動物病院は人間の病院のように専科がないことがほとんどなので、来院する動物は色々な問題を抱えています。
たいていの場合は軽傷なのですが、ときには緊急を要するような動物も来院します。
急患対応が必要なものの大多数は、呼吸が荒いなどの症状があるときだと思います。
急激に呼吸の状況が悪化する病気はいくつかあるのですが、今回はその中でたまにある「気胸」についてご説明したいと思います。
気胸とは?
大勢の方がご存じだとは思いますが、動物が息を吸い込むときには横隔膜が広がり、胸腔全域が拡張することで胸腔内が陰圧になるため肺が拡張します。
気胸は何らかの理由で胸腔内に異常に空気が迷入してしまい、横隔膜が広がって胸腔が拡張しても胸腔内が陰圧にならないために、肺が拡張しなくなる病気です。
肺が拡張できないため、うまく酸素を取り込むことができないため、低酸素状態陥ります。
気胸になった動物は浅く速い呼吸になり、舌の色も赤みを失います。
動物の場合、気胸になるほとんどの原因は外傷によるものだと思います。
最近は少なくなりましたが、犬であれば交通事故などが多く、猫であればマンションなどの高層階から落下する事故などが原因となります。
強い衝撃により肋骨間の筋肉に亀裂が入り空気が流入するか、肺挫傷により肺の一部が裂け、胸腔内に空気が漏れ出すことが多いと思います。
一方で事故ではなく、何かしらの慢性気管支炎や腫瘍などの肺の病気によっておこることもあります。
こちらは自然気胸と言って、突発的に気胸が起こります。
診断と治療について
診断はレントゲンにて簡単に診断できます。
正常なレントゲンでは心臓は胸骨に接地しています。
気胸が起こると肺が拡張しないため、心臓が胸骨から離れているようなレントゲンになります。
治療はほとんどの場合、酸素化させたICUの中で安静にさせておきます。
空気が漏れている穴はたいていの場合は自然にふさがるため、数日かけて様子を見ていきます。
人間の場合と同様に、酸素を十分に供給しているのにもかかわらず、呼吸の改善が見られない場合には胸を穿刺して、直接的に胸腔内にたまっている空気を抜いていきます。
病的な原因で気胸になった場合は、気胸が治まらない、再発を繰り返すこともあり、その場合には外科手術を行います。
たいていのケースでは、肺に嚢胞を形成した病変があることがほとんどなので、手術の内容は開胸して問題となっている肺を切除します。
予後は病気の種類にもよりますが、原因が腫瘍性の場合はあまり予後はよくないと考えられています。
まとめ
色々な病気がありますが、呼吸器系の病気は、それにかかってしまった動物はもちろんですが、周りで見ている飼い主様にも大きな苦痛を強いると思います。
セカンドセレクトでは、酸素が高濃度に保たれたICUも完備しておりますので、呼吸状態に何か異変を感じることがありましたら、いつでもご来院ください。