犬という生き物は、猫やその他の動物に比べると、口を大きく開けることが多い動物だと思います。
診察をしているとそんな犬が、「犬が口を開かなくなった」とか「急に食事をぽろぽろと落とすようになった」、「口を触ると嫌がるようになった」などを心配されてご来院される飼い主様も多くいらっしゃいます。
たいていの場合、一時的なものか、もしくは歯周病などの問題であったりするのですが、たまに明らかに口を触られること自体を嫌がる犬もいます。
こういった場合、たまにある病気として「咀嚼筋炎」というものがあります。
今回はこのあまり聞いたことがない病気についてご説明したいと思います。
咀嚼筋って?
咀嚼筋はその名の通り、モノを食べるときに咀嚼する際に使用される筋肉です。
4つの筋肉からなるのですが、ざっくり言うと歯をぐっと食いしばった時に膨れる筋肉とこめかみの筋肉、それと顎を前後に動かす筋肉になります。
咀嚼筋は体のほかの筋肉よりもエネルギーを生み出すミトコンドリアの量が多く、持続的な運動に耐えることが出来ます。
そうでなければ、一口100回噛むなんて言う医療指導ができるわけがないと思います。
咀嚼筋炎とは?
咀嚼筋炎とは免疫異常によって、自己の免疫システムが咀嚼筋を攻撃することによって起こります。
咀嚼筋炎を患った犬は、顔の頬の近辺の痛みから、食欲不振、元気がなくなるなどの症状見られるようになります。
口を開くのを嫌がるだけでなく、頭を撫でられるのを嫌がなど、顔周りに人間の手が来ることを極端に嫌がることが多くなります。
始めは咀嚼筋自体は腫脹しているのですが、症状が進むと筋肉の萎縮が進み、こめかみのあたりの筋肉が削げ落ち、頭蓋骨の形がよくわかるくらい、筋肉が痩せていきます。
症状が進行した犬はあまり痛みを訴えることはかえってない反面、口はかなり開きずらくなっていることが多いのですが、この時点で動物病院に連れてくる飼い主様が多いと思います。
検査の方法は?
確定的な検査の方法は、筋電図と呼ばれる筋肉の電位を見る検査と病理検査になりますが、筋電図は汎用される検査機器ではないのと、病理検査は犬への負担が大きいため、あまり一般的ではありません。
セカンドセレクトも含めですが、一般的な動物病院では、特徴的な筋肉の萎縮と筋炎にかかわる血液検査の結果から推測していきます。
ただし、血液検査は病状の進行がかなり進んでいた場合は、見かけ上、特に問題がないような結果になるため、判断には注意が必要です。
治療法について
基本的には免疫を抑制するために治療薬を使用します。
ステロイドが代表的な治療薬で、補助としてその他の免疫抑制剤を使用していきます。
教科書的には予後は良いとされていますが、咀嚼筋炎を患う犬は大型犬が多く、また大型犬はステロイドが持つ副作用への耐性が弱いため、割と多くの犬で副作用が多くみられます。
ステロイドの副作用は注意して投与すれば、軽微~中程度の問題で抑えることが出来るのですが、排尿の量が異常に増えるため、自宅での管理は割と大変になるとおっしゃる飼い主様が多いと思います。
いずれにしても生涯的な投薬が必要になるため、定期的に病状もしくは副作用を把握するための定期検査が必要となるため、それなりの負担が生じることがどの犬種おいても避けられないと思います。
まとめ
セカンドセレクトでは多くの免疫不全、免疫異常を患った動物たちが来院します。
こういった病気は病状が安定しているのか、そうでないのかわかりずらいこともあるため、何かご心配なことがありましたら、いつでもお気兼ねなくご相談ください。