体の中で癌細胞にならない細胞はほとんどありません。

動物病院でもいろいろな癌を患った動物たちが来院しますが、飼い主様がすでに知っている名前の癌もいっぱいあります。

そういった名前がよく知られている癌の代表格といえば白血病という血液の癌だと思います。

実際には白血病の発生率はそれほど高くありません。

AYA世代と言われるような人間の若い世代や多くの芸能人でも病気になってしまうことがあるため、その知名度はかなり高いのですが、実際にどんな癌かといわれると「?」という感じだと思います。

今回はそんな有名な白血病についてご説明したいと思います。

そもそも白血病とは?その分類について。

白血病はなんとなく白血球の癌だということはイメージできるのですが、インターネットなどで白血病の説明を見ると意外と理解できないことが多いのではないでしょうか?

理由としては白血病自体に色々な分類がたくさんあることと、また同じ血液の癌のであるリンパ腫と大きな違いが見出せなかったりするからだと思います。

白血病は骨髄の造血細胞が癌化した悪性腫瘍という定義がされていますが、そもそも造血細胞って何?という感じだと思います。

酸素を運搬する赤血球、体を守るための白血球、血を止める血小板などの血液中に含まれる細胞のもとになる細胞は骨髄で作られており、もともとは1種類の細胞である「造血幹細胞」から分化していきます。

よく骨髄移植という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、この造血幹細胞を患者に移植することを指します。

造血幹細胞は骨髄の中で成熟し、様々な血液の細胞に分化していくのですが、大きく分けるとリンパ球系細胞のもとになる幹細胞(リンパ球系前駆細胞)とそのほかの細胞になる幹細胞(骨髄系前駆細胞)とに分かれます。

ちょっとややこしいのですが、「骨髄系前駆細胞」だけでなく「リンパ球性前駆細胞」もともに骨髄の中で成熟、分化していくので、通常の血液の中では見かけることはありません。

骨髄系前駆細胞はのちに赤血球や血小板と白血球になる細胞です。

リンパ球性前駆細胞からはリンパ球ができるのですが、ややこしいことに、もともとの分化した幹細胞の種類は異なっていても、結局のところリンパ球も白血球の中の1つの種類として区別されています。

つまり白血球と呼ばれている細胞の中にはリンパ球性前駆細胞からなるリンパ球と骨髄性前駆からなる細胞(ちなみに好中球・好酸球・好塩基球・単球の計4種)に分かれることになります。

白血病はこれらのもとになる細胞が骨髄にいる時点で悪性の腫瘍になり、全身の血液中に腫瘍細胞が現れる病気のことを言います。

ここもちょっとややこしいのですが、白血病というからにはこれらの白血球が腫瘍化するように思えますが、実際には骨髄系前駆細胞からは赤血球や血小板などの細胞もできるため、白血病の中には赤血球が癌化したものもあり、赤白血病などと言われることもあります。

白血病は由来する幹細胞の種類により分類されており、リンパ球性白血病と骨髄性白血病と大別されていますが、どちらも骨髄で腫瘍が発生したのちに血液中に腫瘍の細胞が現れることがほとんどです。

この辺りもかなりややこしく、特にリンパ球性白血病と同じ血液の癌のリンパ腫は名前も似ているし、症状も似ているためよく混同されます。

実際の初診時の診察においても、リンパ球性白血病なのかリンパ腫なのかを見極める明確な方法はありません。

以前は骨髄で発生したリンパ球の癌をリンパ球性白血病、末梢のリンパ節で発症したものをリンパ腫と区別していたのですが、最近ではその区別も曖昧なため、獣医師でもしっかりと説明できないこともあります。

また白血病はさらに急性白血病と慢性白血病に分類され、リンパ球性白血病、骨髄性白血病とそれぞれの急性、慢性によって治療法や予後が異なります。

犬の急性白血病

基本的に犬の白血病はあまり多くありません。

犬の血液の癌といえばリンパ腫がほとんどで、個人的な経験でも確実に白血病にかかった犬を診察するのは数年に1回程度だと思います。

見た目では急性白血病とリンパ腫を区別することはできないのですが、リンパ腫の犬の場合はたいてい元気食欲は問題ないが、首などにしこりがあることを飼い主様が見つけて病院に連れてくることがほとんどです。

【悪性リンパ腫】犬や猫で最もよくみられる血液の癌。抗がん剤は実際のところどうですか?

一方で急性白血病はしこりを飼い主様が見つけることもあるのですが、犬自体の一般状態は著しく低下していることも多く、初めて診察してから2,3日で亡くなることもあるぐらい急速に症状は進んでいきます。

食欲不振や元気消沈、下痢や吐き気などは見られるのですが、必発するような症状はありません。

ただ血液検査やレントゲン検査で仮診断に至るまでにはあまり苦労しないことが多いと思います。

血液検査上では明らかな白血球の増加や貧血、肝酵素の上昇や黄疸などがみられることがほとんどだからです。

またレントゲン上でも肝臓や脾臓などの肥大が顕著にみられることも多いと思います。

この時点でもリンパ腫と区別することは難しく、確定診断をするためには骨髄の細胞を採取し、病理診断を行うしかありません。

ただ、基本的に急性白血病とリンパ腫の治療方法は同様の抗がん剤を使用していくため、治療方法にはほとんど差がありません。

したがってセカンドセレクトを含めた一般的な動物病院での白血病の確定診断をする意義は予後判定のみぐらいだと思います。

急性白血病の方が圧倒的に予後は悪く、治療に全く反応しないこともよくあります。

したがって多くの飼い主様はそこまでの検査を望まないことも多く、確定診断まで至ることはほとんどないケースの方が多いと思います。

犬の慢性白血病

犬の慢性白血病は発生率はかなり少ないと思います。

ぼく自身の経験でも、今までで3,4頭程度しか診察したことはありません。

急性白血病と異なり、経過は緩慢で徐々に調子が悪くなってくることが多いと思います。

食欲不振や体重減少などがみられるほか、急性白血病と同様にリンパ節や脾臓や肝臓が大きくなることが多いとされています。

血液検査上では白血球数が増加し貧血を起こしていることが多いので、仮診断は割とつけやすいのですが、確定診断は困難を極めます。

急性白血病のように骨髄の検査をしても、腫瘍性の細胞なのかどうかを明確に判断することができないため、一般的な検査で診断をすることがほとんどです。

治療は弱いタイプの抗がん剤を使用して治療していきますが、急性白血病に比べると生存期間はとても長く、数年単位で経過が進んでいくことがほとんどです。

ただ白血病が骨髄性白血病だった場合は、急性白血病に転化することもあり、その場合は予後はとても悪いことが知られています。

猫の白血病

猫の白血病は犬以上にまれな疾患になりつつあります。

猫の白血病の原因はそのほとんどが猫の白血病ウイルスの感染によるものですが、白血病ウイルスに感染している猫自体がとても少なくなってきているからです。

猫の白血病は犬の白血病と酷似しており、診断、治療はほとんど犬の白血病と変わりません。

急性の場合は予後は著しく悪く、慢性の場合は数年以上の生存期間が望めます。

まとめ

セカンドセレクトでは様々な腫瘍の治療を行っています。

もし今回の記事を読んでみて、ちょっと心配という飼い主様がいらっしゃいましたら、いつでもお気兼ねなくご相談ください。

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