犬や猫の病気の中で、最も頻繁に起こる症状の一つとして下痢があげられると思います。
もちろん下痢の原因には様々なものがありますが、その理由の中でも代表的なものは寄生虫の感染です。
動物愛護法が改正され、また都市近郊部では地域猫の清浄化が進んでいるため、回虫や条虫といったいわゆる寄生虫というものはかなり少なくなってきたと思いますが、その一方で原虫と呼ばれるタイプの寄生虫に関しては時折発見されることがあります。
今回はそんな原虫の中でも最も一般的な「ジアルジア」についてご説明したいと思います。
ジアルジアとはどんな寄生虫?
あまり聞きなじみはないかもしれませんが、動物病院では日常的によく見られる寄生虫です。
ジアルジアは原虫と呼ばれる単細胞の寄生虫で、どちらかと言えばゾウリムシやアメーバーに近い存在のため、肉眼的にみるこできとはできないので、その点では同じ消化管の寄生虫である回虫や条虫などとは大きく異なると思います。
日本でよく見られる消化管内の寄生虫はそのほとんどが病原性に乏しく、ジアルジアも含めて感染をしていてもあまり症状が出ないもしくは軽度の下痢便程度で収まってしまうことが多いと思います。
ただ、感染した犬や猫の免疫力によって、回復までの期間はその個体によってかなり異ります。
この点がジアルジアの治療を困難にしている一つの原因になっています。
検査方法と治療について
基本的には検便によってジアルジアを検出しますが、検査で見つからないケースも多くあります。
ジアルジアは形態的に2種類に分かれており、通常発見できるのは栄養体と呼ばれる形態です。
栄養体は他の細菌よりも大きく、顕微鏡の視野の中をくるくる移動して回るので、実際に見ればとても目立つのですが、新鮮な便の中にしか生息していないため、検査までの時間がかかった場合は発見が非常に難しくなります。
そのため教科書的には硫酸亜鉛遠心浮遊法といった特殊な工程を行い、もう一つの形態であるシスト型と呼ばれる形態を見つけることを推奨しています。
ですが、一般的な動物病院では工程がやや煩雑なためほとんどやられていません。
またジアルジアの抗原検査を行うこともありますが、いずれも感度は低く、結局のところどの方法でもジアルジアを完璧に見つけることはできません。
したがって感染の疑いがあるようであれば、ジアルジアが見つからなくても治療を開始することが多いと思います。
ただその治療も効果的に働かないこともよくあります。
理由としてはジアルジアを駆虫する薬を使用しても、虫体の個数を減らすことはできても完全に死滅させることができないからです。
最終的には感染した犬や猫自身の免疫によって完全に排菌されるまで待つしかないため、治療には長い時間がかかることも多くあります。
特に仔犬や仔猫の場合には腸内の環境が成熟していないため、長期間にわたり感染が見られることもあります。
セカンドセレクトではそういった長期感染を起こしているような個体には腸内の免疫力を高めるため、食事内容の改善のほか、ビタミンEやAといった栄養を補充したり、サプリメントを使用したりします。
難治性の症例でも、併発疾患がなければ重篤化することはほぼないため、あせらずゆっくり治療することが大切だと思います。
まとめ
ジアルジアは以前は下痢をしている仔犬や仔猫からは頻繁に発見されていたのですが、動物愛護法のおかげか、確かにその機会は大幅に減ってきたと思います。
ただまだたまに見かけることも事実なので、特に仔犬や仔猫で下痢が中々治らないときにはお気兼ねなくご相談いただければと思います。