人間の医療でもよくある話なのですが、医療関係者として意外と厄介なのは不定愁訴と呼ばれる症状です。

不定愁訴とは患者が「なんとなく疲れやすい」、「夜眠れない」、「頭がぼんやりする」、「だるい」などの症状を訴えるのですが、検査などをしてもどこに原因があるかわからない症状のことです。

症状自体も具体性がなく、はっきりとしないため、症状をしっかりと話せる成人でも、診察は非常に難しいものです。

動物病院ではこの不定愁訴というのはよくあり、またものを言わぬペットだからこその人間の医療以上のむずかしさがあると思います。

「いつもより食欲がない」、「散歩を嫌がる」、「何となく元気がない」といった症状を飼い主様が訴えるのですが、多くの場合、病院の中ではあまり異常を見つけ出すことができません。

そういった不定愁訴の中で、「震える」というのも意外と多い症状だと思います。

「震え」に関しては、病的な要因もあれば、病的ではない要因もあるため、ひとえに「震える」と言われてもその原因は色々あります。

今回はそんな「震える」というパッとしない症状の原因となりうる病気、「ホワイトシェーカーシンドローム」についてご紹介します。

ホワイトシェーカーシンドロームとは?

ホワイトシェーカーシンドロームは日本語訳にすると「小さな白い犬震え症候群」と言わています。

文字通り、白い小型犬が何の理由もな震えだす病気ですが、白い犬でなくても症状は見られます。

比較的若い犬に見られることが多く、ほとんどの場合は3歳以下の若齢犬によく見られます。

震えの強度はまちまちで、どこにいても四六時中、頭や体が震えている場合もあれば、たまに見かける程度のこともあります。

症状がごく軽度の場合は、心因性などの病的ではない原因と診断され、無処置の判断を下されることもあります。

特に動物病院に連れてくると症状が治まってしまうこともあり、獣医師としても診断にいたるまで苦慮することもあります。

原因としては小脳性の疾患と言われていたり、そのほかの原因があると言われることもあるのですが、現在のところ原因はわかっていません。

血液検査やレントゲン、心電図などの一般的な検査でも異常は見られません。

MRI検査などによる頭蓋内の画像診断でもほとんどの場合は病変部の特定には至りません。

結局のところ、白い小型犬が震えていたらこの病気かもね・・・、というような感じで、治療が進んでいくことは少なくはありません。

治療法は?

基本的にはステロイドによく反応します。

症状が強い場合のみ、治療の初期段階で抗痙攣薬を併用することはありますが、症状は早期の段階から消失していきます。

しばらく薬を継続すると完全に症状がなくなってしまう犬もいれば、薬を継続的に服用しないと症状が再発する犬もいますが、どちらの予後になるかは外見上からは判断できません。

ただし、重篤化することはあまりないため、薬を継続して飲まないといけない状況になったとしても、それほど悲観することはないと思います。

まとめ

症状から病的なのかどうなのか判断することが難しい病気は意外と多いと思います。

特に飼い主様にとっては不安を感じることでも、獣医師にとってはそれほど大きな問題ではないと感じてしまうため、さらに飼い主様の不安を煽ってしまう結果になることもあります。

セカンドセレクトでもそういったような診察にならないよう、十分気を付けて診察をしていますので、これって病気?というような不安があった時には、お気兼ねなくご相談していただければと思います。

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