヒをしているという症状が突然に起こるのが特徴です。

強い疼痛が見られることがほとんどで、口を開けて呼吸をし、特に足先が冷たくなっているのも特徴的な症状です。

以前は血栓塞栓症を起こした場合の治療法として外科的な手術により血栓を取り除くことが最優先の治療法としてあげられたのですが、最近では色々な理由もあってあまり選択されないことも多くなりました。

セカンドセレクトでも血栓塞栓症の手術は治療の第一選択にはしていません。

また血栓を溶かす薬もあるのですが、効果のほどがそれほど見られないことも多いためあまり使用もしていません。

高酸素下で心臓のケアをしながら、疼痛管理を行い、血栓が自然と溶けてくるのを待つとうのが治療法になります。

血栓がつまった場所によって予後は全く異なりますが、後肢の麻痺の場合は病気の発症から半月ほどで回復が見られることもあります。

腎動脈や脳の血管に血栓がつまった場合は予後は極めて悪いことが多いと思います。

またまれにあるのですが、前足や後ろ足の動脈に詰まった血栓があまりに大きいために溶けきらなかった場合は、足が壊死することもあります。

こういった場合も予後はとても悪いことが多いため、飼い主様のご心配事も今後の状態がどうなっていくのかに終始します。

完全ではないのですが、その予後の判断材料として、体の中心と末端とのカリウムの濃度で見ることができるため、セカンドセレクトではそれを一つの指標として飼い主様に予後をお伝えしています。

いずれにしても状況を静観しているしかなく、残念ながら猫にとっても飼い主様にとっても不安な日が続くことになります。

まとめ

人間の心筋梗塞もそうですが、このての病気は突然起こります。

唯一できることと言えば、定期的に検診を行って事前に病気になるリスクを調べておくしかありません。

セカンドセレクトではそういった定期検診も随時行っていますので、いつでもお気兼ねなくご相談ください。