癌という言葉はもはや人間だけのものではなく、ペットたちにも当たり前のように使っていくような言葉になりました。
ペットの寿命が延び、高齢になってから患う病気も増えているためだと思います。
一方で人よりも高齢になった際の癌の手術のリスクというのは、体が小さい動物のほうがより大きいものがあります。
ぼく自身も実際に手術したくてもできないような犬、猫たちを今までもよく見てきました。
今回はそんな腫瘍の中でももっとも一般的なものの一つ、乳腺腫瘍についてご説明したいと思います。
乳腺腫瘍とは
乳腺腫瘍とはその名の通り乳腺に発生する腫瘍で、おそらく動物病院に来院される腫瘍の飼い主様の中では1番多いのではないかと思います。
一般的には未避妊の中高齢のメスに多いとされ、猫はほぼ悪性、犬は犬種によってですが50%程度が悪性と言われています。
術前の病理診断の評価が非常に難しく、基本的には摘出できるようであれば、見つけ次第手術してしまったほうがいいのは間違いありません。
ただし、乳腺腫瘍は手術のリスクが高い部類の腫瘍で、ぼくも何回か意図せず悔しい経験をしたことがあります。
また、通常の乳腺腫瘍は、皮膚にくっついているようなボール状のものですが、たまに直下の筋層に張り付くような扁平上のものもあります。
この形態をしている乳腺腫瘍は、手術をすると術後にろくなことがないので、あまり手術はおすすめではありません。
高齢になってからの手術
上に書いてある通り、乳腺腫瘍の手術は術式自体は簡単なのですが、腫瘍からでる化学物質に影響され、術後に血栓ができるケースが多く、術後に急変を起こすリスクがあります。
また、疼痛管理もしっかりと行わなければならないため、高齢もしくは一般状態が落ちている犬、猫ではあまりお勧めはしません。
一般的には直径3㎝に満たない乳腺腫瘍は、健康状態に影響を与えることはほとんどないことが知られています。
高齢での手術は3cmという大きさを一つの目安にして、手術をするしないを決めていただくのがよいと思います。
手術をしないリスク
小さい乳腺腫瘍はあまり影響はないのですが、腫瘍の増大するスピードがが速いと、かなり早期の段階で腫瘍がソフトボール大までになります。
大きくなった腫瘍は脆くなり、何らかの物理的な刺激により一部が自壊して、腫瘍からの分泌物で家が汚れる、何とも言えない悪臭などが発生しますが、本人の状況はあまり変わらないことが多いと思います。
つまり、たいていの場合、リスクというのは、動物側よりも人間の生活に影響することが多いと思います。
まとめ
大きくなって自壊したような腫瘍を、飼い主様だけでケアすることはとても大変だと思います。
特に中型犬以上の大きさであれば、消毒ひとつ、包帯ひとつでもかなりの負担になると思います。
多くの飼い主様は、おおよそ1週間から2週間おきに包帯の交換と抗生剤の投与に来院されます。
また飼い主様の中には、こういった状況の動物をたびたび病院に連れて行くことも困難な方もいらっしゃいます。
セカンドセレクトでは往診も行っていますので、できるだけいい状況で可能な限り負担なく動物たちを暮らしをさせるお手伝いをさせて頂ければと思っています。