日本の冬によく起こる季節病と言えば、霜焼けだと思います。
指先が腫れあがり赤くかゆみが出てくる症状は、都会に住んでいる今の子供にはもう見られないのかもしれませんが、寒冷な気候下では体の末端の血流が悪くなり、炎症を引き起こすことで起こる疾患です。
犬には霜焼けという症状はありませんが、特に寒冷な季節に耳の先端の毛が抜けたり、ガビガビなかさぶたができたり、場合よっては出血し壊死を起こすケースもあります。
ミニチュアダックスやイタリアングレートハウンドなどでよく見られるこの症状は、耳の先端からの出血があった場合、なかなか出血が止まらないため、しばしば飼い主様を悩ませる症状となります。
今回はそんな耳の先端で起こる困った症状についてご説明したいと思います。
この病気の原因は?
この病気がなぜ起こるのか、実際にはよくわかっていません。
免疫が絡んでいるのではと言われてはいますが、はっきりとした素因はわかっておらず、確定診断をする方法が現在のところはありません。
結局のところは末端の血流が悪くなり、循環障害を起こし皮膚炎もしくは皮膚の脱落を起こしていきます。
この病気は耳が広く、厚さのない犬に多発し、また症状が重篤な犬は足先にも同様な所見が起こるため、温度と体温が問題であろうと推測されています。
実際、寒冷凝集素症と言って、体温がある程度下がると血管内の赤血球が過剰に壊されてしまう病気を併発していることも多く、個人的にも体温がある程度下がると発生する血管炎と循環障害からおこると思っています。
ただし、実際にこの病気を起こした犬は夏場でも症状が発生しますし、保温をしっかり行っていても進行を止めることが出来ないので、体温と温度だけがかかわっているとは思えません。
耳の大きい犬種ならどの犬でも症状を出す可能性があるのですが、明らかに犬種によって発生率が異なるため、遺伝的な要因も大きく含まれていると思います。
治療法と予防法はあるの?
一般的な治療法は、患部にステロイドを含んだ軟膏を塗りこみよくマッサージしてもらうことが多いと思います。
また、内服としてステロイドや免疫抑制剤などを服用するケースもあります。
ですが、一度欠けてしまった犬の耳は再生することはありません。
基本的には進行を抑え、出血がない状況を維持するのが治療の目的となります。
また、最近ではコラーゲン療法もいい成績が出ているといわれています。
加水分解など特殊な加工をしたコラーゲンを摂取することにより、副作用なく病状を管理することが出来るようになったと報告されているため、ぼく個人としてはよく使用しています。
予防法などはないため、とにかくミニチュアダックスなどの好発犬種を飼われていたら、特に冬場などは耳の先端などたまに観察しておいた方がいいと思います。
先ほど書いた通り、耳は再生しませんので、早期発見、早期治療が一番の対応法だと思います。
まとめ
メジャーな病気でありながら、診断方法も治療法もない病気は色々ありますが、この耳の病気もそういった病気の中の一つだと思います。
残念ながら画期的な方法はありませんが、少し心配な飼い主様がいらっしゃいましたら、往診でも十分に対応できる病気ではあるので、お気軽にご相談していただければと思います。