腫瘍と一口に言っても色々な腫瘍があります。
良性の腫瘍から悪性度の高いもの、またできた場所によって良性だったとしても非常に厄介なものまでいろいろあります。
特に口の中の腫瘍については、よく目立つうえに、悪性度の高い腫瘍ばかりなので、獣医師としても非常に気を遣う場面に遭遇することも多くあります。
そんな口の中の腫瘍でも、一番飼い主様からご質問が多い腫瘍と言えば「エプリース」というものです。
良性の腫瘍なのですが、見た目が非常に悪性のよう見えるため、飼い主様の不安もかなりなものだと思います。
今回はそんなエプリースについてご説明したいと思います。
エプリースっていったい何?
エプリースとは歯茎にできる良性の腫瘍です。
歯茎に色々な場所に発生するので、歯茎の奥の方にできているときには、飼い主様も気づかないこともよくあります。
エプリースは良性の腫瘍と言いつつも、歯肉炎やかみ合わせによって歯が当たるようなところにできやすいので、炎症性の肉芽のような存在です。
色は通常他の歯茎の色と変わらず、また表面もつるっと滑らかで硬いことが多いと思います。
大型犬では割と大きくなることもあり、エプリースによっては自体が完全に隠れてしまうほど大きくなることもあります。
またできた場所によっては出血もしやすく、たまにシーツやタオルなどに薄く出血の跡がつくこともあります。
基本的には病理検査によって診断がつくのですが、経験のある獣医師であれば、見た目で何となく判断がつくものだと思います。
エプリースの治療法は?放っておいてもいい?
エプリースの治療法は基本的に外科的な切除になります。
良性の腫瘍と言いつつも、口の中の腫瘍は外科的な切除がかなり大変です。
膨らんでいる腫瘍の部分だけでなく正常な歯茎もある程度えぐらないといけません。
問題なのは歯茎は伸縮性のない組織なので、えぐったらえぐったままで再生を待つしかありません。
また歯茎ではなく歯槽骨と呼ばれる歯の根から発生している場合もあるので、抜歯も必要なことも多くあります。
これは個人的な意見になるのですが、エプリースは良性の腫瘍の中でも切除がとても大変で、その割には切除後に得られる恩恵があまりないように思えるので、いつもお勧めはしていません。
そのまま温存して様子を見ていても、とうのペットたちの様子はいたって変わりませんので、基本的には手術をしなくてもいいと思います。
赤く血が出ていても、あまり投薬も必要ありませんので、それほど心配する必要もありません。
まとめ
口の中の腫瘍というのは、本当によくないものが多いと思います。
エプリースのような良性の腫瘍を含めてですが、それを治療しようとするとかなり大変だと思います。
その分、何か口の中にできたときには、飼い主様のご心配も非常に大きいものになるのも当然です。
もし飼っているペットの口の中に何かできもが見つかったら・・・いつでもお気兼ねなくご相談下さい。