動物は人間と違って自覚症状をしっかりと自分で説明してくれないので、獣医師が見つけにくい病気はいっぱいあります。
聞きなれない病気だと思いますが、アジソン病という少し聞きなれない病気があります。
獣医師として困ったことに、アジソン病の症状は元気がない、食欲がない、震えるといったようなこれといった特徴のない症状があり、外見上から判断することはできません。
下痢などを繰り返し起こす場合もあるのですが、多くの場合は無症状で過ごしていることがほとんどです。
そんなつもりはないのに、動物病院で何気なく検査したらアジソン病かもと言われてしまった飼い主様も多いのではないでしょうか?
今回の記事はそんなちょっと変わったアジソン病についてご説明したいと思います。
そもそもアジソン病って何?
アジソン病は別名で副腎皮質機能低下症と言われます。
副腎とは左右の腎臓の近くの大きな動脈と接する直径5mm程度の小さな臓器です。
副腎は大きさこそ小さいのですが、その役割は非常に重要で体に必要な多くのホルモンを分泌しています。
皆様がよく聞くアドレナリンもこの副腎から分泌されますが、他にも数種類のホルモンが分泌されます。
アジソン病とは、この副腎の外側にある皮質と呼ばれる場所の機能が低下し、特定のホルモンの分泌が低下することによって起こる病気です。
ちなみにこの病気は犬で起こることが一般的で、猫ではほとんど見られません。
アジソン病の症状
アジソン病によって低下するホルモンはコルチコイドと呼ばれるホルモンで、全身のエネルギーの代謝を調節するグルココルチコイドと、全身の血液の循環量を調節するミネラルコルチコイドの2種類があります。
多くの場合ミネラルコルチコイドの分泌量もしくはその両方が低下するケースが圧倒的に多く、アジソン病にかかった犬は全身の血液の循環量が少なってしまいます。
最初のうちはあまり症状は出ません。
下痢が多いとか、震えがあるとか、ちょっと元気がないなどのたわいのない症状が出る程度で、動物病院に来院してたまたま発見されるケースがほとんどです。
ただしアジソン病は急性で重篤に進むケースもあり、そういった場合は極度の循環不全から低血圧性の虚脱を起こしているほか、腎不全が進んでいることもあります。
こういった症状をアジソンクリーゼというのですが、場合によっては致死的にいたるケースもあるため、アジソン病で何かしらの症状が出ている場合は注意が必要だと思います。
アジソン病の検査
たいていの場合は一般的な血液検査を行うことでアジソン病の疑いが出てきます。
アジソン病にかかった犬には特徴的な血液検査のパターンがあります。
とくに電解質と言われるナトリウムの量が非常に少なくなり、カリウムの量が高くなる傾向が多くみられます。
また同時に腎不全、特に尿素窒素と呼ばれる値も高くなることも多く、こういったアジソン病の疑いが高い結果が得られた時に、追加で副腎の機能を調べるためのホルモン検査を行います。
副腎の機能検査方法にはいろいろな方法があるのですが、一般的にはACTH刺激試験という検査を行います。
ACTHとは副腎を刺激するホルモンの名前で、このホルモンにどれくらい副腎が反応するかを調べる検査です。
一般的にはこのホルモン剤を注射で投与し、投与前と投与後1時間後のコルチコイドの量を血液検査で測定します。
副腎皮質の機能が低下している場合は、ACTHに全く反応しないため、これによってはじめてアジソン病の確定診断を行うことができます。
実際の治療は?薬代が高いと聞いたことがあるけれど・・・
残念ながら、アジソン病を根本から治す方法はありません。
ホルモン充填法と言って、足りないホルモンを投薬という形で補ってあげるのが治療法で、毎日副腎皮質のホルモン剤を飲ませることになります。
最初のうちはグルココルチコイドとミネラルコルチコイドの両方を飲ませます。
ちなみにグルココルチコイドとは、一般的に言われているステロイドのことで、長期的に服用すると副作用が出てきますが、ほとんどの場合は最初の1週間から2週間で休薬します。
一方でミネラルコルチコイドは一生涯投薬する必要があり、また副腎皮質の機能低下は病気が判明した後も徐々に進みます。
そのため、1か月に1回程度は血液検査を行い、とくにカリウムと尿素窒素の値に異常が見られた場合はその投薬量を増量する必要があります。
ミネラルコルチコイドは量が増えても副作用が出ることはほとんどありませんが、問題点としては薬自体が高価なので、コストが治療の邪魔をすることがしばしばあります。
したがってセカンドセレクトではある程度症状が安定した後は、ジェネリック製剤を個人輸入で購入していただくことをお勧めしています。
ネット販売で簡単に見つけることが出来ますので、お困りの方はお気軽にご相談ください。
治療のおいて重要な点
治療において、最も重要な点はストレスを与えないことです。
コルチコイドというホルモンは、別名ストレスホルモンと言って、動物にストレスがかかると病状が悪化することがあります。
獣医の中では有名な話なのですが、アジソン病の犬を安易に預かると、突然死を起こすことがあるぐらい、ストレスには敏感な病気です。
もちろんそんな最悪の状況になるのことは極めてまれなことですが、ペットホテルなどを利用する際には気を付けた方がいいと思います。
まとめ
アジソン病はしっかりと治療をすれば天命を全うできる病気です。
その分、毎日薬を与えないといけないとか、定期的に検査を行わないといけないなど、治療は生涯にわたるため、飼い主様にも長期的なご負担が出ると思います。
セカンドセレクトではそういった飼い主様のご負担を少しでも軽減できるようにご協力いたしますので、この記事を読んで「うちの犬もしや?」と思うことがあったらいつでもご相談ください。