いきなりの話にはなりますが、ぼくはかなり重度の花粉症で、1年の1/3ぐらいは鼻水と鼻づまりに悩まされています。

それでも人間の大人であれば、鼻水で鼻がつまった時には鼻をかめば一時的には鼻の通りがよくなり、しばらくは楽になります。

一方で人間の子供や、ましてや犬や猫は上手く鼻をかむことができないため、鼻水が絶えまなく鼻から垂れ、見た目からとても辛そうな感じがします。

飼い主様からもそんなご相談を受けることがよくありますが、意外と難治性のことも多く、治療に手を焼くことが多くあります。

今回は意外と大変な犬の鼻水、鼻づまり、くしゃみについてご説明したいと思います。

子犬、子猫の場合

子犬や子猫の場合はほとんどが感染によるものと考えられます。

あまり言いたくはないのですが、以前であれば割と環境の整っていないペットショップやブリーダーもいたので、鼻水だけでなく呼吸器系に重度の感染を起こしているケースもよくありました。

ここ最近では、このあたりのリテラシーはしっかりしているので、感染と言っても重度のものではなく、どちらかと言えば、幼い免疫力がしっかりしていない個体が、環境が変化したせいで出る一過性の体調不良であることがほとんどです。

しっかり栄養がとれれば、点鼻薬程度で改善することも多いのですが、もともと外にいた子猫を保護し、同様の症状が出た場合などには注意が必要です。

野外で感染する病原菌は、子猫にとっては重篤な症状を起こすことも多いので、保護した猫がくしゃみや鼻水を流していたらすぐ受診することをお勧めします。

猫を保護したら目ヤニと鼻水。どうしよう?往診獣医師が答えます。

高齢犬の場合

高齢犬の場合、鼻水の原因として1番高いものは歯の根が感染を起こし、それが鼻腔内に影響を及ぼしていることが多いと思います。

特に犬歯の根は鼻腔の粘膜に接するぐらい近くにあるため、犬歯の根が感染を起こすと最初は透明な鼻水が膿性のものに変わり、時には血まじりの鼻水がくしゃみと一緒に出てくることもあります。

根本的な治療は原因となっている歯を抜歯するのですが、そのためには全身麻酔が必要なため、老犬の場合は麻酔のリスクが高い時もあるため、抜歯をすることを躊躇することも多くあります。

そういった場合は根治治療とはならないのですが、抗生剤を主体とした投薬を継続しながら経過を見ていきます。

高齢猫や特殊な状況下の猫の場合

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高齢な猫の場合、獣医師としてまず考えなくてはいけないのが、原因が慢性的な鼻炎からくるものなのか、腫瘍の存在があるのかというところだと思います。

実際にこの2つは判別が難しく、また検査方法もあまりないために有効な治療が見つけられないこともしばしばあります。

積極的に調べていくためにはCTやMRIが必要ですが、全身麻酔が必要となります。

たいていの場合、年齢とその時点での体調が問題で検査も実施することができないため、結局のところ抗生剤やステロイドのような内服もしくは点鼻薬で維持していくことがほとんどです。

パグやフレンチブルドッグなどの短頭種の場合

これらの犬種はもともと鼻の構造が特殊であり、若いころから鼻水やくしゃみを飛ばすことはよくあります。

たいていの場合は短頭種特有の生理現象であり、鼻水も透明な場合は治療の必要性はあまりありません。

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ただシニアの年齢になり、その鼻水が膿性のものになったり、血液を含んだもののようになった場合は注意が必要です。

短頭種は鼻腔内腫瘍が発生する好発犬種で、その上、鼻腔内の腫瘍は周りの組織に対し攻撃性の高いものがほとんどで、場合によっては眼球や脳を圧迫し痙攣などの発作を引き起こすこともあります。

検査はMRIとCTを実施しますが、有効な治療法はあまりないために、予後は思わしくないケースがほとんどです。

ミニチュアダックスの場合

ミニチュアダックスの場合、構造上、マズルが長く副鼻腔とよばれる空洞が非常に大きいのが特徴です。

したがっていろいろな理由で感染を起こした場合、その副鼻腔に脳が貯留して副鼻腔炎=蓄膿症になることが多くみられます。

副鼻腔炎を患ったミニチュアダックスは鼻水が咽頭の方に流れ込み、痰がつまったような咳を頻発します。

特に老犬になったミニチュアダックスが副鼻腔炎を患うと、食欲などの一般状態も低下することも多く、時には肺炎を引き起こすケースもあります。

構造上の問題もあるため、治療は難航するケースも多く、大概の場合は抗生剤などを長期的に投薬し、ある程度の症状の改善にとどまることがほとんどです。

まとめ

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犬や猫の鼻水、くしゃみは診察の中ではよくみられる症状なのですが、割と慢性化しているケースも多いので、獣医師にとっても厄介なものの一つです。

特に高齢犬や高齢猫がこういった症状を起こすと病院に連れて行くのもかなりの負担がかかります。

往診でもこういった疾患は十分対応が可能なので、ペットの鼻を見たときに、あれ?と思ったらお気兼ねなくご相談ください。

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