ぼくがまだ子供だった頃、よく自分の親からは「食べた後に寝るんじゃない。牛になるよ。」と言われていました。
その一方で、お医者さんはよく子供に「食事をした後に急に体を動かさず、1時間は安静に。」とアドバイスします。
一方は倫理上、もう一方は医学的な見地からの意見なのだとは思いますが、こと獣医師からの意見としては、ペットは食後に過激な運動は避けるべきというのが、だいたいの先生の意見だと思います。
特に大型犬を飼われている飼い主様にとっては、食後の急激な胃拡張を心配され、食後には気を使っている方が多くいらっしゃいます。
また、胃拡張は最近では大型犬だけでなく、割と小型犬、特にミニチュアダックスにもみられる症状で、結局のところすべての犬種で気を付けないといけないと思います。
今回はそんな胃拡張についての対応法などご説明したいと思います。
胃拡張はなぜなる?
胃拡張は一般的には胸の深い大型犬に大型犬に多くみられるとされ、食事を大量に一気にとったり、食後に急激に動いたりするとなるとされています。
確かに特定の大型犬が胃拡張を起こすケースは食後によくみられるのですが、大量にご飯を食べたわけでもなく、運動させていたわけでもないのに突如として発生することが多いと思います。
また、胃拡張は大型犬に限らず、小型犬でもたまにみられ、突然の吐き気があったと思ったら、いきなり元気がなくなるケースも像遇することがあります。
これらの動物たちには何ら原因と思われるような生活様式もなく、調べても基礎疾患がないことが圧倒的に多いと思います。
ただ経験上、ミニチュアダックスでかつ、椎間板ヘルニアの既往歴がある犬に圧倒的に多くみられるため、神経的な問題が何かしら関与している可能性はあると個人的には思っています。
胃拡張になった際の症状
基本的には嘔吐が主訴になります。
普通の嘔吐と異なるのは、外見上から見てもお腹が膨れ上がっていることが容易に見ることができ、また活動性は急速に減退していきます。
このあたりは単純な食欲不振をともなう普通の嘔吐と異なる点で、あきらかにふらつきや横臥、場合によっては苦しそうな呼吸をし、天を見上げるような表情を見せます。
頻回の嘔吐が見られることが通常で、ほぼ胃液のみの液体を大量に突出性に吐き出すような吐き方になります。
治療法は?
多くの場合、胃の内容を抜き取ることが先決とされます。
獣医師によっては体側から胃に向かって太めの針を刺し、胃の内容を吸引することが一般的です。
ただ、内容がガスであれば簡単に抜けるのですが、内容が液体であればなかなか吸引することが困難になります。
胃液とは言いつつも粘調度が非常に高く、通常使用する針の太さでは到底吸引しきれないからです。
セカンドセレクトでは鼻からカテーテルを挿入し、そこから抜くようにしています。
捻転さえ起こしていなければ、簡易的に胃内の内容を抜き取ることができるうえ、針を刺すのと違い胃の粘膜を傷つけることがないからです。
吸引処置を行った後、上部消化管の動きをよくするための薬を使用していきます。
胃拡張を起こした犬の状況が割と安定しているのであれば、通院による皮下注射でも効果はあると思いますが、たいていの場合は状況はかなり悪いため、入院による持続静脈点滴にて投薬をしていくことがほとんどです。
通常であれば2日から3日程度で胃は動き出すことがほとんどで、胃の機能が改善すれば、犬の状態も急速に回復していきます。
手術は必要?
個人的には胃拡張を起こしてから胃捻転さえ起こさなければ手術は不必要と考えています。
大型犬であればまだしも、小型犬であれば捻転する可能性は極めて低いため、あわてて開腹する必要はないと思っています。
ただ、胃拡張の原因が慢性的でかつ内科の治療に反応しない場合は、胃の出口から十二指腸にかけて何かしらの問題が起こっているケースが多いので、その際には全身麻酔下での試験開腹、もしくは内視鏡が必要になります。
まとめ
セカンドセレクトは都内にある動物病院なので、大型犬よりは小型犬の方が多くご来院されます。
ですのでぼく自身が遭遇する胃拡張は小型犬の症例が多く、なかでもミニチュアダックスの胃拡張は近年とても増えていると思います。
もしご自宅で飼われている犬が嘔吐をした後、いつもと様子が違うようであれば・・・いつでもご連絡ください。