飼い始めたばかりの時には想像すらもできないのですが、飼い始めてからたった十数年で犬や猫は老いて衰えていきます。
老衰は病気ではなく自然な流れだと思うので、抗うことなく受け入れていくしかないのだとは思いますが、それでも何とかしたいと思うのが人の常です。
自分自身の年齢の衰えに対してもそうですが、より寿命の短い動物に対して、ほとんどの飼い主様が色々な努力をするのではないでしょうか。
最初のうちはサプリメントなどを使用していくことが多いと思いますが、いよいよ食欲もめっきりなくなり、寝たままになってしまうような時に取りえる選択肢の一つとして皮下補液という方法があります。
今回は往診でもよくご依頼のある皮下補液について、往診医としての立場からご説明をしたいと思います。
皮下補液とは?その効能
皮下補液とは皮膚の下に主に生理食塩水やリンゲル液を注射する方法です。
人間の場合は皮下注射は薬剤の刺激が強いため、どちらかと言えば筋肉注射が一般的です。
犬や猫を代表とする動物の場合は、人間と違い皮下組織が非常に大きく、また皮膚自体にもゆとりがあるので、皮下注射が一般的です。
皮下注射の最大のメリットは、静脈注射や筋肉注射と異なり、体の中に入った薬剤が緩慢に吸収されるというところです。
したがって過度な変化がない分、体への負担も少なく、弱った個体に対しても安全に行うことが出来るというのが最大のメリットです。
往診で行うことのメリット
皮下補液は往診で依頼がある内容の中でも、最も多いものの一つだと思います。
皮下補液を必要とする動物のほとんどは、非常に弱っている個体も多く、通院の移動の負担が非常に大きいものとなります。
往診ではそういった負担がないため、動物へ強いるデメリットを最小限に抑えることもできます。
また、ご自宅での投薬や給餌のお世話なども一緒にお手伝いすることも可能ですので、そういった意味ではとても飼い主様のご負担も軽減するのでは?と思います。
逆にデメリットは?
今まで往診医としてやってきた中で、往診による皮下補液のデメリットはそれほど感じたことはありません。
しいて言うのであれば、血液検査などの機器を使用した検査をその場で行うことができないため、体の内側の情報を正確に把握するのには時間がかかるところだと思います。
ただ、自宅での皮下補液を必要とする個体は、そういった検査も耐えうる状況ではないことも多く、温和に治療を進める方針で考えているのであれば、そこもそれほどの問題にはならないと思います。
まとめ
ターミナルケア、緩和療法など色々な言い方があるかもしれませんが、皮下補液を定期的に行うことは高齢な動物や弱った個体のQOLをあげることが可能な治療だと思います。
それを延命治療だという飼い主様もいらっしゃるかもしれませんが、残された時間の中で皮下補液を定期的に行ったペットとそうでないペットの違いは歴然だと思います。
もし自分が飼っているペットが高齢になり、食欲がなくなったら・・・往診での皮下補液を一度検討してみてはいかがでしょうか?