犬はとても活発的な生き物です。
その運動能力はめざましいものがあり、特に後肢の跳躍力は非常に強い能力を有しています。
その一方で激しい運動負荷に耐え切れず、ときおりびっこをひきだしては、飼い主様を心配させることもしばしばです。
後肢のびっこは犬では割とよく見られますが、その理由として最も一般的なのは前十字靭帯の疾患と言われています。
今回の記事では犬でよくみられる「前十字靭帯断裂」についてご説明したいと思います。
前十字靭帯って?
十字靭帯とは膝の関節に付着している靭帯です。
膝関節には数多くの靭帯が付着しており、それぞれが膝の動きを制御する役目を果たしており、この無数のストッパーによって膝は屈伸のみの単純な動きのみしかできなくなります。
関節の動きが一つの動きに集約されている分、その能力に特化した関節の形や筋肉の走行があるため、後ろ足にはすぐれた跳躍能力があります。
十字靭帯もそういった膝の動きをせいぎょする靭帯の1つです。
その名の通りひざの関節の中で十字に交差している靭帯で前十字靭帯と後十字靭帯に分けられます。
前十字靭帯は膝に付着しているほかの靭帯と同様、膝の関節が内転するのを防ぎ、また膝関節下の下腿骨が前方にずれるのを防ぐのがその役目です。
なぜ断裂するの?
前十字靭帯の断裂は一般的には大型犬に多く、中高齢のメス犬に多いとされていますが、加齢により、もともと前十字靭帯は負荷が慢性的に蓄積し虚弱化をしているのが一般的です。
ですので、どんな犬でも前十字靭帯断裂を起こすわけではありません。
こういった虚弱した靭帯を持った犬が、方向転換をするために後肢に負重をかけるような動きをすると、前十字靭帯に損傷が起こるとされています。
前十字靭帯を損傷する犬は、損傷してしまう何かの素因を持っているのが普通です。
実際に片側の前十字靭帯を断裂した犬は、かなりの確率で逆側の前十字靭帯も断裂します。
また前十字靭帯断裂という診断があったとしても、前十字靭帯のみが単独で損傷を受けていることはあまりなく、ひざの関節に付着する多くの靭帯が同時に損傷を受けていることが多いと言われています。
症状は?
前十字靭帯の損傷は、慢性的に進行している場合、最初のうちは症状はあまり顕著ではありません。
よく見るとどちらかの足に負重があまりかかっていないような歩き方をし始め、特に運動後にその症状が段々と悪化してきます。
さらに症状が進むと、ひざの関節が腫れぼったくなり、びっこの具合がとても強くなります。
またよくあるのが、何かの運動をしていたら突然、後ろ足を完全に挙上し始めるケースです。
飼い主様が異変に気付くのは、こういった完全にびっこを引き出してからが多いのですが、実際には段々と前十字靭帯にはダメージの蓄積が起こっているので、完全にびっこを引く前から何かしらの行動が見られることが多いと思います。
座り方の変化はわかりやすい変化だと思います。
違和感を感じる足の方を上にして、女の子座りをします。
また足を前方に投げ出して座るのもよくみられる変化なので、こういった変化が見られるようであれば、何かしらの損傷が後肢に起こっていると思った方がいいと思います。
治療法は?手術はするべき?
前十字靭帯を断裂した際に行うべき治療は色々ありますが、基本的には体重によって選択肢が変わってきます。
少し昔の統計になりますが、15㎏以下の犬であれば、前十字靭帯断裂は安静や鎮痛剤、もしくはギブスのようなちょっとした固定で十分回復すると言われています。
実は一度切れてしまった靭帯をもとの状態に戻す方法はありません。
手術をしたとしてもです。
手術は色々な方法が考案されていますが、どの方法も基本的には膝の関節が前十字靭帯がなくても安定していられるように固定をしたり、骨の位置を移設したりするのがその方法です。
したがって体重が軽い犬の場合は、手術をしなくても膝の安定が得られやすく、1か月から3か月ほどで8割程度の犬がほぼ問題がないレベルまで回復します。
一方で体重が重い犬の場合は、やはり外科的な方法を用いて膝の安定性を得る必要があります。
セカンドセレクトでは前十字靭帯断裂の手術の方法はTPLOという方法をお勧めしていますが、残念ながらそこまでの手術を行う設備が整っていないため、専門病院へご紹介をしています。
これはあくまでも個人的なお話にはなりますが、この手術法はかなり専門性が高く、使用するインプラントなどもかなり高額になります。
手術にかかるご費用は病院によってかなり幅が出てきますが、できる限り飼い主様のニーズに合わせた病院をご紹介しておりますので、前十字靭帯断裂を患った大型犬の飼い主様がいらっしゃいましたら、いつでもお気軽にご相談下さい。
まとめ
前十字靭帯断裂の予防はとにかく太らせないこと。
そして休息を十分に取らせることです。
このブログでもたびたびご紹介しているサプリメントも予防効果としては高いと思います。
ちなみに前十字靭帯の断裂は触診ですぐ診断がつくことが多いのですが、触診の仕方にコツがあるので見落としも多い疾患です。
セカンドセレクトでは手術こそしませんが、前十字靭帯断裂の症例は数多くご対応させていただいております。
もし飼っている犬の後ろ足にびっこが見られたら・・・お気兼ねなくいつでもご来院ください。