犬や猫にとって外耳炎は人間と比べると割とよくみられる病気です。
後ろ足でよく引っ掻いたり、頭を振ったり、耳が傾いていたりする時には要注意です。
大抵の場合、耳を見ると赤くなっていたり、黒いカスが多くみられたりするのですが、たまに膿のような粘調度の高い液体が耳の入り口にべっとりとついていることがあります。
これは耳ダレと言われる症状で、割と厄介なタイプの細菌が感染を起こしおり、長期的な治療が必要になるケースが多いと思います。
この耳ダレは、何かしら根本的な原因があることが多く、そんな原因の一つとして知られているのが、耳道内にある炎症性ポリープもしくは腫瘍の存在です。
これらの隆起物が狭い耳道を塞いでしまうため、その奥で細菌が繁殖してしまうことから耳ダレが起こります。
場合によってはしこりのある耳側に体が傾いていしまい、まっすぐ立てないような状況にもなります。
耳にできるポリープや腫瘍は、他の場所に発生するものよりも治療が難しいことがよくあるため、しばしば後遺症をのこしつつ生活を余儀なくされることもあります。
今回はそんな耳にできたポリープや腫瘍についてご説明したいと思います。
耳道内に腫瘤が見つかったら・・・
耳道内のポリープや腫瘍は外見からわかることはありませんが、耳鏡という耳の中をみる専用の道具で簡単に発見までは至ります。
基本的には慢性的な外耳炎を患っていることが多く、特に猫の若い個体では炎症性のポリープがよくみられるようになります。
もちろん高齢になると腫瘍性のものも多く、その多くが悪性の腫瘍である耳垢腺癌と呼ばれる腫瘍が多いとされています。
耳道内にできた腫瘍が悪性のものなのかそれとも良性のものなのかを調べるためには、採材したうえで病理検査を行うしかありません。
ここで問題なのが体表でできた腫瘍と違い、耳道内の腫瘍は奥の方で発生していることがほとんどなので、採材すること自体が困難であることがほとんどです。
セカンドセレクトでは狭い耳道内にあるしこりでも、オトスコープと呼ばれる耳鼻科用専門の器具があるため、動物によっては全身麻酔をかけることなく採材することが可能です。
ちなみにこの器具を使用すると採材だけなく、普段では取ることのできない鼓膜付近の耳垢でも簡単に除去・洗浄することが出来ます。
重度の外耳炎を患っている犬や猫を飼われている飼い主様がいらっしゃいましたら一度ご相談ください。
外科手術
炎症性のポリープや良性の腫瘍ではもちろんのこと、悪性の腫瘍の場合でもあまり肺やその他の臓器への遠隔転移はすることがないため、一般的には外科切除がメインの治療になります。
ただし、ここも耳という場所の問題があり、しこりだけ取り除くことはできません。
術前の病理検査で悪性だと判明した場合は特にMRIによる画像診断が必須になります。
なぜならポリープや腫瘍を取る場合には耳道とそれを含む耳の軟骨ごと切除するため、切除範囲を決定するためにはレントゲンで判断することは不可能だからです。
一般的には垂直耳道切開という方法をとるのですが、腫瘍の浸潤具合では耳介ごと切除したり、鼓膜を含んだ水平耳道も切除する場合もあります。
この場合、耳が完全になくなってしまうため、外見上大きな変化をもたらすようになります。
また耳道の付近には顔面神経などの重要な神経が集中しているため、術中にこれらの神経に障害を与える可能性もあります。
術後の後遺症としてよく見られるのは顔面神経麻痺などで、手術した側の顔半分に麻痺が見られるようになり、目を閉じられなくなる、唇が持ち上がらなくなるなどの症状が見られることもよくあります。
こういったリスクがあるため、耳道内にポリープや腫瘍が見つかったとしても、すぐに手術に踏み込もうと判断する飼い主様はあまり多くはなく、また動物自体も高齢であることもよくあるので、治療方法に苦慮されるケースがほとんどだといます。
温存療法について
温存療法は基本的に内耳炎、中耳炎の併発を防ぐのがその目的の一つになります。
もちろんポリープの位置や腫瘍の浸潤によっては効果的な治療法にはなりませんが、一定の期間の動物の健康状態を保つことが出来ます。
実際には抗生剤を随時服用しながら、外耳道を洗浄液もしくは点耳薬によって清潔に保っていきます。
セカンドセレクトでは先ほどご紹介したオトスコープによって、普段届かないような鼓膜付近の汚れも洗浄することもできるので、定期的に通院していただき洗浄をすることもお勧めしています。
まとめ
耳の中は普段あまり見えにくい場所であり、かつ触られるのを嫌がる動物も多くいます。
定期的な検診でも耳道内は毎回よく観察するので、もし耳の中の環境が心配という飼い主様はお気兼ねなくご来院ください。
もちろんひどく痒がる、嫌なにおいが耳からする、ましてや耳ダレが起こっているなどに気づいたらお早めにご来院をお願いいたします。