犬や猫の耳は人間の耳と違い、種類によっていろいろな形があります。
立ち耳だったり大きな耳が垂れていたり、巻いているような特徴的な耳の形もあります。
ただし、耳自体は軟骨と皮膚、それとその中にある血管のみで構成されており、どんな耳の形をしていても耳自体は平べったい形をしています。
こういったいわゆる皮下組織や筋肉組織があまりないところに脱毛や湿疹が起こると治癒する時間は他の体の部位よりも長くかかることが一般的です。
特に、外傷ではなくなにかしらの内因的な問題で起こった病変部は、薬の効果も薄いので、とても治すのに苦労します。
今回はそんな内因的に起こる耳の病気の中で、寒冷凝集素症というものについてご説明したいと思います。
そもそも寒冷凝集素って何?
寒冷凝集素とは血液の中にある赤血球が低温にさらされるとお互いがくっついて固まる反応(凝集反応)のことを言います。
この凝集反応はもともと誰でも持っている抗体や補体と呼ばれる物質が赤血球と結合する反応です。
色々な原因によって凝集反応が過剰になることによって病状が発現されるものを寒冷凝集素症と呼びます。
人間では感染やある種の腫瘍を起こした場合、寒冷い地域でみられる症状です。
犬の場合は原因があまりよく分かっておらず、犬種によっての差もおそらくあるのだとは個人的には思いますが、今のところはそういった研究もされてはいません。
寒冷凝集素症の症状は?
血管内の赤血球が凝集する際に現れる抗体や補体は様々な免疫反応を起こします。
隣接している血管の壁に炎症をもたらし血管炎を起こしたり、血液自身が溶血したり、また凝集した血液そのものが血管につまり抹消の血管の循環不全を起こしたりもします。
こういった一連の凝集反応により、末端の血管が多くある指先や耳の皮膚の循環障害を起こし皮膚炎もしくは皮膚の脱落を起こしていきます。
犬では特耳に症状が多くみられ、強いかゆみとともに脱毛や耳の辺縁に厚いかさぶたがよく見られます。
辺縁のかさぶたの下では血管が破損し出血が多くみられます。
耳の出血は中々止まらないため、自宅での管理もままならないこともよくあります。
また重度の血流障害を起こしている個所では、耳がどんどん壊死していき、部分的に欠損するようなことも見られます。
この病気を起こした犬は夏場でも症状が発生しますし、保温をしっかり行っていても進行を止めることが出来ないので、一度症状がみられるとその治療は非常に困難です。
治療法は?
一般的な治療法は、患部にステロイドを含んだ軟膏を塗りこみよくマッサージしてもらうことが多いと思います。
また、内服としてステロイドや免疫抑制剤などを服用するケースもあります。
ですが、一度欠けてしまった犬の耳は再生することはありません。
基本的には進行を抑え、出血がない状況を維持するのが治療の目的となります。
また、最近ではコラーゲン療法もいい成績が出ているといわれています。
加水分解など特殊な加工をしたコラーゲンを摂取することにより、副作用なく病状を管理することが出来るようになったと報告されているため、ぼく個人としてはよく使用しています。
予防法などはないため、とにかくミニチュアダックスなどの好発犬種を飼われていたら、特に冬場などは耳の先端などたまに観察しておいた方がいいと思います。
先ほど書いた通り、耳は再生しませんので、早期発見、早期治療が一番の対応法だと思います。
まとめ
セカンドセレクトではこういった免疫疾患の治療にも多くの経験があります。
もしご自宅の犬に何か気になることがあったらいつでもご相談ください。