今回は意外とよく聞かれる内容なのですが、結構答えにくいペットの花粉症についてです。
元来、花粉症とは病名ではなく、どちらかというと俗称のようなものです。
実際、ぼく自身も30年以上にわたり重度の花粉症を患っており、最初のころは花粉症という単語すらなかったため、いわゆる蓄膿症とかアレルギー性鼻炎と言われていたのが、いつのまにか花粉症という名前に変わっていました。
人間の花粉症の症状は非常に特徴的なのです。
一方で、犬や猫などのペットの場合はたして人間と同じなのかというと、個人的にはかなり異なると思います。
そもそも犬や猫に花粉症があるのかというと、スギやヒノキに対してのアレルギー反応はありますが、犬や猫には人間と同じような花粉症の症状はほとんどありません。
今回は自分の犬や猫に花粉症かもという症状、くしゃみや鼻水が出た場合のその原因やどうすればいいのかということを、往診医の立場からご説明したいと思います。
若齢の幼い犬の場合
幼い犬の場合はその原因はもっぱら感染症だと思われます。
特に幼犬の場合は呼吸器系の感染症は極めて多く、気管支炎などを起こしているケースもよく見られ、細菌などによる2次感染、3次感染を伴うとくしゃみ鼻水も頻発します。
鼻汁は粘調性のある濁ったもので、ほとんどの場合こもったような咳を併発しています。
食欲も低下している場合は集中的な治療が必要です。
食欲が回復してくればおのずと改善するのですが、衰弱も激しいために治療は慎重に行うべきです。
ご自宅で様子をみて自然回復することはほぼないので、速やかに受診された方がいいと思います。
成犬のミニチュアダックスの場合
特にミニチュアダックスに多いのですが、マズルが長い犬種では前頭洞、副鼻腔といった頭蓋骨の空間が非常に大きく、蓄膿症をおこすケースが多いと思います。
とくにミニチュアダックスでは、自己免疫が絡んだ蓄膿症も多く、絶えず鼻水が出たり、喉の奥に鼻汁が入りこみ咳き込んだり、最悪の場合は肺炎などを引き起こすこともあります。
経験上、治療の効果がかなり出にくい症状で、治療を行えば改善はするものの根治に至らず、休薬するとまた鼻水が垂れることが多いと思います。
症状はまさしく花粉症のようなものなのですが、季節性はなく通年で起こります。
獣医師泣かせの病気の一つだと思います。
パグやシーズーなどの短頭種の場合
短頭種の鼻水くしゃみは、基本的には構造的な問題が多いので、ひどくなければ基本的には様子をみてもらうことが多いと思います。
ただし、フレンチブルドッグの場合は鼻腔内腫瘍も多く、透明な鼻水に出血や混濁した鼻汁が出る場合は念のためCTとMRI検査を行った方がお勧めです。
ある程度の老犬の場合
老犬の鼻水の多くの原因は特に犬歯の歯根の化膿や炎症が原因であることが多いと思います。
根本的な解決は抜歯するしかありませんが、たいていの場合は全身麻酔を必要とします。
したがって老犬がゆえに抜歯ができないことも多いので、内服などでごまかしごまかし治療が進むことも多いと思います。
たいていの場合は薬に反応し良化を示すのですが、ミニチュアダックスの場合はそのマズルの長さから治療への反応は極めて悪いことが多く、デンタルケアを含めて積極的に抜歯を検討してもいいかもしれません。
猫の場合
猫の場合は感染症が原因であることが多いと思います。
特にもともと保護猫などで幼いころにヘルペスウイルスに感染すると持続的に感染が成立するため、数年間無症状であったとしても突然くしゃみや鼻水が出てきます。
特徴的なのは結膜炎やまれに口内炎も併発することもあり、さらに発熱を併発した場合、元気や食欲が一気に低下するため、わりと厄介な症状だと思います。
たいていの場合は大事に至ることはありませんが、慢性的な鼻炎や結膜炎が後遺症として残るケースもあるので、症状が軽いうちからしっかりと治療を受けられるといいでしょう。
もし眼球が左右で大きさが異なったら?
左右の目の大きさが違う、しゅん膜がでるなどの症状が伴った場合は鼻腔内の腫瘍の可能性も否定はできません。
年齢的、体力的に余裕がありそうであれば、CTとMRI検査を積極的に検討し、腫瘍の有無をはっきりさせておいた方がいいと思います。
まとめ
これらの症状のほとんどは往診でも対応ができます。
特に幼犬や老犬、猫の場合などは移動の負担などを考えるとかえって往診で受診された方が結果的には治癒も早いこともあると思います。
自宅のペットが花粉症?とおもったら・・・お気兼ねなくご相談して頂ければと思います。