いつもは一般的な往診についてのご説明をさせていただいてますが、今回は往診動物病院「セカン ドセレクト」の往診風景についてご紹介したいと思います。
ぼく自身は獣医師としての臨床経験は20年近くありますが、「セカン ドセレクト」は開業して間もないできたてほやほやの動物病院です。
今回ご紹介させていただく仔は、「セカンド セレクト」として初めての往診での患者さんになります。
どんな方が往診をご依頼するのか?
一般的に往診と言うと、夜間の救急診療か、何かの理由で動物病院に連れて行けない方がご依頼するための動物病院であることが多いと思います。
ぼく自身としては、もっと気軽に往診をごいらしていただくといいのだと思いますが、実際にはまだまだそこまでスタンダードな診療スタイルではありません。
今回の飼い主様も、遠方のため病院には通えないのと、飼ってらっしゃる猫が数か月前から腎不全が急速に悪化し、通院がストレスになるため往診をご依頼されました。
もちろん徒歩圏内で動物病院はたくさんあるのですが、正直に言えば15年近く担当医として、ぼくが診察をさせていただいていた経緯があり、また飼い主様のご厚意もあって、数か月のブランクののち往診医として改めて担当させていただくことになりました。
猫の腎不全の付き合い方について
個人的な意見で言えば、猫の腎不全は老衰のようなものです。
猫という種族そのものが腎臓の構造的な問題で腎不全を引き起こします。
したがって猫を飼う上では腎不全とは切っても切れない関係にあります。
腎不全は症状としては出てきませんが、尿検査でタンパクが出始めるころから始まります。
年齢的には早ければ3,4歳、平均的には7,8歳ぐらいから腎不全の初期は始まります。
とはいいつつも、最初のうちは特にやることはなく、処方食やサプリメントなどを使用する程度でいいと思います。
猫によっては食事を変えると食べないとか何かを飲ませるのは無理なんて仔も多いので、そのような場合は無処置でもいいと思います。
むろんやるにこしたことはありませんが、やっても治るわけでもないので、お互いストレスをため込んで一緒に生活するよりは良いかと思います。
ある程度年齢が進み、腎不全も進行して食欲などが落ちて来たら、皮下補液などの積極的な治療を進めていきます。
往診の頻度は?
よく聞かれることなのですが、腎不全の猫に皮下補液を行う頻度はどれくらいが適切なのかと言えば、状態によりけりですが、むろん毎日がいいと思います。
ただし、これは医療的なことだけをピックアップした意見であって、そこに付随してくるもの、例えば猫のストレスや飼い主様の時間的な拘束、また料金的なことも踏まえると実際にはそうそう多い頻度で行うことは不可能だと思います。
実際には週に1回、やれらる方でも2回程度になる方が一般的です。
それでも効果はあるのかともよく聞かれますが、実際の飼い主様の意見を聞いていても、また経験的にもやるやらないでは段違いな生活の質の向上が見られると思います。
ご料金など
一般的な往診動物病院の料金ではなく、あくまでも「セカンド セレクト」での話をさせていただくのであれば、注射料金がおおよそ3000円、往診料が3000円これに消費税が加わります。
一般の動物病院であれば、往診料の代わりに再診料が加わるので差し引き2000円程度は往診のほうが費用が掛かると思います。
無論動物保険をご利用していただくのであれば、「セカンド セレクト」でもその場で清算できますが、それでも幾分割高にはなります。
ただしその金額と、動物病院に連れて行く労力と時間、それと猫への負担を考えるのであればそれほど悪い選択ではないとは個人的には思います。
まとめ
今回の飼い主様は週3回程度の往診をご希望されました。
写真で見ていただくとわかるかもしれませんが、かなり衰弱しているため、注射も動かずじっとしています。
元気だったころから大人しかったのですが、若かりし頃はどちらかというとふくよかな体型で、今ではかなり痩せてきてしまいました。
結局、往診を開始して10日ほどで残念ながら天国へと旅立ってしまいました。
どれだけ自分の力が役に立てたのかは正直に言えばまだわかりません。
ただ一つだけ言えるのは、往診で治療するということは、今回の様に余命として限られている動物に苦痛が少なく、かつ安心できる家の中に最大限いることが出来るという点では理想的な治療だと思います。
ぼく達はいつでも飼い主様の一番の願いをかなえることはできませんが、最後にはその選択で良かったと思えるような医療を常に提供したいと思っています。