よく人でも胸焼けなんて言葉を使いますが、胃の内容物が喉のところまで上がってくる感覚は、ほとんどの方が経験したことのあるものだと思います。
実際に吐くところまではいきませんが、胃酸の何とも言えない後味は、決して快いものではないと思います。
こういった症状が頻繁に起こる場合、人間では胃食道逆流性疾患とか逆流性食道炎という病名がつき、たまに生活の改善と内服の投薬を医師から指示されることがあります。
ペットの世界でもこういった胃食道の逆流性疾患はあることが知られていますが、症状があいまいなため、動物病院に連れて行った方がいいか悩まれる飼い主様も多くいらっしゃると思います。
今回の記事ではこの胃食道逆流性疾患をご説明したいと思っています。
胃食道逆流性疾患の原因
食道は強い蠕動運動の能力をもち、口から入った食べ物を胃へと運びます。
食道は上部と下部で筋肉の種類、性質が異なり、胃に近い食道は非常に強い力で収縮しながら胃の入り口部分と結合します。
この力によって胃からの内容物の逆流を阻止することができます。
余談にはなりますが、この食道の能力は麻酔をかけると減弱するのですが、それでもある程度の絞扼力が残ってしまうので、しばしば内視鏡によって異物を取り除くときの弊害になることがあります。
人間では暴飲暴食や不規則な食生活により、胃が膨満しがちになり、下部の食道に胃内の圧が加わることにより食道の収縮力が失われてしまい、症状が発現すると言われています。
動物の場合はこれといったことは言われてはないのですが、膵炎などの疾患があったり、肥満などの体型的な問題などが原因とされていますが、はっきりとした原因が判明することは少ないと思います。
巨大食道症など重大な基礎疾患により引き起こされることもありますが、その場合にはそのほかの症状の方が目立って見えるため、診断はつけやすくなります。
個人的にはもともと動物は四つ足のため、生理的にあるような胃の内容物のちょっとした逆流でも人間よりも症状が強くなるのが一つの要因では?とは思っていますが、あくまでも個人的な意見ではです。
胃食道逆流性疾患の症状
一言で言うとパッとしません。
実際に胃の内容を吐き出すところまでいかないことも多く、ぺろぺろ舌なめずりの回数がやたら増えるなどの症状が見られます。
一過性の食欲不振などもみられることもありますが、見かけ上はほとんど変わらないこともよくあります。
気持ち悪そうな表情は、食後すぐに出ることもあれば、空腹時にみられることもあるので、症状にあまり一貫性はないと思います。
実際、内視鏡などで食道を観察しても異常は全く見られないことがほとんどで、治療を行うべきかどうか悩むケースもよくみれます。
人間では成人の場合、軽度の逆流性疾患であれば5割近くの方が経験をしていますが、ほとんど治療は必要としません。
犬や猫の場合も同様で、頻度や症状の重さもはっきりとしないケースも多いため、食事の内容を変更したり、いくつかの薬剤を試験的に投与して様子を見ていきながら、症状の改善があったかどうかで診断を下すこともあります。
治療法は?
できる限り、胃に負担をかけないようにするため、食事を頻回していただくことをお勧めしています。
これは胃内の圧をあげないようにするためと、空腹の時間を可能な限り減らし、過剰な胃酸の生成や十二指腸の内容物が逆流しないようにするために役に立つと思います。
食事の内容の変更だけでは症状の改善がない場合は、胃酸の生成を抑える薬を使用します。
また胃の内容をスムーズに腸へ移動させるため、胃腸の蠕動運動を促す薬も併用していきます。
血液検査などで慢性的な膵炎を引き起こししている場合には、過剰な膵臓の働きを抑えるためにタンパク分解酵素阻害薬を使用することもありますが、効果はいまいちのことも多い感じです。
よほどひどい場合にはステロイドのような抗炎症作用のある薬も使用しますが、胃炎を引き起こすことも多いので、使用は極力控えた方がいいと思います。
結局のところ、症状もはっきりとしないため、治療を開始してすっきりよくなったという感じも得られないことも多いので、普段の生活の中で色々変化をつけながら様子を見ていくことがほとんどです。
まとめ
胃食道逆流性疾患は命にかかわるような症状になることは少ないのですが、気持ち悪そうにしている犬や猫の姿を見ていると何とかしてあげたい気持ちになってきます。
この記事を読んで、そういえばうちの犬や猫も・・・と思い当たることがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。