おなかが減って低血糖になってイライラするという話を聞いたことがあるかもしれませんが、元来血糖値はちょっと食べなかったぐらいで急激に下がることはありません。

実際、体の中で低血糖にならないようなシステムはいくつもあり、病的な要因がない場合には数日食べてなくても血糖値は下がらないようになっています。

血糖値を急速に下げることができる唯一の体のシステムはインスリンによる血糖値のコントロールのみになります。

インスリンが過剰に分泌された場合、急激な血糖値の低下が起こるため、様々な症状が出てきます。

今回はこの過剰なインスリン分泌が起こる病気、インスリノーマについてご説明したいと思います。

インスリンの働きは?

ご存じの方も多いかもしれませんが、インスリンは血糖値をコントロールする重要なホルモンで、膵臓から分泌されます。

インスリンは血中にある糖を細胞内に取り込ませ、血糖値を下げる役目をしているほか、肝臓で糖を貯蔵させるように働き、脂肪組織の分解を抑制し、糖から脂肪を合成するなどの役目があります。

ちなみにいまはやりの糖質制限ダイエットはこういったインスリンの分泌を抑制することで体重をコントロールするダイエット法です。

インスリノーマの症状

インスリノーマの原因は膵臓にあるインスリンを分泌する細胞が腫瘍化した悪性の腫瘍であり、腫瘍から分泌される過剰なインスリンによって様々な症状が発現します。

インスリノーマは初期段階ではほとんど気が付かないことが多いと思います。

実際に動物病院に来院される場合にはかなり症状が進んだ時に連れてこられることがほとんどです。

理由としては動物は低血糖に対してはかなり耐性が強いため、血糖値がかなり低下していても症状がほとんど出ないことが多いからです。

持続的な低血糖が起こってくると、ちょっと元気がなくなったり、ボーとしてる感じが増えてきたりします。

またインスリンの脂肪合成作用により、初期段階では体重が異常に増加している場合も見られます。

症状が進むにつれ足腰のもつれが目立つようになったり、完全に意識が混濁しているような時間が長くなったりしていきます。

ただ症状が進んでいたとしても外見上の変化はあまりなく、まれに顔面神経などの麻痺が見られることもありますが、ほとんどの場合はただただ元気がないといった感じが多いと思います。

いよいよ病状がかなり進んだ場合には強い痙攣をおこすこともあり、痙攣と昏睡を繰り返しながら突然死を起こすこともあります。

また病状の終末期には肺や周辺のリンパ節に転移をすることも多く、動物の状態をさらに押し下げることになります。

検査や治療法

インスリノーマは低血糖であることを確認することから始まります。

低血糖になる病気はそれほど多くはないのですが、そのほかの病気の原因を排除し診断を進めていきます。

実際にはエコー検査やレントゲンなどで膵臓の腫瘍の存在を確認できれば診断はつきやすいのですが、膵臓自体は画像上の変化を見つけることが難しく、CT検査などの画像診断を必要とします。

CT検査には全身麻酔が必要なことも多く、特にフェレットの場合には画像上の診断は非常に困難なため、一般的には血液検査から推測していきます。

そのため、低血糖及び、インスリンの血中濃度を確認することで診断していくのですが、時間帯によっても数値のばらつきが多かったり、個体差もあるため完全に判断することが難しいこともあります。

インスリノーマと判断された場合、よほどの高齢であったり、転移がなければ癌に侵されている膵臓部分の切除をすることが望ましいとされています。

手術により完全に低血糖の状態が消失する場合もあれば、症状の緩和につながるケースもあるため、治療法の一つとして積極的な視野に入れていてもいいとは思いますが、その反面、膵炎や糖尿病などの術後の合併症も起こりやすく、手術の内容としてはリスクの高いものとなります。

また術前より低血糖状態を改善しておかなければならないため、集中管理が必要なケースも多く、セカンドセレクトを含めた一般的な動物病院では手術を安全に執り行うことは困難だと思います。

そのため、飼い主様によっては手術自体を望まない方もいらっしゃいます。

手術後や、手術ができない状態の場合、もしくは手術自体を希望しない場合は内科的な治療を行う形になります。

急激な血糖値の上昇により過剰なインスリンが分泌されることを防ぐため、食事は少量頻回で行うことが望ましいと思います。

特に血糖値が上がりやすい炭水化物と脂肪は極力抑えた方がいいので、鶏肉のささ身や胸肉などの高たんぱく低脂肪、低炭水化物の食事がお勧めです。

食事管理だけでは低血糖による症状が改善しない場合はステロイドを継続して服用します。

本来、ステロイドは抗炎症作用のある薬として使用するのですが、副次的に血糖値を挙げる作用もあるので、低血糖時には有用です。

ただ長期的な使用による大きな副作用も出てくるため、多くの飼い主様を悩ますようなこともあります。

その他の薬も多くあるのですが、効能や費用などの面からあまり実際には行われないことが多いと思います。

まとめ

インスリノーマを患った動物の予後は一般的にはあまりよくないことが多いため、最終的に安楽死を検討する飼い主様もいらっしゃいます。

セカンドセレクトでは病気になった動物だけでなく、飼い主様の精神的なケアが行えるようカウンセリングも行っております。

何かお困りごとがありましたらいつでもご相談ください。

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