てんかんという病気の名前は誰もが知っているのではないかと思います。

意識の欠落や痙攣など、日常生活に影響が出る重大な病気です。

ペットの世界では、てんかんは結構ありふれた病気であまり珍しい症状ではありません。

統計的には、人間以上にてんかん発作を起こすペットの数がいるといわれています。

ぼく自身も日常の診察で、程度の違いはあるにせよ、週に数回はてんかんの診察、ご相談を受けます。

てんかんによる発作は見た目の症状がはっきりとしており、いつ起こるかもわからないので多くの飼い主様が心配されています。

特にてんかんの発作が起こった時に何をすればいいのか?というご相談を非常に多く受けます。

今回の記事では犬、猫のてんかんについて、その付き合い方などをご説明したいと思います。

てんかんはなんで起こる?

脳内のの神経細胞は各細胞が発生させる電気的刺激を次の神経細胞に伝えることにより、各細胞の神経伝達が行われます。

その神経伝達の情報を大雑把に分けると、他の神経をさらに活動的にさせる情報を伝える神経と、他の神経の活動を抑える情報を伝える神経の2種類があります。

てんかんは、このうち活動を抑える情報を伝える神経が一時的に機能しなくなることにより起こるとされています。

したがって何かの刺激やタイミング、場合によっては何もなくても結果として脳内の神経全体が過剰に活動的になり、運動の統制がとれず、痙攣発作が起こってしまうのです。

てんかんの症状

てんかんという病気の厄介なところは、日常生活では全く問題がないのにもかかわらず、何の前触れもなく症状がおこるというところにあります。

てんかんは前発作、本発作、後発作に分かれます。

全発作は動物の情緒がやや不安定になり、異常行動をとることがあります。

人を呼ぶようなか細い声で鳴いたり、うろうろ落ち着きのないような動きをしたりします。

軽いものであれば前発作だけで終わるのですが、たいていの場合はそういった異常行動の後、痙攣を主症状とする本発作が始まります。

部分的な手足を硬直さるような痙攣をおこしたり、横に寝たまま手足をくるくると回し続けたりと、意識はない状態での動きが激しく起こります。

その後数分で症状がおさまることがほとんどですが、発作がおさまった後も、意識があるのかどうなのかわからないような状態が続いたり、顔の筋肉の一部がぴくぴく動いたりしながら収束していきます。

この段階を後発作と言います。

後発作は場合によっては半日以上続くこともあり、後発作の後、さらに本発作が起こることもあるので、だんだんと収束していくかどうかは注意して観察しないといけません。

てんかんの検査・治療法

獣医医療では、てんかんそのものを検査する方法はありません。

したがって、検査の方法は除去診断といって、何かほかの臓器などに根本的な問題があって2次的にてんかんの症状が出ていいないのかどうかを調べるのが検査の方法となります。

血液検査、レントゲン、心電図がその検査法になります。

脳の病変を診るのであれば、MRIを実施したいところなのですが、全身麻酔を必要とするため、MRIまで望まれる飼い主様は、それほど多くないというのが実情です。

治療に関しては、ある程度のガイドラインがあるのですが、治療しないケースの方が圧倒的に多いと思います。

え!?と思うかもしれませんが、てんかんの発作の大部分は、動物の健康を脅かすものではないことがほどんどだからです。

それではどいうときにてんかんは治療するのでしょうか?

けいれんは通常、短いときにはほ数十秒で治まるのですが、まれに数分から数十分、また一度治まったと思ったらすぐに次の発作が起こることもあります。

これはてんかんの重責状態とか群発性のてんかんと言われるもので、この痙攣の起こり方は重大な後遺症を残す可能性もあり、時には命の危険が出てくる発作です。

てんかんの治療とはこれらの重度の痙攣を抑えることが目的となります。

ただし治療と言っても、てんかんそのものを治す方法はないため、てんかんを予防する薬を毎日を飲ませるのが基本的な治療法になります。

抗痙攣薬にはいくつか種類はあるのですが、どの薬にも少ないながらも副作用が発生する可能性があるため、定期的な検査などを行い、適切な薬の量を考えていきます。

薬を毎日服用しても発作が出ことは多くいのですが、結局のところ、重責の状態にならなければ追加の投薬や治療は行わないことが通常です。

てんかんが起こったら

まず慌てないことが一番です。

先ほども述べましたが、発作自体で命を落とすことはほぼありません。

逆に何かをしようとして刺激をさせるとさらに発作が止まりにくくなるので、けがをさせないように周りのものをどかして静観するべきです。

発作がない状態では治療は基本的にはする必要がありませんので、発作が落ち着いていれば動物病院に行く必要もありません。

てんかんの重積状態が起こり、断続的に痙攣が起きている状況では、座薬の抗痙攣薬もあるのですが、それではほとんど痙攣は止まりません。

痙攣が長時間おこるようであれば、できるだけ早めに動物病院に連れていき、直接痙攣を抑える薬を血管から投予して、痙攣を強制的に停止させるのが理想です。

とにかく、まずはてんかんの発作が起こったら、長く続くのかどうかを落ち着いて見守るのがよいと思います。

まとめ

てんかんのようないわば「激しい」症状は、飼い主様にとってもかなりストレスになると思います。

獣医師としての経験論として、飼い主様が過度にストレスを感じていたり、過剰な心配をしていると、飼っていらっしゃるペットの発作が不思議と出やすくなります。

できるだけ飼い主様の心配事が取り除けるように、ご協力したいと常々考えておりますので、ご自宅のペットにてんかんが起こったら、お気兼ねなくご連絡ください。

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