尿検査は人間でもよくやられる検査です。

簡易的に検査が行えるうえ、意外と重要な情報が色々とわかるからです。

これは犬や猫でも同じことで、尿結石や腎不全、糖尿病など様々な疾患を発見するのに役立ちます。

そんな尿の異常でたまによく見かけるのが、非常に薄い尿が持続的に出ていることがあります。

低比重尿とか希釈尿などと呼ばれるこの尿は、病的な原因に限らず色々な原因でおこる異常です。

今回はそんな薄い尿が見られる原因の一つ、「尿崩症」についてご説明します。

尿崩症って何?

尿の量は様々なホルモンによって一定になるようになっています。

尿崩症はそのホルモンの中で、バソプレッシンと呼ばれるホルモンの異常により起こります。

バソプレッシンは脳内の脳下垂体というところから分泌され、腎臓の中で最もよく尿から水分を再吸収する場所で、尿からの水分吸収を促進させます。

尿崩症は脳下垂体の異常によってバソプレッシンが分泌されなくなるか、腎臓自体がバソプレッシンに反応しなくなり水の再吸収が起こらなくなったかどちらかによって起こります。

脳下垂体の異常は外傷や腫瘍などで見られるのですが、腎臓の場合はなぜ起こるのかあまりよくわかっていません。

これらの異常は若い個体でも高齢な個体でも見られるほか、雌雄差、品種間の差などもありません。

尿崩症を起こした動物は、考えられないぐらい多量の色の薄い尿をするようになり、その代わり水を大量に飲むようになります。

小型犬や猫であっても、おおよそペットボトル1本分以上の排尿が見られることが一般的で、飲水も一日1L以上あることがよく見られます。

検査方法は?

実際に尿崩症を簡単に確定させるような検査方法はありません。

また多飲多尿であること以外、身体上の問題は外見上からは発見できないことがほとんどです。

セカンドセレクトで診察をしていても、飲水量や尿量を心配される飼い主様が多くいらっしゃいますが、やはりそのほとんどは食欲や元気がある犬や猫たちです。

多飲多尿の原因で尿崩症が疑われるときには、まず血液検査で血液中の塩分濃度が非常に高まっている時です。

血液中の塩分濃度が高まっているときはたいてい脱水を起こしているということになり、そういった場合には尿量は低下し、尿の濃さも非常に濃いものになります。

いっぽう尿崩症の場合は血液中の塩分濃度が高いのにもかかわらず非常に薄い尿であるため、尿検査にて低比重尿を認めるようであれば尿崩症の可能性が高まります。

ただし同様の検査の所見が見られる病気は数多くあるため、他の病気の可能性を否定するための除去診断を行います。

他の内分泌系の病気でも多飲多尿が見られることが多いので、追加の血液検査を行うのが理想とされています。

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いよいよそのほかの検査でも異常がないと判明した場合、尿崩症に対する治療薬を試験的に投与していきます。

尿崩症であれば投薬開始後10日ほどで、尿の色は正常な色合いになっていきます。

投薬は基本的に点眼薬で行い、特に副作用がないため簡易的にできるのですが、薬自体が高価なため、最初から試験的に投薬をしてみるというわけにはなかなかいかないことが多くあります。

また、水制限試験というのもあるのですが、セカンドセレクトでは動物の負担を考えあまり推奨はしていません。

治療法について

尿崩症の原因によって治療法や治療経過は異なります。

脳下垂体が原因の尿崩症の場合、治療薬の反応性は非常によく、そのまま投薬を継続するのが治療法となります。

ただし、犬や猫が十分に飲水が出来るような状況で、かつ排泄のお世話がそれほど飼い主様にとって煩わしいものでなければ、治療をしないこともあります。

なぜなら、飲水自体がしっかりできていれば健康状態を害することはほとんどない一方で、先ほど書いた通り、薬の薬価が非常に高価だからです。

小型犬でも月額で30000円程度はするため、飼い主様によっては治療を選択されないこともあります。

いっぽうで腎臓が問題で尿崩症を起こした場合は治療にも反応せず、予後はよくありません。

皮下補液などを行いながら脱水の悪化を防ぎながら見守るしか治療法はないため、セカンドセレクトでは自宅で皮下補液を行えるようご案内しています。

飼い主様自身が自宅で行う皮下補液。セカンドセレクトがサポートするとこうなります。

まとめ

尿の問題は病気に限らず飼い主様の心配のもとになると思います。

もし自宅で飼われているペットの尿量や飲水量がちょっと気になるようであれば、いつでもお気兼ねなくご相談下さい。

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