こんにちは、セカンドセレクト獣医師の斉藤です。

多くの飼い主様が飼っている犬や猫に避妊手術を行うと思います。

実際に多くの獣医師が避妊のメリットを謳い、避妊手術を積極的に推し進めています。

当然ながらぼく自身も、避妊手術をお勧めしています。

メスの個体にとって避妊手術を行うメリットは、病気の予防という観点からみれば非常に大きいのがその理由です。

ただ残念ながら、何事にもメリットとデメリットがあるように、避妊手術自体にもデメリットがあります。

体重管理が困難になるというのは最も一般的なデメリットになりますが、意外と高齢になった時に尿を失禁しだすというのもよくある症状です。

今回は避妊手術のデメリットの一つ、エストロジェン欠乏性尿失禁についてご説明したいと思います。

エストロジェン欠乏性尿失禁とは?

エストロジェンというのは卵巣から分泌されるホルモンで、主に性周期にかかわるホルモンです。

避妊手術を行う際、卵巣は必ず摘出するため、手術後のエストロジェンの濃度は体内からはほぼ消失します。

エストロジェンの機能は性周期以外にも多岐にわたるのですが、その中の一つとして尿道の収縮にかかわっていると考えられています。

考えられているというのは、実際には確証はなく、人間の方でも同様の報告がなされているということだけです。

避妊手術後、若い個体の場合はあまり症状は出ないのですが、早ければ4歳ごろから、通常であれば10歳をこえたあたりから尿失禁が目立つようになります。

尿失禁は興奮したりしておもわず出るような「うれション」ではなく、無意識のうちに漏れ出すような失禁をします。

寝ているときに気づいたら布団に漏れ出すとか、前足を机などに乗り出し時に漏れ出すなどの症状が多いと思います。

検査方法、治療法は?

エストロジェン欠乏性尿失禁を確定診断を下す検査方法はありません。

したがって除外診断を行い、他の可能性を否定するところから始めます。

多いのが多飲多尿になるような病気がいくつかあるので、その病気の検査を行います。

例としては糖尿病や腎臓病、クッシング症候群などの血液検査を行います。

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また尿検査を行い尿の性状も調べます。

こういった検査により、考えられる疾患がない場合にエストロジェン欠乏性尿失禁の可能性を考え、治療薬を先行投与します。

治療薬はエストロジェンホルモンそのものの投薬となります。

服用を開始して数日で尿失禁の症状が改善した場合は、そのまま投薬を継続していきます。

改善がなかった場合にのみ、またほかの可能性を考え、そのほかの検査を検討していきます。

治療はするべき?

最初に述べた通り、避妊手術は病気の予防としてのメリットが非常に大きいと思います。

なぜなら、避妊手術によって予防できる病気は女性ホルモンに影響され発病するからです。

エストロジェンホルモンそのものを服用するということは、女性ホルモンを体内に取り入れるということになります。

そのため避妊手術のメリットにより本来予防できるような乳腺腫瘍が発生するリスクを抱えることになります。

またあまり多くはないのですが、肝臓に障害が出たり、貧血が見られるなどの薬自体の副作用もあります。

したがって薬の容量は症状が出ない最小限の量まで減薬していきます。

量自体は個体によってもかなり差があるため、少しづつ減らしていって様子を見ていくしかありません。

こういった治療の煩雑さや薬の副作用を敬遠して、治療を開始しない飼い主様も多くいらっしゃいます。

エストロジェン欠乏性尿失禁自体は健康を害するようなことはありあません。

ですが飼い主様のお世話もしくは介護のかかるご負担が増えるため、一緒に生活する上ではかなりの問題になります。

介護用のおむつなどをしながら管理をするか、治療を行うかは結局のところ飼い主様のご判断になってしまいます。

個人的な経験から言えば、大型犬の尿失禁はかなり管理が大変なので、大型犬の飼い主様は治療するケースが多いと思います。

小型犬の場合は、体重が軽い分、尿失禁の管理も可能であることが多いため、多くの飼い主様は治療を敬遠することが多いように思えます。

まとめ

どちらにせよ、排泄の問題は年齢を重ねてくると多くの動物にみられる問題です。

セカンドセレクトでは多くの高齢ペットの治療に携わっている経験に加え、往診なども行っているため、より飼い主様が置かれる状況を予測し、サポートすることができるともいます。

もしご自宅に高齢ペットに何か心配事があれば、いつでもお気兼ねなくお問い合わせください。