100人獣医師がいたら、99人は避妊手術は行った方がいいと言うと思います。
ぼく達獣医師は常に動物病院にいるので、避妊手術をしないで不幸な病気にかかってしまう動物たちをいっぱい見てきています。
もちろん病気にかからなければ動物病院に連れて来る必要はないので、世の中には避妊手術を行っていなくても、病気にならずに天命を全うしている動物たちはいっぱいいると思います。
ネットの中でも避妊手術はするべきとか、しない方がいいとかいろいろな意見があるようですが、避妊手術をしていない動物だけがかかる病気があるのは事実です。
今回はそんな病気の中でもっともよくみられる病気の中の一つ、子宮蓄膿症についてご説明したいと思います。
子宮蓄膿症とは?
子宮の形は動物によって様々ありますが、共通しているのは子宮の入り口には細菌や異物などが簡単に込まないように普段はしっかりと閉じています。
雌性の生殖器の構造は、子宮の入り口と尿道口の入り口が近い場所にあるため、膣内で非常に細菌が繁殖しやすい状況になっているからです。
しかし特に雌犬で多いのですが、繁殖のじきになると、自身の生殖器の免疫力が低下させ、子宮の入り口を広げさせ、精子の受け入れをしやすくする一方で、細菌の侵入も簡単に許すようになってしまう、子宮の中で細菌が繁殖しやすくなります。
子宮蓄膿症は、こういった膣などで繁殖してしまった雑菌が子宮内に侵入し、子宮内部に膿瘍形成する病気です。
写真では左側が通常の子宮の太さで、右側が膿がたまり拡大した子宮になります。
いったん子宮の中で形成された膿瘍は自然治癒は困難で、子宮内の膿瘍から産生される最近の毒素や細菌そのものにより、色々な症状が出てきます。
最初のうちは水を多く飲んだりする程度なのですが、段々と食欲不振が目立つようになったり、下痢や吐き気が出てくるようになります。
陰部から膿性の分泌物が出てくることが多いのですが、出てこない場合もあるので、普通の体調不良と見分けがつかない場合もあります。
無治療でそのままにしておくと、最近が血流にのり全身に回るような敗血症を起こしたり、腎不全を併発したり、子宮自体が脆弱化し腹腔内で破損し、膿が漏れ出すことによる腹膜炎など、激烈な症状が出ることもあり、死に至る可能性がある重大な病気です。
子宮蓄膿症はエコー検査で割と簡単に診断することができるので、特に中高齢の犬や猫が嘔吐したり下痢をしていたら、念のため検査をしておいたほうが無難だと思います。
手術は必要?
手術の手技は子宮と卵巣を摘出するという点では避妊手術と大きな違いはありません。
ただ、子宮自体は大きく膨れ上がっているため、術創自体は避妊手術に比べると非常に大きいものになります。
また一般状態が低下していることも多く、全身麻酔のリスクという点でも、健康な若い個体に行う避妊手術とは大きく異なります。
子宮蓄膿症は高齢な犬や猫でなることが一般的で、飼い主様によってはペットの年齢のため、手術自体を敬遠したがる飼い主様も多くいらっしゃいます。
特に正解がある話ではないのですが、セカンドセレクトでは他の腫瘍を摘出するような手術と違い、子宮蓄膿症の手術に関しては高齢な仔達でもお勧めしています。
理由は、放置をしておけば余命を全うできずなくなる可能性が極めて高い一方で、リスクは色々とあるものの、術後の経過は良好なことが多く、後遺症も残らないため、手術のリスクに比べ得られるメリットが非常に大きいのがその理由です。
また腹膜炎などを併発しいた場合は、動物自体の疼痛が激しく、それを完全に治癒する方法があるのであればぜひともその方法をとってもらいたいというのももう一つの理由です。
セカンドセレクトで手術を行った場合、小型犬であればご費用は全体で15万円程度、入院は3日程度になります。
手術をしなかった場合
手術はお勧めするということを書きましたが、以前いくつかの症例で、手術を選ばなかった飼い主様もいらっしゃいます。
もちろんすぐになくなった仔達は多いのですが、子宮の膿が非常に効率よく陰部から排泄されていたため、子宮内に膿があまり残りにくく、大した症状なく天命を全うした仔も実際に何度か診察させていただいた経験があります。
症例によっては持続的に陰部から膿が出続けてはいるものの、1年2年と変わらず元気に生活していました。
まれなケースなのだとは思いますが、超高齢なペットや何かしらの重大な基礎疾患を持っていた場合には、そういったこともあったということを頭の中に入れておいてください。
まとめ
避妊手術が一般的になり、子宮蓄膿症は以前に比べると少なくなったとは思いますが、いまだに動物病院で行う手術の中ではよく行われる手術の一つだと思います。
もちろんセカンドセレクトでも、予防的な避妊手術は若いころに行うようにお勧めはしていますが、タイミングが合わずずるずると時間ばかりが過ぎることはよくあると思います。
早い仔であれば3,4歳でも子宮に異常が出ることもあるので、飼っているペットに少しでも不安を感じるようであれば、いつでもご相談ください。