動物病院には様々な病気をかかえて、色々な動物たちが来院されます。

ある統計では、動物病院への来院理由の第1位は皮膚病というデータもあります。

そんな皮膚病の理由の中で、もっとも一般的なものと言えばアレルギー性の皮膚炎だと思います。

アレルギー性の皮膚炎は犬種や年齢によっても発生する頻度は異なりますが、ほぼすべての犬種にみられる疾患の一つだと思います。

アレルギー性皮膚炎は一度発生するとたびたび再発を繰り返し、飼い主様にとっては治ったと思ってもまた病院に連れていかなければならない煩わしい病気の一つだと思います。

ぼく自身もこういったご相談を頻繁によく受けます。

今回はそんな動物病院でよく見かける病気、犬のアレルギー性皮膚炎についてご説明したいと思います。

アレルギー性皮膚炎の原因は?

アレルギーという言葉は誰しもが聞いたことがあると思いますが、それを正確に理解することはかなり困難です。

ぼくは以前に、免疫学を専攻していたのですが、アレルギーのことを免疫学の第一人者のような先生が説明しても、毎回言っていることが違っているようなことが多々ありました。

アレルギー自体は完全に解明できているわけではなく、またそれがどのように病状と結びつくかということもまだ完全には理解されていません。

いまのところ最も一般的な説明としては・・・

①アレルギーの原因物質が体の中に取り込まれると、それに対し過剰な反応を起こし病気を発症する

②アレルギーの原因物質はどんなものでも可能性になりうる

③アレルギーを起こしやすいか、起こしにくいかは遺伝的な要因が大きく絡んでいる

というものだと思います。

結局のところ、アレルギー性皮膚炎の原因はと聞かれれば、病状の発症は犬種によって一定の確率で発症するので、なるかならないかは環境的な要因と運だというのが個人的な意見です。

アレルギー性皮膚炎の症状

基本的には強い掻痒感と皮膚の赤みと脱毛がほとんどの症例で見ることが出来ます。

犬種や年齢によっても異なりますが、顔であれば目の周り、口角、体であればわきの下から胸部、内股にかけて起こるのが普通です。

症状があまりにもひどい場合は、エリザベスカラーなどで対応している飼い主様もいらっしゃいます。

一方で、四肢の先や背部のかゆみや発赤は純粋なアレルギーだけの要因ではないので、別の原因の絡んでいると考えた方が無難です。

かゆみや発赤があるところは皮膚の免疫バリアが破たんしているため、最近の感染を起こしていることが普通です。

初期段階では皮膚に存在する常在菌が病巣を悪化させるのですが、経過が長引いている犬では普段見ることが少ないような細菌も繁殖しています。

また時に真菌も2次感染を起こしていることもあり、そういった場合はさらに難治性の経過をたどります。

また全体的に脂っぽくなる犬もおり、脂漏症とよばれ、しばしばそのにおいなどで飼い主様の生活の質を低下させる原因となります。

アレルギー性皮膚炎の治療とは・・・

アレルギー性の皮膚炎の治療は大きく分けると3つになります。

①食事療法やシャンプー療法、サプリメントなどのケア

②外用薬

③内服もしくは注射などの全身投与薬

これら3つの治療を個別もしくは同時に行います。

治療するうえで気を付けないといけないことは、アレルギーは根治治療と呼べるものはなく、あくまでも対症療法、つまり症状の緩和しかないということです。

これはどんな方法をとったとしてもです。

ですので、どんな方法でも治療を行っているときには症状は改善しますが、休薬したり治療が中断されるとまた再発をするのが普通です。

専門病院などいけばより良い薬があるのでは?より良い方法があるのでは?と考えてしまうと思いますが、使用する薬は町の動物病院でも2次診療を行う病院でもほとんど変わらないのが現状です。

確かに獣医の中では、アレルギー性皮膚炎をはじめとする皮膚病が転院される病気の1位と昔から言われていますが、それはあくまでも治療法が間違っているというよりは、飼い主様と担当医の相性が合わなかっただけなのでは?と普段診察をしているとよく思います。

どんな検査が必要になる?

「え!?」と思うかもしれませんが、この犬はアレルギー性皮膚炎です!と断定できる診断方法はありません。

たいていの場合は除去診断と言い、アレルギー性皮膚炎と思われる症状が見られた場合に他の原因があるのかないのか調べるために検査を進めていきます。

一般的な検査は被毛抜いたり皮膚の表面をセロハンテープで採取し染色して顕微鏡で見る検査です。

寄生虫の有無、細菌や真菌の有無を確認していきます。

また、ホルモン異常がないかどうかの血液検査を行ったり、そのほかの一般的な健康状態がどうなのかなどを検査してきます。

そういった検査を行っても診断が白黒はっきりしない場合は、皮膚の一部を採取し病理診断を行うこともあります。

アレルギー検査は必要?

個人的な意見にはなりますが、アレルギー性皮膚炎を治療する際にはあまりアレルギー検査は必要ないと考えています。

理由はアレルギー体質の犬でもそうでない犬でもアレルギー検査を行えばかならず何かしらの項目に陽性反応がでるからです。

そしてアレルギーの原因として1項目のみ陽性反応と出ればいいのですが、ほとんどの場合、数個から数十個の単位で陽性反応が見られます。

また、アレルギーの原因によって治療法が異なるかといえばそうでもなく、どれが原因物質だとしても使用する薬はほぼ変わりません。

食事の内容を検討するためにアレルギー検査をご希望される方もいらっしゃいますが、セカンドセレクトではそれもお勧めしていません。

一般的なアレルギー検査と食物性アレルギーは相関関係がないとされており、有用性が低いからです。

食物アレルギーに関しては別途試験(リンパ球刺激試験)がありますので、実施をご希望の方はお気兼ねなくご相談ください。

ちなみにアレルギー検査は全く意味がないかと言われればそういわけではありません。

減感作療法と言って一種の体質改善を行う治療にはアレルギー検査は必須となります。

セカンドセレクトでは減感作療法に関しては現在のところ行っていませんので、ご希望の方は専門の病院をご紹介しています。

結局のどんな治療になるの?

基本的に根治がないのであれば、実際にどのような処方になるのかは飼い主様の主観的な意見でだいぶと変わってきます。

同じような症状であったとしても、少しでもかゆみがあるとかわいそうで見てられないという飼い主様と、ちょっとぐらいかゆがってもできるだけ薬は使用したくないという飼い主様では、処方の内容はだいぶと変わってきます。

もちろんどのような処方がいいのかは、毎回よくご相談させていただきますが、できるだけ副作用が少なく、かつ飼い主様のご負担が出来るだけ少ない治療法がいいと思っています。

しつこいようですが、アレルギー性皮膚炎には完治がないからです。

とはいいつつも、昔に比べるとかなり治療はやりやすくなりました。

抗生剤は犬に飲ませるのが非常に大変でしたが、長期間作用型のものが出ており飼い主様のご負担は少なくなりました。

以前は一般的なかゆみ止めと言えばステロイドが主体ですが、副作用もありなかなか長期的な使用には難儀することもありました。

最近ではステロイドと同等のかゆみを抑える効果があり、かつ副作用もほぼない薬もあるため、長期的な投薬も非常にやりやすくなりました。

薬用シャンプーも日進月歩で、それ単体だけでも皮膚の免疫バリアを維持し、いい皮膚の状態を長期間保持することも可能になりました。

どういった治療を主体で行うかは飼い主様次第にはなりますが、どういった治療でもしっかりと相談しながら行いますので、一緒に頑張っていきましょう。

くどいようですが、アレルギー性皮膚炎には完治がないからです。

まとめ

セカンドセレクトは皮膚病の専門医ではありませんが、今まで診てきた症例の数はかなり多いと思います。

治療法の良しあしだけでなく、飼い主様が陥りやすい誤解や悩みなど今までも色々と経験してきました。

そういった経験をいかし診察をしていきますので、ちょっと皮膚が赤くて心配と思ったら、お気兼ねなくご相談ください。

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