人間では年に1回の人間ドックというのは割と普通になってきました。
ペットの世界でも定期的な健康診断は一般的なものになり、ほとんどの病院でも様々な検査パックを提供していると思います。
主な検査内容は血液検査、レントゲンやエコー検査になるのですが、健康だと思っていても何かしらに引っかかるのは人間と同じかもしれません。
そういった検査でよく異常が見られる項目としては、肝臓に関する値が上昇していることが多いと思います。
多くの場合はあまり症状もなく、さしたる原因も見つからない場合も多く、結果として慢性肝炎という診断になることがよくあります。
今回は特に犬の慢性肝炎についてご説明したいと思います。
肝臓を調べる検査とは?
肝臓の評価はたいていの場合は血液検査で行われることが多いと思います。
特にアラニントランスアミラーゼと言われる肝酵素が代表的なもので、検査結果の表ではALTとかGPTであらわされることが多いと思います。
他に肝酵素でよく評価される値としてはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASTとかGOTと表記されることが多い)も使われますが、ALT(GPT)の方が肝臓の障害をよく反映するため、こちらの方を主に重要視します。
また、アルカリフォスファターゼ(ALP)やγグルタミルトランスフェラーゼ(γGTPとかGGTなどと表記されることが多い)は肝臓だけでなく、肝臓と連結している胆嚢の評価にも使用されます。
肝臓に関する最も一般的な血液検査項目は、以上の4つの項目になるのですが、重要なのはこういった項目に異常が見られた時に、果たして肝臓自体が問題なのか、肝臓以外が問題で数値に異常が見られるのかを調べる必要があります。
というのも肝臓は全ての腸管の消化産物や毒素を受け取り、また体内で発生するほとんどの生理活性物質の影響を受けるため、他の器官の疾患の影響を受け受けやすいからです。
このため肝臓は無害な傍観者などと呼ばれており、血液検査で肝臓に関する値に異常値が見られた場合は、レントゲンやエコー検査など、そのほかの臓器もチェックする必要があります。
他の臓器にも異常がなく、また薬物や感染症など肝臓を直接影響するような要因がない場合は、特発性慢性肝炎と呼ばれることになります。
慢性肝炎は治療が必要か?
慢性肝炎の多くの場合、外見上の異常は全く見当たらないことがほとんどで、たいていの場合は結果を見てびっくり!となることがほとんどです。
治療が必要かどうかに関して言えば、飼い主様のご意見や、担当した獣医師の経験則などが反映するため、例えば腎不全のようなスタンダードな治療指針は存在しません。
セカンドセレクトでは、慢性肝炎を患っている犬においては、定期的に検査を行い、みられた異常が進行していくようであれば投薬治療を行い、進行がほとんど見られなければ経過観察にすることが多いと思います。
いくつかの肝庇護剤と呼ばれるものや利胆剤と呼ばれる薬が主に肝臓の治療薬として使用されています。
種類はいくつかあるのですが、正直な話、どこの動物病院でも処方はほとんど変わりません。
また慢性肝炎の中には免疫介在性の肝炎が含まれていることもあり、ステロイドや免疫抑制剤などを使用することもあるのですが、個人的にはあまり推奨はしていません。
食生活は変更する必要はある?
極論から言えば、いわゆる肝臓用の処方食にする必要はないと思っています。
以前は肝機能の低下から主にたんぱく質の分解、解毒機能が低下しアンモニアなどの有毒な物質が発生しやすくなるため、たんぱく質を制限した食事が必要と考えられていましたが、現在のところ、たんぱく源を制御した食事は必要以上の制限になってしまう恐れがあるため、食事の制限は行わないというのがスタンダードな考え方になりました。
もし処方食を利用するとしたら、肝臓疾患用の食事はたんぱく質の含有量が少し抑えられているため、むしろ乳製品や大豆などのタンパク質を足してあげた方がいいと思います。
その他、ビタミンEなどは肝臓の炎症を抑える期待ができるため、食品やサプリメントから積極的にとってもいいと思います。
まとめ
慢性の肝炎はシニアの犬にはよく見られるものです。
セカンドセレクトでも、動物ドックやフィラリアなどでの健康診断で多くの犬に異常が見られています。
治療はするにせよ、しないにせよ現状把握はしておいた方がいいと思いますので、定期的な健康診断だけはどのような犬にもお勧めしています。