こんにちは、セカンドセレクト獣医師の斉藤です。

飼い主様の中でも1年に1回程度、ご自身が人間ドックを受けてらっしゃる方も多くいらっしゃると思います。

自分では健康だと思っても、検査をしたら腸にポリープが見つかったなんてことはよく聞く話です。

体の表面と違って、内臓は直接見ることが出来ず、かつ自覚症状に乏しい変化は発見がしにくいものですが、残念ながら年齢とともに多くみられるようになります。

これは犬や猫でも一緒です。

元気そうに見えても、検査をしてみたら実は・・・・なんてことは意外とよくあります。

今回の記事ではそういったなかなか気づきにくいお腹の中のしこりの中でも、よくみられるもの・・脾臓の腫瘤についてご説明したいと思います。

そもそも脾臓って?

脾臓とは胃の横にある臓器のことで、普段は古くなった血液を壊す役目をしています。

脾臓自体は血管に富んだ軟らかい臓器で、どうでもいい話ですが、焼き肉屋さんなんかに行くと、「しびれ」という名前で売られていたり、フランス料理などでも牛の脾臓は珍重される食材です。

脾臓は不要な臓器なんて言葉を耳にすることがありますが、確かに何らかの理由で脾臓を摘出しても、ほとんどの場合は通常通りに生活を送れることが出来ます。

後で説明しますがこのあたりが悩ましいところで、多くの獣医師が脾臓に何らかの異常を発見した場合には摘出を勧める一つの理由になります。

脾臓の腫瘤の種類

脾臓は血管が豊富な臓器で、多数のリンパの集団が混在しているのですが、年齢を重ねるにつれて脂肪のような組織に置き換わってきます。

こういった年齢による変化は、場合によって5㎝以上の大きなしこりになることもあります。

一方で脾臓にはいろいろな種類の腫瘍が発生します。

血管に豊富な臓器のため血管の腫瘍や血液の癌が多く発生し、多くの場合は悪性になります。

このうち最も多い腫瘍が血管肉腫と呼ばれる腫瘍であり、腫瘍の中でも転移を起こしやすく、周りの組織にも飛び火するとても厄介な腫瘍です。

悪性の腫瘍は勿論なのですが、年齢による変化の場合でも、もともと血管が多くある脾臓は軟らかい臓器であるうえ、そこに発生した腫瘤は非常にもろく、外傷がなくても自然発生的にそこのしこりから出血をともなう傷がつくことがあります。

脾臓はとても出血が多い臓器であり、また腹腔内で出血が起こるため、異変に気づいた時には相当量の出血をを伴います。

また、微量に持続的に出血している場合もあり、自覚がない程度の慢性的な軽度の貧血を起こしていることもあります。

いずれにしてもこういった脾臓のしこりはかなり大きくならない限りは、外見上から判明することはありません。

たいていは健康診断としておこなった検査でたまたま見つかるか、出血を起こして病院に緊急搬送されて初めて気づくかどちらかのことがほとんどです。

そのままでも大丈夫!?

何度か書いていますが、脾臓にできた腫瘤が発見された理由としてはたまたまみつかるケースは意外と多いと思います。

そしてその腫瘤をどうにすかするには、薬で何とかなることはなく、脾臓ごと摘出するというのがその方法になります。

そういった理由もあるのですが、脾臓にしこりが見つかった時に「そのままにしていてはまずいですか?」とか「手術はした方がいいのでしょうか?」というご質問をよくお聞きします。

脾臓のしこりに関しては自覚症状がないため、まず脾臓にしこりがあると聞いてもピンとこないというのあるでしょうし、そもそも目の前のリスクが見えないところで手術なんていうことは考えられないのは当然だと思います。

一方獣医師としては、脾臓は摘出しても術後の生活は問題がない上に、摘出自体はそれほどの技術を要することはありません。

むしろ放置することのリスクを回避することが妥当と、ほとんどの獣医師は考えます。

結論から言うと状況に応じて手術は必要だと思いますが、必ずすべての症例に必要かというわけではないと思います。

セカンドセレクトではおおよそ次のような判断で手術をお勧めすることがあります。

  • しこりのサイズが5㎝以上ある
  • それほど高齢でなく、健康状態に大きな問題はない
  • 自覚症状はないが軽度の貧血が見られる

逆に手術をせずに経過観察をお勧めするような場合は次のような時です。

  • しこりのサイズが1~2㎝程度
  • 自覚症状がなく高齢である
  • その他の検査所見から悪性度の高い腫瘍が予想される

特に悪性度が高そうな腫瘍が予想される場合には判断は慎重に行う必要があります。

最も悪性度の高い血管肉腫の場合、術後の予後はあまりよくないことも多く、術後に積極的な治療を行ったとしても平均的に1年の余命かどうかと言われています。

そこにどれだけの価値を見出すかどうかは、人それぞれの価値観によるところになります。

特に腹腔内に出血を起こした場合は予後が極めて悪化することも多く、手術を行うという価値はさらに低下することになります。

もし出血したら?必ず手術しないとダメ!?

脾臓にしこりが発見されるもう一つの大きな理由としては、腹腔内の出血が起きたときがあげられます。

この時には症状は甚大で急速に起こります。

「昨日まで元気だったのに、いきなり起き上がれなくなった。」ということを訴える飼い主様がほとんどです。

脾臓の出血は一時的に大量に出血します。

ある程度時間が経つと出血の量は減少するのですが、一時的に失われる出血の量が大量であるため、血圧が著しく低下し、ほぼ動けないような状態になります。

ここで問題になるのが、手術をするべきかどうかということです。

手術というのは脾臓ごと摘出し、出血を食い止めることをさします。

セカンドセレクトでは、あまり高齢でない犬の場合は緊急手術をお勧めしています。

なぜなら手術をせずその場は乗り越えたとしても、再出血のリスクが高いからです。

全身を評価したうえで転移などがなければ、手術は行った方がいいと思います。

病理検査を摘出した脾臓に行い、その後の治療については術後回復してから検討するとして、とりあえずは目の前にあるリスクを回避するのが賢明だと思います。

一方で超高齢犬やあまりにも状態が悪い、もしくはそもそも手術を希望しない飼い主様にとって手術以外の方法について検討することもあります。

脾臓からの出血で立てなくなったり、沈鬱になるのは一過性の大量出血が原因であり、その時点で致命的な貧血を起こしていることはあまりありません。

止血能力に異常がなければ、出血は徐々に少なくなり、いずれは止まることも多くあります。

したがって、貧血の進行を注意深く観察しながら、安静下にて出血が止まるのを待ちます。

出血によって血液の総体量が失われているため、血圧を維持する目的で静脈点滴を施し、同時に止血剤を使用しながら経過を観察するのが無難です。

経過がよければ半日~丸1日ほどで状態は回復していき、2~3日で貧血も著名に改善します。

当然ながら出血が完全に止まらない場合もあるので、その時には緊急的に手術を行うかの検討に入る必要があります。

事前に転移していることが解っているなどはこうした方法も必要だと思います。

まれに、出血している場所が脾臓だけでなく、脾臓と隣接している肝臓に隠れた転移巣があり、そこから出血している場合もあります。

事前に行う血液検査などで、肝酵素などが異常に上昇している場合も、安静下にて観察することを選択肢に入れる必要があると思います。

まとめ

脾臓のしこりは自覚症状が全くないので、逆に発見した時の取り扱いが非常に難しいところだと思います。

個人的には本人の年齢やその他の状況を客観的に判断し、手術に臨まれるかどうかを決めるしかないと思います。

この記事を読んでみて、少し気になる飼い主様がいたら、いつでもお気兼ねなくご相談ください。