ご存知の方もいらっしゃると思いますが、血液の中にはいろいろな細胞が存在しています。
赤血球や白血球、リンパ球、血小板などが有名ですが、そのうち白血球は色々な種類の細胞を総称して呼んでいるので、他の細胞に比べるとちょっと複雑かもしれません。
白血球は主に免疫防御にかかわる重要な細胞ですが、ときにその働きが過剰になることで、アレルギーや膠原病などを引き起こすこともあります。
その中の「好酸球」という白血球の中でも聞きなれない細胞ですが、この好酸球が過剰に働くことによって起こる好酸球性肉芽腫について今回はご説明したいと思います。
好酸球性肉芽腫とは?
好酸球性肉芽腫は好酸球が局所的に異常に増殖し、体の皮膚や、唇、口腔内にしこりを作る病気です。
原因ははっきりとしたことはわかってはいませんが、好酸球自体がアレルギー反応に大きくかかわっているため、アレルギー疾患からくるものではないかと考えられています。
よくみられる好酸球性肉芽腫は好酸球による皮膚炎として見られることが多く、下腹部に波上の赤い潰瘍が見られるのが典型的なものだと思います。
猫は掻痒感からか、過剰なグルーミングを行い、脱毛とともに潰瘍部分はどんどん赤くただれていきます。
時にその潰瘍はかなり大きなものになり、やけどのあとのようになることもあります。
また内股などに線状の赤い潰瘍を作ることもあり、こちらも過剰なグルーミングにより、より重症化していきます。
これらの皮膚炎は、初期段階では通常のアレルギー性の疾患と区別がつけることはかなり難しいと思います。
皮膚炎以外にも過剰な好酸球の増殖による肉芽は猫の唇にもよく見られます。
こちらは皮膚炎と異なり、猫自体に自覚症状が全くないため、無痛性潰瘍などともいわれています。
周期的に腫れたり治ったりを繰り返すこともあり、突然腫れたと思ったら、翌日にはなくなっているということもたまにあります。
一方で、唇ではなく口腔内にできた好酸球性肉芽腫は、口内炎の症状を悪化させれる要因になるため、猫自体の状態を著しく低下させます。
治療法
好酸球性肉芽腫はアレルギーと連動して起こる、もしくはアレルギーと類似した原因で起こりうるため、一般的にはアレルギー性皮膚炎やその他のアレルギー性疾患と同様の治療を行います。
基本的にはステロイドもしくは免疫抑制剤を使用して治療を開始していきます。
治療に対する反応は割と良いのですが、個体によっては高容量のステロイドを使用しないと安定しない猫もたまにいます。
猫はステロイドの副作用が他の動物に比べると非常に小さないのですが、高齢な猫や高脂血症などの素因がある猫の場合には糖尿病などの併発疾患を招くことがあるので、定期的に血液検査などを行いながら治療を進めていきます。
また最近は猫にもアレルギー性皮膚炎に対し分子標的薬を使用するケースも増えてきたのですが、好酸球性肉芽腫にはあまり効果は見られません。
このあたりがアレルギー性皮膚炎と好酸球性肉芽腫との大きな違いかと思います。
まとめ
猫はもともとグルーミングをよく行う動物ですが、こういった病気にかかると自虐に至るまで舐め続けてしまいます。
特に好酸球性肉芽腫は内股の目立たないところにできることが多いため、発見に遅れることもよくあります。
ある日何気なくお腹を見てみたら、見たこともないような赤い潰瘍があったら・・・いつでもお気兼ねなくご相談ください。