動物病院にいた時に高齢犬の相談として、尿漏れについての相談をよく受けました。
本人はいたって健康なのですが、部屋のあちらこちらで粗相をしていくので、ご自宅での管理が非常に難しくなります。
今回は高齢犬の粗相、尿漏れの原因と対応法についてご説明させていただきます。
認知症による粗相
雄雌問わず、認知症によりトイレが認識できなくなるというのはあります。
部屋を歩き回るというよりは徘徊し、トイレではないところで排尿してしまいます。
尿漏れというよりは意図的に排尿を行うのですが、しつけなどでどうこうなる話ではないので対応法は物理的に排尿をカバーするしかありません。
1つの方法はペット用オムツを付けることです。
ただ犬種によってはオムツの装着を非常に嫌がる犬もいるので、そういった場合は、ペットシーツを全面にひき、ペットシーツの上のみの移動に行動を制限するしかありません。
多くの飼い主様が悩む案件ですが、画期的な方法はないので、飼い主様のストレスがたまらないように、ほどほどの管理をするしかないでしょう。
未去勢のオスの犬前立腺肥大による尿漏れ
前立腺は副生殖器と言われ、犬でよく発達しています。
雄性のホルモンの影響を受け、年齢とともに前立腺は大きくなっていきます。
尿道を巻き込むような形で存在しているので、あまりにも大きくなった場合には尿道を狭窄化し、尿漏れを起こすことがあります。
ほとんどの場合、未去勢の高齢のオス犬に出る症状なのですが、解決法は去勢手術しかなく、高齢の場合の全身麻酔となるため、麻酔のリスクをはらむケースが多くあります。
ただ、痛みを伴うことも多いため、一般状態に問題がないのであれば、積極的に去勢手術を検討された方が良いと思います。
避妊によるメス犬の尿漏れ
始めに述べておきますが、このようなケースは実際にあるのですが、現在の獣医医療で、しっかりとした原因が確定されているわけではないので、おそらくそうであろうという推測でしかありません。
症状としては、寝ているときや、体を持ち上げた時に尿がそれなりの量で漏れ出すといったものです。
避妊手術により起こった子宮の退縮が尿道の筋肉や膀胱に影響がことで、排尿をコントロールすることができなくなるというのがその理由として考えられています。
また、避妊手術によってエストロジェンという性ホルモンの量が著しく低下します。
このホルモンは排尿のコントロールをする役目をしているため、その量が低下することによって、尿漏れが発生するということが考えられています。
このような避妊手術後の尿漏れの原因を探る有意義な検査方法はなく、ホルモン治療による反応がないかどうかで決めてい行きます。
薬の副作用など、治療によるデメリットも多く存在するため、無治療で過ごされる方も多くいらっしゃいます。
まとめ
尿漏れや粗相の問題は、本人の一般状態にはおおよそ関係がなく、ご自宅でのお世話が困難になるだけと言えばそれまでの話なのですが、飼い主様にとって深刻な悩みの種になります。
若い犬の粗相と異なり、老いや病気と絡んでくることも多く、その他の疾患でも排尿の異常行動が見られることがあります。
尿漏れに関しては、犬本人だけでなく、ご自宅での環境づくりも大切なことなので、ご自宅にて直接アドバイスができる往診は大きなメリットがあると思います。