どんな生き物もそうなのかもしれませんが、病気というものは突然なるものです。

それが人間の大人であれば、どこがどう調子が悪いのか医者に伝えることで、割と早めに原因が追究できることが多いのですが、子供や動物では話は別です。

吐いている、下痢している、または明らかな傷がある等であれば、簡単に原因を追究することが出来ます。

何か元気がない、食欲がない、どこか痛がるようで震えているなど、あまり特徴的でない症状の場合は、診断や治療がうまく進まないこともあります。

通常の診察の中でもそういった症状を訴えるペットの来院はよくあることで、しばしば悩みの種になります。

今回ご説明したい病気は「ステロイド反応性髄膜炎」という聞きなれない病気ですが、動物病院では意外とよく遭遇する病気です。

この病気も痛がる、震える、元気ないなどの症状を訴えるのですが、そのほかの特徴的な症状は外見上からは見つかりません。

今回の記事をご覧になった飼い主様で心当たりがありそうな飼い主様は一度ご相談ください。

そもそも髄膜炎って何?

髄膜とは脳を守るために覆っている膜のことで、硬膜、クモ膜、軟膜の3層に分かれています。

このうちくも膜と軟膜の間には、くも膜下と呼ばれる空間が開いており、色々なタンパクなどを含んだ液体に満ちています。

写真で言うと白い柱が立っている層がクモ膜下で、濃いオレンジ色が軟膜、薄いオレンジが脳になります。

よくクモ膜下出血なんていわれる症状はこの空間に起こる出血のことを指しますが、髄膜炎もまさにこのクモ膜下で起こる炎症のことを言います。

髄膜炎自体は細菌やウイルスなどの感染を起こして炎症を起こす場合と、感染はないのにもかかわらず、免疫異常などの原因で炎症を起こす場合があります。

このうちステロイド反応性髄膜炎は、感染を起こさず、特発的に炎症を起こす髄膜炎の中の1つの病名になります。

ちなみにこの病気の原因はわかっていません。

ステロイド反応性髄膜炎の症状は?

突然の頸部の痛みと発熱がよくみられる症状です。

頭をなでると痛がるとか嫌がるなどの仕草がみられ、頭を上にあげられないなどといった症状が見られます。

また、食欲不振などの症状がみられることがほとんどなのですが、病院内で行うような一般的な血液検査やレントゲンではほとんど異常値はみられません。

ステロイド反応性髄膜炎を患った犬の一部は、いわゆるリウマチ性関節炎を併発することも多く、頸部だけでなく腰や足など、どこを触っても痛がる、嫌がるようなしぐさが見られることもあります。

診断は?

一般的な診察でおこなう検査では異常が見つからないため、通常の動物病院内で確定診断を下すことは非常に困難です。

ただ、ここ数年で病院内の血液検査の項目として、犬CRPという項目が簡単に計測できるようになったため、仮診断は容易につけることが出来るようになりました。

犬CRPは炎症が起こった時に発生するタンパクのことで、全身的な炎症や感染を起こした際には著しく値が上昇します。

ただ髄膜炎だけに犬CRPの上昇がみられるというわけではないので、他の炎症性や感染性の疾患との区別は重要となります。

セカンドセレクトでも、発熱や食欲不振、どことない疼痛や震えが見られた際には、犬CRPを計測していきます。

高値の場合は、この病気の仮診断を行い、さらに進んだ治療に進んでいきます。

ちなみに確定診断はMRI及び脳脊髄液を採取し、細胞成分を調べることによりわかります。

ただし、MRIを含めた検査が治療前に行われることはあまりないのと、適切な治療を行うと1日以内に通常の脳脊髄液になってしまうため、一般的には確定診断を行うことは非常に困難だと思います。

治療方法について

ステロイド剤による治療がかなり有効です。

ただ残念なことにほとんどの症例では完全にステロイドを休薬することが出来ず、生涯的な投与が必要になることが多いと思います。

ですので、セカンドセレクトではまず症状が緩和するまではステロイドを積極的に使用したのち、段々と減薬していきます。

ステロイドにはもし継続的に服用していても副作用が出ない、もしくは非常に軽微な副作用しかないであろうとされる年間投与量の基準量が設けられています。

その基準量まで減薬を試みますが、減薬中に症状が再発する場合は別の免疫抑制剤を使用することもあります。

大抵の場合、治療にはよく反応し、通常の生活を送れるようにはなるのですが、中高齢以降にこの病気になった時には若い個体に比べステロイドの反応がよくないことも多く、症状の鎮静化に苦慮することもあります。

ちなみにパグ、マルチーズ、ヨークシャテリアが同様の症状を起こした場合は要注意が必要です。

これらの犬種では症状はかなり急速に進み、起立不全や昏睡などの強い神経症状が出ることがあります。

一般的には壊死性髄膜脳炎と言われ、予後のとても悪い病気とされています。

まとめ

脳脊髄の病気は数多くあるのですが、特殊な検査を行わなければ診断がつかないものばかりです。

セカンドセレクトではこういった疾患を持つ症例を数多く診察しておりますので、もしこの記事を読んで少し不安になった飼い主様がいらっしゃいましたら、いつでもご相談いただければと思います。

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