セカンドセレクトでは色々な腫瘍の診察を行うことがありますが、良性のいぼのようなものから悪性度の高いものまで様々あります。

悪性度の高いものとして代表的なものにはリンパ腫や乳腺腫瘍などがありますが、そのほか珍しい腫瘍の診察も行うことがあります。

そういった「たまに」見かける腫瘍なのかで、悪性度も高く、かつ飼い主様も気づかないことが多い腫瘍として、今回はアポクリン腺癌という腫瘍をご説明したいと思います。

アポクリン腺とは?

アポクリン腺は体の体表にある分泌腺の分類法の一つになります。

人間では汗腺の種類の一つで、エクリン腺と呼ばれる無臭の汗を出すのに対し、アポクリン腺は脂質やたんぱく質を含んだ汗を出すため、しばしば体臭のもとになる汗腺として知られています。

基本的にはアポクリン腺は汗腺だけでなく、体表の色々なところに存在し、乳腺や今回の記事にある肛門腺もアポクリン腺と呼ばれています。

動物でのアポクリン腺癌は基本的には肛門腺の癌として知られており、犬ではたまに見かけますが、猫ではまれです。

アポクリン腺癌はどうやってみつかる?

多くの場合、肛門のわきがやや腫れてきたことに気づいて動物病院に連れてくることが多いのですが、中には腫瘍が大きくなり排便障害を起こすまで気づかずにいることもあります。

また、たまにあるのですが肛門腺しぼりに来た時にたまたま発見されたりすることもあります。

その他にもまれなケースとしては、アポクリン腺癌は血液中のカルシウムの濃度が上昇していることが多く、血液検査でカルシウムの値に異常が見つかって発見に至るということもあります。

いずれにしても腫瘍が発見された場合は、入念に直腸検査を行い、そのほかのリンパ節などに転移がないかどうか調べる必要があります。

それだけアポクリン腺癌は悪性度が高いからです。

治療法は?

アポクリン腺癌は腫瘍の中でも悪性度が高く、発見された時点で転移を起こしていることもよく見られますが、可能であれば外科手術は積極的に検討してもいいと思います。

腫瘍の進行度にかかわらず、アポクリン腺癌は重度の排便障害や疼痛を引き起こすため、著しく動物の生活の質を低下させるからです。

肛門腺は肛門付近の直腸に隣接しているため、腫瘍が腸まで浸潤していなければ切除は可能です。

ただし、非常に神経や血管が入り組んでいる場所にあるため、術後に肛門の麻痺やまれに排尿の麻痺がおこることがあります。

また近位のリンパ節に転移していた場合、そのリンパ節を切除することはほぼ不可能なため、目に見える病巣のみを切除することになります。

ここまでしても手術は必要なのかという話にもなりそうなのですが、腫瘍の進行による排便麻痺はかなり悲惨な状況になるため、手術に耐えられるような状況であれば積極的に検討していただいた方がいいと思います。

術後の抗ガン治療はあまり効果がないため行われることはありません。

その代わりに分子標的薬という薬が、効能外処方ではあるのですが使用されることもあります。

セカンドセレクトでも、分子標的薬を用いたメトロノーム療法と呼ばれる投薬を行うことが多く、できる限り穏やかな生活が続けられるように努力しています。

まとめ

悪性の腫瘍だとしても、その発生場所によって予後はかなり異なると思います。

予後が違えば、それに対しての対処法も異なってきます。

飼い主様としてどういった方法をとるのがいいのか迷われることも多くあると思いますので、そういった際にはお気兼ねなくご相談していただければと思います。

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