健康とは失って初めてそのありがたみに気づくものだとよく言われますが、まさにその通りだと思います。

体というものは意外とバランスを保ってくれるもので、病気になっていても自覚症状はすぐに出ることは少ないため、調子を崩すのは人も動物もいつも突然です。

とくに動物の場合は自覚症状が出たとしても、それを人に訴えることは滅多にないので、発見はいつも遅れがちです。

特に腫瘍系の病気は、体の表面にできているものだとしても毛でおおわれているので、ある程度大きくならなければ気づくこともないでしょうし、ましてや体の内側であれば気づくすべはありません。

何か異変に気づき、動物病院に行って検査をすると癌が見つかる・・・特に高齢のペットを飼われている飼い主様であれば誰しも経験する可能性があると思います。

ペットが高齢な場合、治療の選択肢が若い個体よりも当然狭まれてしまうため、いったいどうすればいいのか悩まれてしまうこともあると思います。

今回は、予期もせず高齢なペットに癌が見つかった時の選択肢についてご説明したいと思います。

寿命と思って自宅で看とる

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経験上、高齢のペットを飼われているほとんどの飼い主様がこの選択肢をとると思います。

全く何もしない方もいれば、皮下補液を定期的に行い、できる限り体調の低下を防ごうとする飼い主様もいらっしゃいます。

個人的には、大体の飼い主様が皮下補液を週に1回から2回ほど行うケースが多いとは思いますが、ご自宅で毎日皮下補液を行う方もいらっしゃいます。

ぼく個人の意見としては、もし自宅で看取ろうと思うのであれば、負担にならないのであれば皮下補液は頻回行うことは大きなメリットがあると思います。

また、腫瘍の進行とともに色々な問題が出てくるので、それに伴う対症的な治療を行っていくことも多いと思います。

体表の腫瘍であれば褥瘡ができることもありますし、また肺に転移を起こしているケースでは胸水などが溜まることもあります。

これらの問題を飼い主様おひとりで解決させるのは非常に難しいと思います。

通院などの負担を考え、往診などを検討したほうがいいと思います。

無理な治療はしたくないが、原因だけははっきりとさせたいので確定診断はつけたい

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腫瘍の確定診断は場合によっては簡単でないこともあります。

腫瘍の診断には最終的には細胞の病理検査が必要です。

針生検と言って腫瘍に注射針をさして細胞を採取するのが最も一般的な方法ですが、体表にある場合は容易に採取できるのですが、胸腔内、腹腔内に腫瘍がある場合はエコーなどのガイド下で行います。

基本的には麻酔無しで行う検査のため、出血や発作、失神などのリスクがあり、時には致死的な状態に陥ることもなります。

また転移の状況などを調べるためにCT検査は人間の場合には一般的ですが、動物の場合にはしばしば全身麻酔が必要なため、これらにもリスクが伴います。

ただ、こういったリスクを乗り越え、確定診断がついた場合、飼っているペットが抱えている問題が完全に理解することが出来るため、同じ自宅で様子を看るであっても受け入れ方が全く違ってきます。

それ飼い主様にとって非常に大きなメリットになると思います。

積極的な治療を望む

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もともと犬や猫の寿命は人の寿命に比べると非常に短く、おなじ1年という時間でも価値観はかなり違ってきます。

高齢と言っても何歳から高齢になるのかは、飼い主様の価値観にもよりますし、動物の状況にもよりけりです。

したがって、10歳を超え、13歳、14歳、15歳でもできる限りの治療を行いたいと思う飼い主様もいらっしゃいます。

その場合は、上記の確定診断を行ってから、術前計画もしくは抗がん剤の計画を練った上で、慎重に進めることが望ましいと思われます。

ぼく自身の経験では積極的な治療を望まれる飼い主様はそれほど多くはありませんが、中にはやってよかったと実感できる治療経過が出ることもあるので、選択肢の一つにはなると思います。

いわゆる代替療法と言われる方法をとる

効能に関しては賛否両論はありますが、方法としては確立されているものも多く、一定の効果は期待が出来ます。

あまり副作用が出ないというのも大きな利点であり、高齢の動物でも取り入れやすい治療だとは思います。

専門的な用語にはなりますが、養子免疫やオゾン療法などは代表的な代替療法で、一つの治療の選択肢にあげる動物病院もあります。

まとめ

結局どういった治療法をとるかは、担当した獣医師の診療方針に大きく影響されるのだとは思います。

ただ、ぼく自身が思うのは、高齢のペットの場合、飼い主様と一緒に暮らしていた時間も長いので、できる限り飼い主様の心情を理解したうえでの治療の方向性の提示が望ましいと思います。

当然ですが、飼い主様ご自身で治療方針が選択できる方はほとんどいらっしゃらないので獣医師の言われるがままに進むこともあるからです。

読んでいただいた飼い主様に、今回の記事が少しでもお役に立てればと願っています。

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