眼は口ほどにものを言うとよく言いますが、哺乳類の目は顔の一番目立つところにあります。
その分、外傷がつきやすく、気づいたら目が赤いとかしょぼしょぼしていることがよくあります。
特に犬は瞬きをせず、草むらや部屋の隅の方へ顔を入れて臭い嗅ぎまわりますから、角膜に傷ができやすい動物です。
また猫はその鋭い爪でよく目を引掻き、爪で目に傷をつけることがあります。
今回はそんな犬や猫の目にできた傷についてご説明したいと思います。
目に傷ができてしまった時の症状は?
犬や猫の目に傷ができてしまった多くの場合、羞明と言って目が半開きになってしまいます。
角膜に傷ができると光や空気の対流に対し痛みを感じるからであり、同時に目が全体的に腫れ、赤みをおびたり、涙や黄色い目やにが大量に出たりします。
よく見ると、傷によってできた角膜のくぼみが見えることもあるので、目がしょぼついているなと思ったら目の横からじっくり注意深く眺めてみてください。
目に傷があった場合は割と早めに受診したほうがいいことがほとんどです。
傷が浅い場合の治療法
傷が浅いとは言いつつも、目の傷は重症化することも多いので油断はできません。
基本的には目に染色液を入れて傷があるかどうかを調べ、もし傷があるようであればその損傷を回復させるような目薬を使用していきます。
また、黄色い目やにが出ている場合は雑菌が感染していることも多く、抗生剤を数日点眼する必要があります。
ただし、目の傷は浅くても割と炎症と疼痛が広がることが多く、ほとんどの症例で積極的に消炎剤、いわゆるステロイドになりますが、数日の間は使用していきます。
重症の場合・・・
角膜は5層に分かれており、表層のみの傷と深部まで傷が到達している場合では治療の強度が大きく異なってきます。
深部まで達しているような深い傷の場合、傷の治癒を促進するために自己血清点眼液というものを使用します。
血液の中には目の傷の治癒を促進させる様々な栄養分が含まれており、これを頻回点眼することにより治癒経過が短縮させることが出来ます。
ただし、その名の通り採血をしその上澄みを既存の点眼薬と混和するもののため、雑菌の影響を受けやすく、目薬も劣化しやすいというデメリットもあります。
そのため週に何回か採血を行い、新鮮な点眼薬を使用する必要があります。
さらに深部まで傷が達している場合は、他人と同じように眼帯をする必要があります。
眼帯をすることで、外部からの刺激がなくなり、また常に目を閉じていることによって、涙が角膜の表面を覆うことが出来るため、極めて速い傷の回復が望めます。
ただし、犬や猫は人と同じような眼帯をすることはできないため、眼瞼フラップとかしゅん膜フラップといって、瞼や瞼の内側の膜を縫合して強制的に閉眼する方法を取ります。
この場合は敏感な場所を縫合するので、たいていの場合全身麻酔が必要です。
フラップをしたまま1か月ほど様子をみて治癒経過を見ていきますが、これでも治癒がままならない場合は専門医などとうまく連携をとった方がいいと思います。
まとめ
犬や猫は自分で目を保護するようなことはぜず、気にしだすと際限なく手や床にこすりつけ、さらに傷を悪化させることもあります。
慢性的な角膜の傷は様々な目の病気を引き起こします。
例えば、ドライアイはよく見られる症状で、短頭種では慢性的な被毛の刺激により角膜が損傷するため、特になりやすいと言われています。
また、持続的な炎症が続くことにより、ブドウ膜炎という特殊な炎症が目に起こることで、白内障や緑内障などの併発疾患を引き起こす場合もあります。
くどい言い方になりますが、目の傷はあまり放っておいていいものではないので早めに受診された方がいいと思います。
もし病院に連れて行くのがなかなか大変であれば、往診でも通常の動物病院と同等の治療を行うことが出来ますので、一度ご相談いただければと思います。