腫瘍は体のすべての細胞から発生するので、名前さえ聞いたことのないものから、かなり悪名高いものまで数百種類の腫瘍が存在します。
日本人の腫瘍における死亡率として最も高いのは大腸癌ですが、肺癌も意外と多く、いまだ胃癌とほぼ同じぐらいの死亡者数があります。
一方で犬や猫を代表としたペットのではどうかと言えば、他の腫瘍から転移するものを除けば、肺癌の発生率はあまり多くないと言われています。
ただし、意外と無症状でいることもあるので、潜在的な数は予測よりも多いのではと考えている先生もいらっしゃいます。
今回はそんな非転移性の肺に起こる腫瘍についてご説明したいと思います。
犬の肺腫瘍について
犬の肺の腫瘍はどちらかと言えばまれな病気だと言われています。
ただし、高齢化に伴い発生率は増えてきているというデータもあるほか、愛煙家の犬には発生率が高まるともいわれています。
腫瘍の程度によって症状はまちまちですが、病状の初期はほとんど症状が出てないことが多く、何かのついでにレントゲン検査などを行い、偶然に発見されることもあります。
また何か違和感を感じて動物病院に来院した場合にも、症状としては軽い発咳だけでなく、食欲不振や体重減少などの特徴のない症状でご相談に来ることがほとんどです。
ただ、症状が軽くても、レントゲンにはっきりとわかるぐらいな腫瘍の陰があることが多く、診断は容易につくことが多いと思います。
予後としてはその腫瘍の程度にもよるのですが、全体的には緩やかに進行することが多く、半年から1年かけて衰弱していくことが多いのですが、中には2年以上普通の生活を送りながら経過を見ていけるような犬もいます。
ある調査では腫瘍の大きさ自体が5㎝よりも下回っていた場合は、平均20か月程度の余命があると言われています。
肺の腫瘍自体は高齢になって発見されることがほとんどなので、高齢犬にとっての2年近い時間というのは非常に価値のある時間ではないかと個人的には考えています。
猫の肺腫瘍について
猫の肺の腫瘍も犬と同様にまれな腫瘍だと考えられており、その進行も非常に緩慢だと言われています。
腫瘍の悪性度にもよるのですが、多くの肺の腫瘍を患った猫で2年近い生存が可能であるというデータもあります。
猫の場合、呼吸器の症状に飼い主様がほとんど気づくことがなく、食欲がないとか体重が減ってきたなどの特徴のない症状で来院することが多いと思います。
特に肺の腫瘍は高齢の猫に多いため、年齢の衰えとして経過を見てしまう飼い主様も多くいらっしゃいます。
ただし犬と違って、猫の肺腫瘍は高確率で転移することが多く、肺指症候群と言って特に足先に転移するため、びっこをするなどの理由で来院されることもあります。
治療法について
肺の腫瘍は基本的に抗がん剤はあまり効果がないものが多いため、治療は初期段階であり、かつ転移などが見られなければ外科手術になります。
診断はレントゲンにて容易に診断できることが多いのですが、細部まではわからないことが多いため、手術まで検討するのであれば、より細かな情報を得るためにCT検査が必須となると思います。
転移がある、高齢、状態が悪いなどの要因があり、手術を望まれない場合は、もっぱら支持療法となります。
セカンドセレクトでも鎮咳薬などを服用しながら、自宅で酸素を供給できるような簡易的な酸素テントを設置することをお勧めしています。
また、癌を抑えるための免疫を高める注射などもあるため、定期的に注射をしながら進行を遅らせるようなことをしています。
問題は癌性胸水がたまってきたときです。
胸水がたまり始めると、犬や猫の一般状態は著しく低下します。
利尿剤などでは胸水の増加を抑えることができないため、直接的に針を胸に穿刺して胸水を抜去する必要があります。
平均1週間に1度程度抜去する必要が出てくるため、病気にかかっている犬や猫だけでなく、飼い主様のご負担も非常に強くなってしまいます。
セカンドセレクトでも可能な限り負担がないような治療でサポートしていきますので、有事の際にはお気兼ねなくご相談ください。
まとめ
犬や猫の肺癌になる確率は、愛煙家の家の方が多いと考えられています。
副流煙は人間の子供でも問題にはなっていますが、もしこういった病気が心配であれば、可能な限りたばこは控えた方がよさそうです。