不規則な生活を強いられることの多い現代社会。
ぼくも含めてですが、仕事が終わるのが遅くなると、どうしても夜の食事の時間が遅くなりがちです。
深夜にものを食べた翌日は、吐き気まではいかないまでも、ちょっと胃もたれがある感じがします。
こういった胃のもたれや、むかつきは人間だけでなく、ペットでも見られると考えられており、健康な個体でも嘔吐が見られることがります。
今回ご説明したいのは、特に健康体の犬で多い嘔吐についてです。
様々な要因が嘔吐にあるのですが、今回はよくある理由についてご紹介させていただきます。
特発性胃運動低下症
特発性胃運動低下症はその名の通り、何の理由もなくただただ胃や腸の蠕動運動が低下しているため、食渣が胃の中に長時間停滞する病気です。
胃には炎症も潰瘍も存在しません。
普段は元気で健康には何の問題もないのですが、食事をとった数時間後に間欠的な嘔吐が見られるのが特徴で、吐物の内容はその前に食べた食事が混ざっています。
血液検査、レントゲンなどの様々な検査ではあまり特徴的な異常は見られません。
経験的に少し太り気味な体型にもかかわらず、食事に対しての興味が低いような犬に多いように思えます。
治療は嘔吐の頻度が多いときだけ、制吐剤や腸の蠕動を促す薬を使用しますが、完全に嘔吐がなくなることはあまりありません。
食事の内容を変更すると症状が改善することもあると言われていますが、もともと食欲に乏しい性格をしている犬が多いため、食事の変更もあまりうまくいきません。
ただ、嘔吐以外はいたって問題が見られないため、はたして病気なのかどうか迷うことも多く、無治療で経過を見ていただくこともよくあります。
胆汁嘔吐症候群
胆汁は食物が十二指腸を通過すると胆嚢から分泌され、食物の消化を助けます。
長時間の空腹時には胆嚢内に貯留していた胆汁が、消化管の中に食物がないのにもかかわらず十二指腸内に分泌されることがあります。
分泌された胆汁は十二指腸を逆流し胃内に流入します。
胃内はもともと強い酸性の環境にあるのですが、胆汁が混ざることで胃内の酸性度が大きく変化し、これによって嘔吐が引き起こされます。
主に夜中から明け方にかけて単回の嘔吐が見られ、吐物は固形物のない黄土色のものが普通です。
嘔吐のほかには食欲、元気にはほぼ影響がないことが多く、治療はほぼ必要ありません。
経験上、やせ形のトイプードルに最も多くみられると思います。
予防法として、夜の遅い時間帯に少量の食事を与えると嘔吐の頻度は減ります。
それでも頻度の多い場合には、胃薬などを使用して胃の粘膜を保護するといいと思います。
始めて起こる場合は飼い主様も心配になることが多いのですが、そのうち飼い主様自体が慣れてしまうので、診察をしていてもあまり話題になることもありません。
まとめ
本日ご紹介した病気は、よくご相談を受ける病気の中でもあまり対応が必要のないものの代表です。
ただ、まれに大丈夫だと思っていても隠れた疾患が見つかることもあるので、とりあえず1回は受診されることをお勧めします。