獣医師としてどんな病気も必ず治してあげたい気持ちはあるのですが、現実はそんなに甘くはないことを常々痛感させられています。

獣医医療はもともと寿命が短い動物たちを相手にしていますので、その終わりに直面することは多々あります。

終末医療へのアプローチは、飼い主様の主観的な感覚、担当した獣医師のポリシーに大きく依存するので、決まった形はありません。

今回は往診医として、どんな形で弱ってしまった動物たちと接していくのかご説明したいと思います。

ターミナルケアとは?

ターミナルケアは、一般的には不治の病に陥った患者の苦痛やストレスを取り払い、病気を患いながらでも、できる限りの喜びを感じられるようにサポートしていく治療になります。

こと、動物の医療では、回復の見込みのない状態に陥ったときには、人のそれよりもターミナルケアを選択するタイミングはかなり早いと思います。

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選択される内容としては、鎮痛剤や抗痙攣薬、抗炎症剤などを使用し、病気の原因を治していくというよりは、見かけ上の症状を緩和してあげることに努めます。

ものを食べることができなくなったり、水さえも飲めなくなった場合は、定期的に補液注射などを行います。

飼い主様によっては、鼻カテーテルや胃ろうを通して栄養を供給させる方もいらっしゃいます。

実際のところ、何をもってしてターミナルケアというかは、飼い主様の判断になることがほとんどです。

どのような状況になったら必要か?

犬の場合多いのが、高齢になって腫瘍などを患い、歩けなくなったような状況で治療を開始することがほとんどです。

猫の場合でも、商用などの理由も多いのですが、やはり高齢になってからの腎不全のケアが一番多いのではないかと思います。

【シニア(老)猫】慢性腎不全の治療こそ往診が一番な4つの理由

また、犬と違い、母子感染で起こるような、エイズ、白血病に由来する状態の悪化や、猫伝染性腹膜炎のような重大な感染症を突然発症することもあり、このような場合は比較的若いうちからターミナルケアを開始することもあります。

いずれにしても、治療するリスクとベネフィットを比べ、動物にとってあまりにも有益でない治療の選択しかない場合に、ターミナルケアを希望される方がほとんどです。

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通常の動物病院VS往診の動物病院

こういったターミナルケアをご希望される飼い主様のほとんどの方は、入院をご希望されることは滅多にありません。

人間と違い、最後は家で看取ってあげたいというのが、ほとんどの飼い主様の思ってらっしゃることなのだろうと思います。

そういった意味では、往診でターミナルケアを実施するメリットは非常に大きく、また動物にとっても飼い主様にとっても、移動がない分、負担が非常に軽減されます。

動物病院に弱った動物を連れて行くと、余計に弱ってしまい、連れて行きたくないとおっしゃる飼い主様もいらっしゃいますので、往診を選択される飼い主様も非常に多くいらるのが実情です。

まとめ

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負担ない治療というのが、往診での治療の根本にあります。

考えたくはないでしょうけれど、どんな動物もいつかは終わりはやってきます。

そういった終末をどう幸せに過ごさせてあげられるか、往診医としてできる限りのお手伝いをさせて頂きたいと思っています。

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