日本人の死亡率のランキングとして必ず入ってくるのが、ガンと心臓疾患、それと近年では肺炎が第3位になりましたが、いまでも高い死亡率を保っているのが脳血管疾患です。

心臓疾患や脳血管疾患の大部分は心筋梗塞や脳梗塞に由来するもの。

血栓や脂肪の結晶化したものなどが多いと言われていますが、こういった異物が小血管につまり、その近辺の血液循環を阻害し、組織不全が起こることを梗塞と言います。

脳に起これば脳梗塞、心筋に起これば心筋梗塞です。

ペットにおいては脳梗塞や心筋梗塞はあまりみられる病気ではありません。

心臓と脳との位置関係や血管の走行が人間とはかなり異なるからだと言われています。

その代わりに、ちょくちょくみられるのが脊髄梗塞と言われる病気です。

その名の通り、背骨の中を通る脊髄にある血管が何らかの原因によっておこる梗塞により循環障害がおこり出てくる症状です。

人間における脳梗塞や心筋梗塞と同様、なんの予兆もなく突然起こり四肢のマヒが起こる病気です。

今回は聞いたことがあるようで、聞き覚えがない病気、脊髄梗塞についてご説明したいと思います。

脊髄梗塞の原因

脳梗塞や心筋梗塞はその多くの場合、生活習慣病にかかわっているといわれています。

一方、動物の場合、脊髄梗塞の原因は多くの場合は遺伝的な要素が大きく、猫ではまれで、犬では比較的犬種によって発生頻度が異なります。

ほぼすべての犬種で起こるのですが、比較的多いとされているのがシュナウザー系とシェルティーなどの犬種です。

梗塞する物質はあまりよく分かっておらず、頚椎や腰椎を支持している軟骨が何らかの原因で血管内に侵入して起こるといわれています。

シュナウザー系やシェルティーなどは遺伝的に脂肪の代謝障害があるとされているので、このあたりに原因があると考えている先生もいらっしゃいますが、詳しい病態はわかっていません。

そういった意味では、同じ梗塞という病名を用いますが、脳梗塞や心筋梗塞とは異なった病気になると思います。

脊髄梗塞の症状

一般的によくみられるのは後肢の麻痺ですが、椎間板ヘルニアと異なるのは麻痺が片方の足のみでみられることがほとんどであるということです。

また椎間板ヘルニアのように疼痛を示すことはまれで、ある程度時間がたつと症状の悪化が見られなくなるのが普通です。

ただ僕も何回か経験したことがあるのですが、脊髄梗塞が頚椎の神経に発生した場合は四肢すべてがマヒをすることが多いと言われています。

この場合はまれに死の危険もあると言われているのですが、僕は今のところ遭遇したことはありません。

検査方法

ほとんどの場合、その特徴的な所見からある程度は容易に診断できることが多いと思います。

ただ椎間板ヘルニアやその他の神経疾患との区別を完全につけるのは見た目だけでは不可能なので、検査を進めていきます。

一般的な血液検査とレントゲン検査を行い、心臓疾患の可能性がある場合はエコー検査と心電図検査を行います。

そのうえでMRIを実施し、他の神経疾患との区別を行うのですが、注意しなければいけないのがMRIでも確定診断は行うことができないというところです。

MRIで血管が梗塞しているという画像は得ることが出来ないので、他の神経疾患が存在せず、脊髄神経に炎症所見のみが残っているというところから推測していきます。

現在のところ梗塞させている物質さえ特定はできていないので仕方がないと言えば仕方がありません。

したがって、ある程度時間がたち、回復期に行ったとしてもその炎症の所見すら得ることもできないこともあるため、仮診断として治療を進めていくことも多くあります。

治療法は?手術は必要?

原因が特定できないことがあるというとかなり不安が残りますが、脊髄梗塞はおおよそ2週間から2か月程度でほぼ元に戻ることがほとんどで、後遺症も残らないか、残ったとしてもかなり軽いものになることが多いと思います。

外科手術は基本的には不要です。

獣医師によっては脊髄梗塞と判断された場合、治療すらせず経過観察する獣医師も中にはいます。

セカンドセレクトの場合は、平均2週間程度はステロイド剤を投薬することをお勧めしています。

基本的には内服薬を処方し、ご自宅での管理になるのですが、重症例には特殊なステロイドを使用するため、入院管理で経過を見ることもあります。

また、サプリメントを併用することも非常に効果的です。

セカンドセレクトではほかの疾患でもお勧めしているサプリメントですので試してみる価値はあると思います。

まとめ

脊髄梗塞は初期段階の症状は、歩行不全などが起こるために見た目はかなり激しいのですが、予後は良いものとされています。

だからといって麻痺がおこるというのは飼い主様にとっては非常に驚かれるものだと思います。

セカンドセレクトでは何らかの後遺症が残るケースでもリハビリを含めた治療も継続して行うことが出来ます。

もし治療の経過などに何らかの不安を感じることがあれば、いつでもお気兼ねなくご連絡ください。

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