猫に比べると、「犬が足を痛がってびっこを引く」という症状で動物病院に来ることは多いと思います。
たいていの原因は、運動負荷に関節が耐え切れずにびっこを引くことが多いのですが、まれに骨自体に病変部がありびっこを引くこともあります。
今回はそういった骨自体にできる病気の中で、割とよく見られる腫瘍の骨肉腫についてご説明したいと思います。
骨肉腫とは
骨に発生する腫瘍にはいくつかありますが骨肉腫はもっとも発生頻度も多く、また悪性度も極めて高い腫瘍です。
骨肉腫が発生する場所は主に四肢が多く、また「肘から遠く、膝に近い」足に病変部があることがほとんどです。
ただ腫瘍自体は足だけでなく、体幹の骨やあごの骨など全身の骨のどこの部分でも発生する可能性があります。
また、小型犬よりも大型犬の方が病気になる確率が高いと言われています。
骨肉腫は1歳程度の比較的若い犬もしくは8歳前後のシニア層になったばかりの犬に見られることが多く、通常はびっこ度合いが強まったり、治ったりを繰り返しながら症状が進んでいきます。
ある程度症状が進むと足を触った時に腫れていることに気づくこともあり、また同時に食欲不振や倦怠感などが見られることもあります。
検査方法は?
足にできた骨肉腫の場合、典型的なレントゲンの画像が得られることによって、比較的簡単に診断を下すことができます。
もちろん骨肉腫の確定診断には、他の腫瘍と同様に採取した細胞で病理診断を行う必要があるのですが、骨の腫瘍は非常に硬く、普通に注射針を使用してもうまく採取できません。
骨肉腫の細胞を採取するには、それなりの太い針によって吸引するのですが、骨肉腫を起こしている骨はもともと病的骨折をしやすくなっているので、採材後に骨折するリスクがあります。
ですので結果的には、レントゲンで仮診断を行い、手術をおこない切除した組織を術後に検査を行うことがほとんどだと思います。
また骨肉腫は肺への転移も多くみられるため、骨肉腫の仮診断が下った場合は胸部のレントゲンもしくはCT検査が必要です。
治療法は?
治療法についてはもっぱら外科手術になります。
ただ、普通の腫瘍を切除する手術と異なり、腫瘍の発生部位が骨であること、また悪性度が高いことから切除部位は広範囲、具体的に言えば、四肢にできた骨肉腫であれば断脚が基本です。
またあごにできた骨肉腫であれば顎切除になります。
抗がん剤治療もある程度有効とされていますが、基本的には外科手術を併用するため、投薬だけで病状をコントロールすることは非常に困難です。
切除不可能な場所に発生した骨肉腫の場合、放射線治療などの必要もあることもあります。
放射線治療に関しては都内であれば、以前に比べると受診しやすくはなっていますが、まだ一般的な治療とは言えない状況です。
骨肉腫の治療において最も厄介な点は、腫瘍自体が強い疼痛を引き起こすということです。
最初の段階ではびっこ程度で済むのですが、症状が進行すると激しい疼痛のため、嗚咽のような声をあげたり、威嚇行動をとったりと、犬だけでなく飼い主様にも非常に負担がかかるものになります。
飼い主様によっては安楽死も視野に入れる方がいるほど、終末期には苦しい思いをする仔もいるため、病気としては色々な意味で、重たい病気だと思います。
まとめ
セカンドセレクトでは様々な腫瘍を患った仔達が来院されます。
こういった悪性度の高い腫瘍になってしまうと、飼い主様自身の悩みも大きくなるとおもいますが、できる限り負担の少ない治療をご提案させていただきますので、何かお困りの際はお気兼ねなくご相談ください。