犬を病院に連れてくる理由の中で意外と多いのが、発咳だと思います。

理由は違うのですが、犬種や性差、年齢にかかわらず、犬はよく咳をする動物です。

咳の理由としては、感染を起こしたものや、老齢性のもの、心臓からくる咳など色々ありますが、今回は幼い犬で割とよくみられる気管支炎、「ケンネルコフ」についてご説明したいと思います。

ケンネルコフとは?

ケンネルコフは犬伝染性気管気管支炎と言って、特定のウイルスや細菌によって引き起こされる気管支炎のことを言います。

原因となるものは犬アデノⅡ型ウイルス、パラインフルエンザ、ボルデテラ菌があげられます。

ペットショップやブリーダーなどから譲渡されたすぐの仔犬に特に多くみられるのですが、まれに成犬でも感染した犬との接触により症状が出ることがあります。

フェスなどの何かしらの犬の集会や、ペットホテルなどから帰宅した後に咳をしているようであればこの病気を疑ってもいいかもしれません。

基本的には発咳、咳の後のえずき程度の症状であり、全身に症状が波及することはあまりありませんが、咳の具合はかなり重度です。

人間の咳と同様に咳が一度で出すとなかなか止まらず、またよく吠えるような犬は1か月以上も咳が続く場合もあります。

また、幼犬や何らかの疾患を持っていた場合は、細菌の2次感染を引き起こすこともあるため、肺炎を引き起こすこともあるため、食欲不振や体重減少が見られた場合は注意が必要です。

治療法と予後は?

基本的には無治療でも自然に治癒することがほとんどです。

ですので安静が出来るような環境を整えていただき、十分栄養を取らせることをお勧めしています。

咳による生活の質の低下が目立つようであれば、去痰剤や鎮咳薬を使用します。

抗生剤の有効性は疑問視されている一方で、ぼくも含めてほとんどの獣医師が抗生剤を処方しますが、可能な限り短期間の処方にとどめるようにしています。

問題は他の細菌などの重感染が起こり状態が著しく低下した時です。

大抵の場合、重度の気管支炎か肺炎を患っていることが多いため、入院治療を余儀なくされます。

とはいいつつも10年以上前はペットショップやブリーダーの厩舎は劣悪な環境であることもあったのですが、ここ数年で大きく環境は改善し、実際には肺炎まで患っているような仔犬に出会うことはほとんどありません。

成犬の場合もめったなことでは肺炎まで進行することはないので、予後は悪い病気ではないと思います。

ボルデテラ菌以外は混合ワクチンに含まれているため、成犬でワクチンをしっかり接種していれば感染を防ぐことはできるのですが、アデノⅡ型ウイルスは他のワクチンウイルスよりも抗体が上がりにくく、ワクチンを接種していても免疫力がしっかり上がらないこともあります。

ワクチンを接種しているからと言って過信せず、体調の悪そうなときには多くの犬が集まるようなところには連れていかない方が無難だと思います。

犬のインフルエンザって?

余談の話になるのですが、ケンネルコフの原因ウイルスとして、パラインフルエンザというウイルスがありますが、インフルエンザウイルスとは全く異なるものです。

犬にも犬インフルエンザウイルスがあることはこの10年ほど前から知られるようになり、おととしにはアメリカで大流行しました。

症状は人間のインフルエンザの症状とほとんど同じですが、今のところ犬から人へ伝搬することはないと考えられています。

ただ、インフルエンザウイルスは変異を起こしやすいウイルスのため、未来永劫大丈夫かと言われると・・・疑問の余地はあります。

ちなみに数年前に新種の犬インフルエンザが中国で見つかりました。

最近なにかと話題の新種のコロナウイルスも中国ということでしたが、国土の大きい国は疫学的な問題が大きいため、大国から発生した新種のウイルスの話を聞くと少し怖い感じがします。

まとめ

仔犬の空咳は一番最初に動物病院に犬を連れていく理由のTOP3に入ると思います。

飼い始めてすぐは何かと心配だとは思いますが、大事に至ることはあまりありません。

人間の風邪と一緒なので、とにかく安静にさせて食事をとらせることをまず行い、それでも治りが悪ければご来院ください。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう