目は口ほどにものを言うとよく言いますが、物言わぬ動物であったとしても、目に何かしらの異常があった場合は、ご自宅でもすぐにわかることが多いと思います。
目をしょぼつかせている、涙が多い、目が赤いなど、診察をしていると飼い主様から頂ける目に関する情報は、他の症状よりも詳しく伝えていただけることが多くあります。
そんな目の病気の中でも、しばしば獣医師を悩ませるのがブドウ膜炎という病気。
原因が特定できないことが多いうえ、緑内障などの失明を起こす疾患を併発することもあるので、常に慎重に対応する必要があります。
もし目が赤くなっているのに気づいて動物病院に連れて行ったときに、「ブドウ膜炎です。」と診断を受けたら・・?
今回は獣医の中では有名、でもそれほど聞きなじみのない「ブドウ膜炎」についてご説明をしたいと思います。
そもそもブドウ膜って何?
目を包む膜は、瞼から外に出ている部分(日常的に瞳と言っている部分)と、瞳の裏側の部分とでは異なる構造そしています。
瞳は外からの光の情報を目の奥の神経に届けないといけません。
したがって厚くて光を遮断するような強靭な外層ではなく、透明なフィルムのような構造をしています。
瞳の部分は一番表層は角膜によって守られていますがその視界はさえぎられることはありません。
そして、その周りに結膜があって眼瞼につながります。
一方で視界には関係のない、瞼の裏側の部分は三層に分かれており、神経が走る網膜が一番内部にあり、その外側には血管が豊富な脈絡膜があります。
そして最外層は強膜という硬い膜につつまれ眼球を守っています。
脈絡膜はその豊富な血管で眼球の様々な細胞に栄養を送る役目をしているほか光を遮断し、より瞳から届く光の情報を鮮明化させる役目もしています。
脈絡膜は瞳孔に近づいてくとレンズの厚さを調節する毛様体と、瞳孔の大きさを決める虹彩に形が分かれます。
ブドウ膜とは脈絡膜と毛様体と虹彩を総称する名称で、この3つの異なった名前の部位はそれぞれ連続して連なっているので、一つの場所に炎症が起こると連続して起こります。
一般的には虹彩と毛様体から起こる炎症と脈絡膜から起こる炎症とに分かれますが、これらを総じてブドウ膜炎と言います。
ブドウ膜炎の症状
飼い主様が思う目に起こる炎症と言えば結膜炎だと思いますが、ブドウ膜炎はよくある結膜炎とは少し違う症状を引き起こします。
ざっくり見た目で言えば、結膜炎よりも全体的に赤く、そして痛そうな表情をします。
白目のところは表層が強膜で覆われているのですが、そこに血走ったような血管の太い線が何本も見えるようになり、目の表面の角膜もたまに濁って白く見えるようになります。
片目のみの場合もあれば両目ともそうなるケースもあります。
とにかく目を痛そうにしていたら、すぐに受診するのがいいと思います。
ブドウ膜炎が起こる原因
アレルギーや異物が目の中に混入した時、もしくは感染症などが原因と言われることがあります。
特にブドウ膜炎のような目の病気は、目の病気というよりは体のどこかに病気があり、それが原因となって引き起こされることも多いため、全身的なスクリーニング検査が必要な場合もあります。
ただ、残念ながらブドウ膜炎が起こる原因はほとんどの場合不明なことが多いと思います。
突発的に起こりなかなか治癒しないことも多く、漫然と治療だけが進むこともあるので、獣医師としても気を付けないといけない病気の一つだと思います。
治療法は?
一般的な目薬に反応することはあまりなく、主にステロイド剤を内服のような形で服用することが多いと思います。
反応が悪い場合はほかの免疫抑制剤を使用することもあり、治療は生涯続くケースもあります。
また白内障に続発して起こるケースなどは、白内障自体を治療しないと治癒に至らないため、まれに外科的な対応が必要なケースもあります。
またブドウ膜炎は緑内障と言って、目の中の眼圧が上がる病気を併発することも多く、失明を引き起こすこともあるため、眼圧などを測定しつつ経過を見る必要もあります。
まとめ
眼科というのは意外と厄介なもので、特殊な器具や検査機器が必要なケースが多くあります。
当院でもそれなりの設備を備えて日々対応はしておりますが、場合によっては専門病院を紹介することもあります。
そうはいっても目が赤くて痛そうと思ったら、とりあえず相談してください。
目の痛みは本当に痛いものです。