ぼくが中学生のころには「エイズ」という病気が初めて聞かれるようになりました。

今では知らない人はいないだろうと思われるぐらい認知度の高い病気になりました。

治ることのない病気であること、進行が緩やかですがその末期の姿が非常に衝撃的な姿になるため、よりその知名度は高いものとなったのだと思います。

人間以外でもエイズを引き起こすウイルスはあり、よく知られているのが猫と猿のエイズです。

このうち動物病院では猫のエイズに関しては比較的よく遭遇する症例です。

今回は猫免疫不全ウイルスであるFIV、通称ネコエイズについてご説明したいと思います。

猫のエイズってどんな病気?

猫のエイズは人のエイズと同様、ウイルスにかかった猫の免疫力が著しく低下し、衰弱していく病気です。

ぼくは他の記事でも書いたことがありますが、猫のエイズワクチンの治験に参加していたこともあり、多くのエイズに感染した猫と出会ったことがあります。

20年ぐらい前には猿や猫のエイズの研究は人間のエイズの研究に役に立つだろうということで、色々な研究機関で調査が進められていました。

今ではあまり行われていないと聞いています。

理由としては人間のエイズに比べると、猿のエイズは非常に進行が速く、猫のエイズは非常に進行が遅いため、あまり人間のモデルにならないというのがその理由の一つです。

そういうわけで、猫のエイズはあまり発症せず、一生を全うすることが多いと思います。

外見上では普通の猫とエイズに感染した猫の見分けをすることはできません。

感染する経路は猫同士の喧嘩などと言われていますが、猫のエイズウイルスはもともとウイルス自体の抵抗力も弱く、伝搬力もあまりないため、咬傷による感染はあまり起こらないとされています。

ほとんどの場合、猫のエイズは母子感染によるものが多く、たいてい仔猫の時期からエイズのキャリアとなっています。

若い時にエイズの最終段階になることはなく、たいていは10歳を超えたあたりで何らかの兆候が出てきます。

多くの場合は難治性の鼻炎、口内炎を患い、食欲が低下していきます。

猫のエイズは人間のエイズを参考にしたステージに分かれていますが、ステージは一方方向でなく、体調がすぐれない時には何らかの支持療法を行うと持ち直すことも多くあります。

そうやって段々と年を取って行って、老衰かエイズの発症なのか区別がつかない感じで天命を全うしていけることが多いと思います。

なぜ治らない?

エイズは治らないというのは大体の皆様がご存知のことだと思います。

その理由は?と言われれば正確に説明できることができないと思います。

エイズが治らない理由は、猫の細胞のの中遺伝子の中にエイズウイルスの遺伝子が組み込まれてしまうからです。

こういったウイルスはその他にも白血病ウイルスが有名であり、白血病ウイルスも一度感染が成立すると治癒が見込めない病気の一つになります。

エイズウイルスは猫の遺伝子の中に組み込まれた後、感染した猫の色々な免疫の仕組みを使って数年以上の間、休眠状態になります。

この休眠状態のときに何かの方法を使ってウイルスの遺伝子が入り込んでしまった細胞を消滅させることができるのであれば、治癒は可能だと思いますが、現時点では休眠状態をいかに長くするかという治療法がメインの方法です。

そして休眠状態であったとしても、感染した細胞が分裂をして増えていくときには、ウイルスの遺伝子も一緒に複写され増加していくので、症状は緩慢に進行していきます。

休眠状態から覚めると急激に感染が拡大します。

この感染が拡大しているときに症状が出ることが多く、いかに感染の拡大を防いでいくのかが次の治療の目的になります。

どちらにせよ、こういったエイズウイルスの増殖を完全に抑える方法はないため、人間でも様々な国で問題になっているというわけです。

自宅の猫がエイズだったら・・・

かなり雑な言い方にはなりますが、自宅の猫にエイズという診断が下ったとしても、それほど悲観することはないと思います。

進行は非常に緩やかに進み、いずれ口内炎や鼻炎で悩むことになるかもしれませんが、それはエイズに感染していない猫でもよくみられる病気です。

エイズという病気が存在しようがなかろうが、難治性であることが多く、治療の方法はあまり変わりません。

また多頭飼育の場合でもそれほど悲観的になることはないと思います。

数年普通に生活させていても、他の猫に感染する可能性はかなり低いからです。

最近では猫のエイズのワクチンが(やっと)市販に流通し始めたので、そういったワクチンを接種することによって予防するといいと思います。

まとめ

最近では人間のエイズでもニュースでもあまり見ることがなくなりました。

猫ではほぼ地域猫にしか感染が見られないとされていますが、ある統計では地域猫の約3%の感染率だと言われています。

基本的に外猫でなければあまり感染に関しては気にしなくてもいい病気です。

ただ、この記事ではあまりエイズは怖くない病気のようには書いてありますが、実際には感染したエイズの種類(株)によって症状の進行は異なります。

どんな病気であっても病気は病気です。

ご自宅にエイズに感染した猫のいる飼い主にとっては心配の種は尽きないと思います。

もしこの記事を読んで、このあたりどうなんだろう・・・ということがあったら是非セカンドセレクトにご相談ください。

ぼく自身は、猫のエイズに関してはマニアに近い知識と経験がありますので、何かしらのご相談には乗らせていただくことができると思います。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう